17年5月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比17.0%増と、前月の同10.4%増から上昇した(図表1)。輸出は海外経済の回復による半導体や一次産品の需要拡大、輸出単価の上昇を受けて増加傾向を続けている。先行きの輸出は新型スマホの発売を追い風に高水準を維持するだろうが、年末にかけて中国経済が再び減速に向かうなかで伸び率は徐々に低下していくものと予想する。

なお、ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、4月に東アジア・東南アジア向けと欧州向け、北米向けが揃って鈍化したものの、5月は3地域揃って勢いを取り戻しており、好調が鮮明となっている(図表2)。

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タイの17年5月の輸出額は前年同月比13.2%増と、前月の同8.5%増から再び上昇した。輸出の伸びは上下に大きな振れを伴いながら、16年初の資源価格の上昇と年後半からの電子製品やゴム製品、石油製品の海外需要の増加を受けて回復傾向が鮮明になっている。一方、輸入額は前年同月比18.2%増と、前月の同13.4%増から上昇した。結果、貿易収支は9.4億ドルの小幅の黒字となり、前月から8.9億ドル増加した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同12.8%増と、前月の同7.9%増から一段と上昇した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、航空機・船舶・機関車(同294.2%増)と2カ月連続の三桁増を記録したほか、主力の自動車・部品(同8.1%増)や電子機器(同25.0%増)をはじめ、家電製品(同6.3%増)、機械・装置(同20.5%増)、石油化学製品(同16.2%増)も、それぞれ前月から上昇した。また農産品・加工品は同20.1%増(前月:同13.3%増)となり、加工食品(同12.0%増)やゴム(同45.1%増)、ゴム製品(46.0%増)を中心に好調に推移している。一方、鉱業・燃料は同30.2%増(前月:同36.0%増)と、石油製品を中心に二桁増が続いている。

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マレーシアの17年5月の輸出額は前年同月比23.9%増と、前月の同6.6%増から上昇して二ヵ月ぶりの二桁増となった。輸出額は資源価格の上昇や海外需要の回復によって16年初から増加傾向が続けている。足元では輸出に伸び悩む動きが見られたものの、5月の急上昇で好調が続いていることが明らかになった。一方、輸入額も前年同月比22.0%増と、前月の同10.4%増から上昇した。結果、貿易収支は12.7億ドルの黒字と、前月から6.9億ドル黒字が縮小した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同21.4%増と、主力の電気・電子製品(同22.8%増)が一段と増加して前月の同4.4%増から上昇した(図表6)。また動植物性油脂も同18.3%増と、パーム油(同16.9%増)が好調だったほか、前月に下振れたパーム核油(同33.2%増)が急伸して前月の同6.7%増から上昇した。また鉱物性燃料は同50.3%増(前月:同11.1%増)と、原油(同46.7%増)と石油製品(同64.3%増)を中心に上昇した。このほか、製造品(同9.3%増)や化学製品(同13.1%増)、食品(同7.7%増)など幅広い品目が前月から上昇した。

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インドネシアの17年5月の輸出額は前年同月比24.1%増と、前月の同13.6%増から上昇した。輸出は一次産品の価格上昇によって16年初から緩やかに持ち直し、年後半には数量ベースでも増加に転じて一段と上昇、伸び率は7ヵ月連続の二桁増を記録している。一方、輸入額も前年同月比24.0%増と、前月の同10.5%増から上昇した。結果、貿易収支は4.7億ドルの黒字と、前月から8.6億ドル黒字が縮小した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、まず石油ガスが同32.3%増と、前月の同16.2%増から再び上昇して3カ月連続の二桁増となった(図表8)。非石油ガスについては、輸出全体の7割を占める製造品は同18.6%増(前月:同4.0%増)となり、前月に減少していた機械類(同43.2%増)と電気機器(13.9%増)がそれぞれ急上昇した。また農産品も同42.4%増と、前月の同32.9%増から上昇した。一方、鉱業品は同59.1%増と、鉱石・スラグ・灰(同51.3%増)を中心に大きく高水準を維持したものの、前月の同75.4%増から低下した。

