2013年4月1日から実施されている子どもや孫への「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度(以下、本制度)」が改めて評価されています。
相続税率に比べ贈与税率は高く、年間合計で110万円を超える金額には贈与税が課税されます。暦年課税の制度において、仮に祖父母から20歳未満の孫へ、贈与税引後の金額で1,500万円を一括贈与しようとすると、実質、2,390万円の贈与を行わなければならず、その贈与税は890万円にもなります。そのことを知っていれば、お子さんやお孫さんに教育資金を贈与しようと考えている方は、本制度の利用を考えてみるのもいいかもしれません。ここでは本制度の概要を紹介していきましょう。
祖父母から孫へ、1,500万円まで非課税で一括贈与できる?
「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度」というのは、祖父母や親(直系尊属)から30歳未満の子どもや孫に教育資金として一括で贈与すると、最高1,500万円までが非課税になる制度です。金融機関に預け、教育資金として支出するといった要件を満たす場合に非課税となります。
● 対象期間……2013年4月1日~2019年3月31日までの間に贈与された資金が対象
● 贈与者と受贈者の要件……親や祖父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫などへの贈与。もらった子や孫が30歳を過ぎた段階で資金が残った場合は贈与税の対象となる
● 非課税限度額と使途……一人につき教育資金1,500万円まで。ただし塾や習い事などの学校以外の資金については最大で500万円まで
● 教育資金管理契約……銀行、信託銀行、証券会社などと契約を結び専用口座を開設したうえで、教育資金を預託。教育資金口座からの払い出し方法については金融機関によって「支払後払い方式」と「事前払い方式」があり、選択することが可能な場合も。手数料がかからないところもある。税務署などへの申告は金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出する。
これまでに、本制度を利用された方は、祖父母が扶養義務のない孫に対して教育資金を一括贈与するケースが多いようです。メリットもある中、注意するポイントもありますので、本制度の内容をきちんと理解してから活用しましょう。
この制度のメリットは?
まずは、メリットですが、なんといってもその「節税効果」にあります。そう遠くない将来、相続税の対象になる多額の金融資産などを抱えている人には大きな利点かもしれません。例えば、子供や孫が30歳になるまでに贈与された金額を教育資金として使い切れば贈与税が非課税になったり、暦年贈与を続けながら教育資金の一括贈与も可能だったり、教育資金非課税申告については金融機関等が代理で行ってくれたりと、税効果も含めて、本制度にはさまざまなメリットがあります。
ただし、注意すべきポイントもあります。
注意するポイント
2013年4月1日からスタートした本制度ですが、いくつか注意するポイントがあります。どのようなポイントがあるのか、簡単に分けると大きく以下のようになります。
領収書が必要……教育資金として認めてもらうためには、原則として領収書を金融機関に提出する必要があります。その場合、いちいち学校や塾などの教育機関などが発行した領収書をもらい、提出期限までに金融機関に提出する必要があります。ちなみに、2016年以降では一部簡略化されて支払金額が1万円以下であれば、年間の支払金額が24万円(消費税込)までは領収書なしの明細書でも処理できるようになりましたが、それでも面倒な手間がかかります。
教育資金に限定……いうまでもなく教育資金に限定されていますが、教育資金の規定が曖昧で、入学金とか授業料、保育料、通学用の定期代、修学旅行費用、学校給食費といった代表的な教育費は問題ありませんが、学校以外で支払われる「学校外費用」に対しては曖昧な部分もあります。
一般的には「社会通念上相当と認められるもの」とされていますが、たとえばスポーツや音楽関連の塾や活動に対しては教育費として認められますが、地方から大学進学などのために上京した人の寮費や下宿代、アパート代やそこでの生活費は対象外になります。同様に海外留学しても渡航先での住居費や生活費は認められません。
他の親族から同意を求めないともめる原因にも……
これまで説明してきたように、この教育資金贈与の制度は子や孫に資金贈与を考えている人にとっては検討に値する制度であり、だからこそ改めて評価されているのでしょう
しかし、同居している孫に一括贈与したものの、離れて暮らす別の孫の両親からも「不公平だ」と教育費を要求され、もめるケースも考えられます。このようなことにならないためにも事前にきちんと家族同士で話し合いを行って、コンセンサス(同意)を得ておくといったプロセスも必要かもしれません。(提供: お金のキャンパス )
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