結果の概要:雇用者増加数は前月、市場予想を大幅に上回る伸び

5月5日、米国労働省(BLS)は4月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で21.1万人の増加(1)(前月改定値:+7.7万人)となり、+9.8万人から下方修正された前月から大幅に伸びが加速し、市場予想の+19.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も上回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.4%(前月:4.5%、市場予想:4.6%)とこちらも前月、市場予想を下回って改善した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(2)は62.9%(前月:63.0%)と前月から小幅低下した(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
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2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
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結果の評価:雇用の伸びは堅調も、賃金の伸びは鈍化

4月の非農業部門雇用者数は再び20万人超の増加となった。この結果、1-4月期の月間平均の雇用増加数は18.5万人増と、昨年1年間の平均18.7万人増と同じようなペースでの雇用増加が続いている。3月は雇用者数の伸びが大幅に鈍化したが、天候要因による一時的な変動の可能性が高まったと言えよう。もっとも、労働市場が完全雇用に近づいていることから、来月以降は20万人超のペースからは鈍化が見込まれる。

家計調査は、労働参加率が小幅低下したものの、失業率が4.4%と07年5月の水準に低下した。これは、FOMC参加者の17年末見通し(4.5%)を下回る水準である。

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一方、4月の時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.1%、市場予想:+0.3%)と、下方修正された前月からは伸びが加速し市場予想に一致したものの、前年同月比は+2.5%(前月改定値:+2.6%、市場予想:+2.7%)と、+2.7%から下方修正された前月や市場予想を下回る伸びに留まった(図表1)。雇用者数や失業率の改善とは対照的に、賃金上昇率には改善がみられなかった。

このようにみると、賃金上昇率こそ回復が足踏みしているものの、雇用者数や失業率は改善しており、4月の雇用統計は、米労働市場の堅調な回復が持続していることを確認する結果であったと言える。FRBが6月利上げをする上で4月の結果はサポート材料だろう。

事業所調査の詳細:娯楽・宿泊サービスが増加

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事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+17.3万人(前月:+5.4万人)と、前月から大幅に伸びが加速した(図表2)。

サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+0.6万人(前月:+1.3万人)となったこともあって、専門・ビジネスサービスが+3.9万人(前月:+5.7万人)と前月から伸びが鈍化したものの、医療サービス+2.0万人(前月:+1.4万人)や、娯楽・宿泊サービス+5.5万人(前月:+0.9万人)などで前月から伸びが加速した。さらに、小売業も+0.6万人(前月:▲2.7万人)と、3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

財生産部門は、前月比+2.1万人(前月:+2.3万人)と、こちらは小幅ながら前月から伸びが鈍化した。建設業が+0.5万人(前月:+0.1万人)と前月から伸びが加速した一方、製造業が+0.6万人(前月:+1.3万人)と伸びが鈍化した。

政府部門は、前月比+1.7万人(前月:+0.2万人)と前月から伸びが加速した。内訳をみると、連邦政府は▲0.6万人(前月:▲0.3万人)と前月に続き減少したものの、州・地方政府が+2.3万人(前月:+0.5万人)と前月から大幅に伸びが加速した。
前月(3月)と前々月(2月)の雇用増(改定値)は、前月が+7.9万人(改定前:+9.8万人)と▲1.9万人下方修正された一方、前々月が+23.2万人(改定前:+21.9万人)とこちらは+1.3万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.6万人の下方修正となった(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って5月3日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+17.7万人(前月改定値:+25.5万人、市場予想:+17.5万人)と、前月から大幅に伸びは鈍化、市場予想は上回った。この結果、3月の雇用統計とADP統計でみられた大幅な乖離は、4月では相当程度縮小した。

4月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.19ドル(前月:26.12ドル)となり、前月から+7セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.3時間)とこちらは前月から小幅増加した。その結果、週当たり賃金は900.94ドル(前月:895.92ドル)と前月から増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:失業率は低下も、労働参加率の改善は5ヵ月ぶりに悪化

家計調査のうち、4月の労働力人口は前月対比で+1.2万人(前月:+14.5万人)と、前月から伸びが大幅に鈍化した。内訳を見ると、就業者数が+15.6万人(前月:+47.2万人)と前月から伸びが鈍化したほか、失業者数も▲14.6万人(前月:▲32.6万人)と3ヵ月連続の減少となり、労働力人口を低下させた。一方、非労働力人口は+16.2万人(前月:+2.3万人)と、2ヵ月連続の増加となった。この結果、労働参加率は62.9%(前月:63.0%)と、小幅ながら5ヵ月ぶりに悪化した(図表5)。

後述するように広義の失業率も低下しており、労働需給のタイト化は続いているものの、労働参加率が小幅悪化したほか、非労働力人口も増加していることから、4月の失業率低下については、その分は割り引いて考える必要があるだろう(図表6)。

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次に、4月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、162.6万人(前月:168.7万人)となり、前月対比では▲6.1万人(前月:▲11.4万人)と3ヵ月連続の減少となった。この結果、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは22.6%(前月:23.3%)と、09年1月以来の22%台まで低下した。一方、平均失業期間は24.1週(前月:25.3週)とこちらも前月から減少した(図表7)。

最後に、周辺労働力人口(153.4万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(527.2万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、4月は8.6%(前月:8.9%)と前月から▲0.3%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.4%ポイント(前月:4.5%ポイント)と、前月から▲0.1%ポイント縮小した。

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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
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4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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