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ベトナムの17年5月の輸出額は前年同月比25.0%増と、前月の同21.8%増から上昇し、4ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は16年前半まで伸び悩んでいたが、年後半から主力の電気・電子製品を中心に勢いを取り戻しており、足元でも政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額も前年同月比26.8%増(前月:同22.8%増)と一段と上昇した結果、貿易収支は前月から7.1億ドル減少して5.3億ドルの赤字となった(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同39.8%増(前月:同43.0%増)と、2カ月連続で非常に高い伸び率を記録した(図表10)。これはサムスン電子の新型スマホの発売開始の影響であり、当面好調が続きそうだ。またコンピュータ・電子部品も同37.1%増(前月:同40.8%増)と好調が続き、12カ月連続の二桁増となった。アパレル関連では織物・衣類が同8.9%増(前月:同7.8%増)、履物が同11.0%増(前月:同14.2%増)と、それぞれ高水準を維持している。農産品ではコーヒー(同4.1%減)が落ち込んだものの、天候の改善を背景にコメ(同80.8%増)や野菜(同74.8%増)、ゴム(同43.8%増)など総じて好調である。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同28.0%増(前月:同27.2%増)と高い伸びを続いたほか、地場企業も同18.3%増(前月:同9.7%増)と大きく上昇した。

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シンガポールの17年5月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比3.1%減(前月:同4.2%減と、医薬品の落ち込みが続いて2ヵ月連続のマイナスとなった。輸出の伸びは医薬品の変動によって上下しながらも、基調としては主力の電子製品と石油化学製品の需要が回復して増加傾向にあると見られるが、足元ではベース効果の剥落によって輸出の勢いが鈍ってきている。なお、総輸出額は前年同月比9.4%増(前月:同0.5%増)、総輸入額も同15.5%増(前月:同3.7%増)と、それぞれ大きく上昇した結果、貿易収支は33.2億ドルの黒字と、前月から7.3億ドル黒字が縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同5.0%増と、伸び悩んだ前月(同0.3%増)から再び上昇した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同0.4%減)とダイオード・トランジスタ(同1.1%減)が引き続き低迷した一方、IC(同28.7%増)やPC(同61.7%増)、PC部品(同23.9%増)が大幅な増加となり、品目毎にバラつきがみられる。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学は同3.2%増と、前月の同15.1%減からプラスに転じた。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同15.8%減(前月:同42.0%増)と低迷する一方、石油化学製品が同17.1%増(前月:同9.5%増)と二か月ぶりの二桁成長となった。

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フィリピンの17年5月の輸出額は前年同月比13.7%増と、前月の同19.1%増から低下したものの、3ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出は16年から資源価格の上昇を受けて一次産品を中心に緩やかに持ち直し、年後半には主力の電子製品も増加に転じて大幅な拡大傾向が続いている。一方、輸入額は前年同月比16.6%増(前月:同0.1%減)と上昇した。結果、貿易収支は27.5億ドルの赤字と、前月から10.0億ドル赤字が拡大した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同17.8%増と、前月の同10.1%増から上昇した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、半導体デバイス(同19.6%増)が高水準を維持するとともに、前月に下振れた電子データ処理機(同16.7%増)も回復した。一方で計測制御機器(同3.6%減)と遠距離通信機器(同24.3%減)は落ち込んだ。その他9品目については、ココナッツオイル(同62.5%増)、その他鉱業製品(同47.5%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同23.9%増)、金属部品(同21.7%増)、金(19.7%増)、機械・輸送用機器(同2.6%増)、化学(同0.0%増)と、増加した品目が多かった。一方、その他製造品(同4.6%減)と木工製品・家具(同19.6%減)は減少した。

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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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