「仮想通貨インボイス・ファイナンシング(売掛金担保融資)・プラットフォーム」を開発した「ハイブ・プロジェクト」 が、8月14日までICO(新規仮想通貨公開)で資金を調達している。
イーサリアムのブロックチェーン技術とスマート・コントラクト技術を用いて、指紋付きのインボイスをトークン化しブロックチェーン上に記録する。信用リスク評価からリアルタイム監査、担保融資保証まで、短期融資プロセスの簡潔化と透明化を図り、中小企業の資金の流動性を高めることが狙いだ。
売掛金担保融資、3兆ドル市場に成長と期待
開発の動機となったのは、多くの中小企業が短期的な資金繰りで苦労しているという現状だ。企業側が事業を成長させる上で融資を受けたくても、銀行側は資金の流動性の低い企業への融資を躊躇する。
そこで近年需要が急激に伸びているのが、「インボイス・ファイナンス(売掛金担保融資)」だ 。インボイス・ファイナンスは既に2014年の時点で2兆3500万ユーロを超えており(約 256兆6343億円/前年比6%増)、3兆ドル (約337兆500億円)に達すると予測されている(ハイブ調査)。
ブロックチェーン技術を取り込み、安全性や透明性、利便性を向上することで、さらなる飛躍が期待できる可能性は高い。
インボイスごとに発行される指紋で安全性向上
革命的ブロックチェーン・インボイス・プラットフォームの仕組みは、比較的シンプルだ。 ハイブが顧客から受け取ったインボイスは、全てのデータが暗号化されブロックチェーン上に記録される。自動的に信用リスク分析などが行われた後、融資額や条件が提案される。借り手・貸し手間で合意が得られれば融資が成立する。P2P融資の要素が強い。
担保融資で重要な「安全性と信頼性」を高める意図で、インボイスごとに“指紋”が発行されるという工夫も成されている。トークン化されたインボイスはブロックチェーン上で共有されるため、必要な情報にいつでもアクセスすることが可能だ。
これまでのように銀行から融資をうけるために大量の書類や承認をかき集めたり、今すぐ資金が必要なのにも関わらず、審査結果を長々と待たされるといったストレスが大幅に軽減されることになる。
新たな流動性の提供に焦点を置いているだけに、中小企業にとってはファイナンス環境を著しく向上させる画期的なサービスとなるだろう。
サムソン元シニア・ヴァイス・プレジデントも太鼓判
ハイブはスロバキア、カナダ、英国、ブルガリアなど、様々な国の開発者や金融関係者が中核となって立ち上げたプロジェクトだ。
シリコンバレーを代表するITエクゼクティブ、リチャード・タイタス氏 も、アドバイザーの一人として名を連ねている。タイタス氏 はサムソンのエレクトロニクス・ヴィジュアル・ディスプレー部門のシニア・ヴァイス・プレジデントを務めた経験の持ち主だが、「中小企業の売掛金担保融資のエコシステムを根底から変える(finextra.comより)」 とハイブに大きな期待を寄せている。
ICOでは6週間にわたり5億トークン(HVN)が売り出される。調達資金の6割は新たな開発に、残りは運営やマーケティングなどに費やされる予定だ。
トークンの所有者 はハイブの可能性に投資するだけではなく、インボイスを買い取りデータにアクセスする権利も得られる。新たな中小企業向けP2P融資システムの幕開けとなりそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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