企業の前に立ちはだかる「5重苦」の2つ目、今回は「最低賃金の上昇」を取り上げます。日本政府は今、最低賃金の上昇のため、法改正を視野に入れています。中小企業にとってこれは人件費の上昇という形で、経営を圧迫する可能性があります。2016年から4年間連続して行われた最低賃金の引き上げは記憶に新しく、4年間で東京都の最低賃金は約50円上がりました。年あたり約16円の上げ幅で上昇率は2.2~2.3%でした。

政府公約は時給1,000円

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(写真=fotogestoeber/Shutterstock.com)

2017年の現状では、日本の最低賃金の加重平均は823円です。これを2022年までに1,000円にするというのが政府の掲げた「公約」です。907円だった東京都の最低賃金は、2016年に25円上昇し932円になりました。2年後に東京都の最低賃金は1,000円の大台を超えるでしょう。

社員の側からこの事態を見るとどうでしょう。働き方の量と質はまったく同じでも、賃金が3%ずつ上昇していくのですから、ありがたいことかもしれません。しかし、これを企業側から見ると、何の要因もなしに「労働分配率」がどんどん高くなってくるという現象であり、たいへん深刻な問題となります。最低賃金の上昇は、国民の働く環境を改善することにつながるかもしれません。とはいえ、企業経営側にとっては、人件費の上昇による影響を少なからず受けることになります。

アメリカでは最低賃金が9ドルから15ドルに

海外の先進国アメリカの最低賃金の動向を見てみましょう。米ニューヨーク(new York)州のアンドリュー・クオモ知事と州議会は2016年3月31日、同州ニューヨーク市の最低賃金を時給9ドル(約1,000円)から15ドル(約1,670円)に引き上げることで合意をしました。今回の合意結果の下、ニューヨーク市内の従業員10人以上の職場では、2018年末までに最低賃金が15ドルに引き上げられることになります。

米国では現在、2009年から時給7.25ドル(約810円)に据え置かれている連邦最低賃金を引き上げる動きが全米の自治体レベルで相次いでいます。カリフォルニア州議会も同州の最低賃金を時給15ドルに引き上げる同様の合意に至っています。アメリカの企業側はこぞってこの大幅アップの決定に反対しているようです。労働賃金が1.65倍になることなど、企業の経営に計り知れない影響を及ぼすことが予想されるためです。

中小企業の危機を乗り越えるために

日本においても、最低賃金がじりじりと上昇しています。企業側はこの状況をいかに乗り切ればいいのでしょうか。その答えは「社員の生産性」にあります。社員一人一人の生産性を高めていくことが、今後ますます求められていくといえます。企業側は社員に賃金を払うということに対して、現状よりはるかにシビアにならざるをえないといえます。社員に支払う賃金の最適化のために、「正当な人事評価制度」が重要になってきます。

「答え」はここにある

もはや「今までの慣習でなんとなく」で経営が成り立つ時代は終わったといえます。厳しい現実を直視し、企業経営としての戦略、戦術と連動する人事評価制度が求められています。「正当な人事評価制度」によって、社員の処遇や賃金を最適化し、社員と経営者が互いに「Win-Win」の状態を目指していくことができます。

従業員のモチベーションを高めるためには、目標を設定し、成果に対する適切な評価をしていくことが重要といえます。社員にとって「この目標に対して努力し、高い成果を出せば、自分自身の処遇が良くなっていく」と思える環境を整えることは、企業側の責務であるといえます。これによって、社員は仕事における生産性を高めていくことができるでしょう。(提供: あしたの人事online

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