国内株式から資金流出がやや収まる
2017年7月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入を見ると、国内株式から資金流出していたものの、流出金額は30億円程度と小額であった【図表1】。国内株式からの資金流出は昨年夏から続いているが、やや収まった様子である。7月は日経平均株価が2万円前後で推移し、底堅い反面、上値が重く小幅な値動きであった。様子見姿勢になる投資家が多かったのかもしれない。
内外REITについては、共に毎月分配型ファンドの解約が大きく、資金流出が続いていた。ただ、国内REITについては毎月分配型から330億円程度の資金流出であったが、毎月分配型以外には50億円弱の資金流入があった。金額は小さいものの、一部の投資家は国内REITがそろそろ底打ちすることを期待し、毎月分配型でない国内REITファンドを購入したようだ。
その一方で、外国株式、バランス型、外国債券については資金流入が続いていた。外国株式とバランス型の流入金額は2,000億円に迫った。
毎月分配型の人気に陰りが
個別ファンドへの資金流入を見ると、流入上位のうち2ファンドが7月に新設されたファンドであった【図表2】。まず、1位の「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド」はリスク・コントロール系のバランス型ファンドである。特に、基準価格の下値保証が組み込まれた新しいタイプのファンドである。最大損失が見えているため、投資初心者でも投資しやすいファンドといえる。ただし、下値を保証するために保証契約を結んでおり、保証契約のコスト負担がパフォーマンスにどれくらい悪影響を及ぼすかも分からないため、長期投資する際には特に注意する必要があると考えている。もう1つの新設ファンドは、8位の「GSビッグデータ・ストラテジー(日本株)」である。銘柄選別する際にAIを使ってビックデータを活用している国内株式ファンドである。
外国株式の4ファンドも人気であった。2位の「野村インド株投資」と9位の「ノムラ・アジア・シリーズ(ノムラ・印度・フォーカス)」がインド株式ファンドである。投信全体で見てもインド株式ファンドへの資金流入が800億円に迫っており、引き続きインド株式の人気が高かったといえる。また、4位の「グローバル・ロボティクス株式ファンド」がテクノロジー系の企業に投資するテーマ型のファンド、5位の「キャピタル・ニューワールド・ファンド」が新興国を中心に投資するファンドである。
また、7位の「ひふみプラス」は主に国内株式に投資しているファンドである。2月に運用を行っているレオス・キャピタルワークスの社長兼CIO(最高投資責任者)がテレビ番組に出演して以来、毎月100億円以上の資金流入が続いている。テレビ出演からもうすぐ半年経つが、ブームは収まっていないようだ。
内外株式ファンドの人気が高かった一方で、毎月分配型のファンドの人気に陰りが見えてきている。資金流入が大きかった上位ファンドのうち、毎月分配型のファンドは外国REITと豪高配当株、REITの2ファンドのみであった。昨年から内外REITなどの一部の毎月分配型ファンドからの資金流出が続いていたが、毎月分配型ファンド自体の人気に陰りが見えてきたのかもしれない。
そもそも2017年に入ってから新しい毎月分配型ファンドはあまり提供されていない。2017年7月末までに設定されたファンド(SMA専用ファンドを除く)は230本あったが、そのうち毎月分配型のファンドは16本しかなかった。さらに新規設定ファンドの流入ランキングを見ても、人気になった新設ファンドの多くが外国株式のテーマ物であり、上位10ファンドのうち毎月分配型は1本のみであった【図表3】。2017年前半は様々なタイプの毎月分配型ファンドに資金流入していたが、新たなヒット・ファンドは生まれなかったといえる。金融庁が毎月分配型ファンドを問題視しており、金融機関が新たな毎月分配型ファンドの設定や積極的な毎月分配型ファンドの投資勧誘を自粛してきていることも影響していると思われる。
ブラジル株式ファンドが好調
7月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、ブラジル株式ファンドが好調であった【図表4】。ブラジル株式は2月に高値をつけてから、大統領の汚職問題など政治的な不透明感が嫌気され、下落傾向にあった。それが7月は原油価格の上昇や中央銀行の利下げなどを好感し反発したため、ブラジル株式ファンドが高パフォーマンスであった。また、対円でブラジル・レアルが1カ月で4%ほど上昇したことも追い風になった。
ただ、ブラジル株式ファンドの資金動向を見ると、7月は4億円の資金流入とほとんど資金流入していなかった。7月のパフォーマンスは好調であったが、投資家はブラジル株式について今後の動向を静観しているようだ。
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前山裕亮(まえやま ゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
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