企業にとって極めて重要な資金調達。その方法として「増資」を選択する企業は多いが、その中でも株主にも企業にも魅力があるとして「ライツ・オファリング」が注目されている。

ライツ・オファリングで調達した資金を積極的に活用することで、過去業績を大きく伸ばしてきた企業がある。不動産業を営む東証一部上場企業のエー・ディー・ワークス だ。

過去2回、ライツ・オファリングを実施しており、2012年に約5億円、2013年には約22億円の調達に成功。同社が3回目の実施を発表した。今回のライツ・オファリングで調達する予定の資金について同社はコア事業の事業基盤強化や新しい不動産流通マーケットの創造に活用するとしている。

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(画像=PIXTA)
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過去2度の実施で成長軌道に

ライツ・オファリングは「新株予約権無償割当」とも呼ばれる。既存株主に対して一定価格で株が購入できる新株予約権が無償で割り当てられる制度だ。株主は新株予約権の権利を行使して株を購入するか、新株予約権の権利を売却するか、選択できる。

エー・ディー・ワークスが過去2回の実施でどれくらい業績を伸ばしてきたか見てみよう。

(画像=エー・ディー・ワークス)
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まず1回目の実施(2012年10月)の前後だ。実施前の2012年3月期、収益不動産残高は38億1000万円、経常利益は2億9000万円だった。1回目の実施約5億円を調達したところ、13年3月期には、それぞれ57億300万円と3億6100万円になっている。

その年、13年10月に2回目のライツ・オファリングを実施、約22億円を調達。14年3月期には収益不動産残高は101億2400万円と倍増、経常利益も4億5000万円となっている。その後の成長も順調で、17年3月期には、それぞれ203億1800万円、7億4800円にまでなっている。同社がライツ・オファリングで調達資金をしっかりと事業成長につなげてきたことが分かるだろう。

同社は、3回目の実施後の業績見通しとして、2018年3月期の業績予想を、収益不動産残高250億円、経常利益9億円とさらなる成長を見込んでいる。

エー・ディー・ワークスが業界でも驚きの手法が取れる理由

エー・ディー・ワークスが成長の軌跡を描けたのは、何もライツ・オファリングという手法を取り入れたからではない。しっかりとしたビジネスモデルがあってこそであることは言うまでもない。

同社の中核事業は収益不動産販売だ。不動産販売では一般に、物件を顧客に販売するために物件を仕入れる必要がある。仕入れた物件は棚卸資産となるが、価格の変動などを考慮して早期に売却し、棚卸資産を貯め込まないようにすることが業界の常識だ。

しかし同社では「棚卸資産を積み増す」という業界では驚きの手法を取り入れている。まずハード・ソフト面など様々な事情で本来の価値を発揮できていない物件を“目利き力”で探し出す。

その後、自社で購入後は内装や外装の工事、入居率の向上等の資産価値を高めるリノベーションをおこなっている。リノベーションによって、物件の価値が向上し、満室稼働状態を目指すことによって、棚卸資産自体が収益を上げる資産となるのだ。

価値・入居率が向上した物件はもちろん顧客にも販売されている。顧客への販売後はマンションの管理の請負や管理物件の長期修繕、オーナーの他の資産運用の相談など、様々な事を同社に任せることが可能だ。

感謝配当、ポイント付与……手厚い株主還元

(画像=エー・ディー・ワークス)
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不動産業界では異色のビジネスモデルも注目だが、同社では株主を大切に扱う姿勢にも注目が集まっている。同社は過去2回と2017年7月に実施予定のライツ・オファリングへの協力の感謝の意味も込めて、1株あたり1.65円の感謝配当を出すことを公表している。

もちろん感謝配当以外にも期末には通常の配当金も例年支払われており、2017年3月期には130周年記念配当も実施するなど、手厚い株主還元が有名だ。

配当以外にも珍しい株主優待にも注目だ。同社の株を保有していると、株数に応じてポイントが貯まる「株主クラブ」制度もスタート。貯まったポイントは食品や宿泊券等様々な商品と交換が可能だ。

異彩を放つビジネスモデルや手厚い株主還元に定評がある同社。今回実施予定のライツ・オファリングをきっかけにさらなる飛躍が見込まれる。

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