夏真っ盛りである。
通勤電車でも、飲み屋でも、サラリーマン同士で「夏休みどうするの?」なんて会話が耳に入ってくる。そう、世間一般は夏休みなのだ。しかし、銀行はカレンダーが黒い限りシャッターを開けなければならない。
もちろん、銀行員だって有給休暇を消化しているのであるが、一般の企業に比べると少し「変わっている」かも知れない。今回は銀行員の休暇事情について紹介しよう。
銀行員は「連続1週間」休暇を取らなければならない
銀行によって細かな違いはあるだろうが、基本的にはカレンダー通りの仕事だ。一部の店舗では休日も受付を行うなど例外はあるものの、銀行員の大部分は一般の会社員と同じくカレンダー通りに休日をとっている。
こうしたカレンダー上の休日に加え、有給休暇を常識的な範囲内で「可能な限り消化できる仕組み」が考えられている。その仕組みには様々な呼び名が付けられている。たとえば「連続休暇」だ。
「連続休暇」とは1年に1回、連続して1週間休暇を取らなければならない仕組みである。その他にも3日程度は必ず有給休暇を消化することで概ねのコンセンサスは出来上がっている。さらに余裕があれば、夏休みや冬休みとして2日程度取ることも可能だ。つまり、年間で少なくとも8日、多ければ10日程度の有給休暇を消化しているのが実態といえるだろう。
さて、この銀行員の有給休暇の数字をどう見るか。私自身は可もなく不可もないと考えているのであるが、周囲からは意外とうらやましがられることがある。
「連続休暇」の真の狙いとは?
「連続して1週間も休めるなんて良いですね」お客様からそう言われることがある。しかし、1週間の「連続休暇」の真の狙いは別のところにある。
そもそも、なぜ「1週間の連続休暇」なのか。
それは当局からそのように指導を受けているからだ。すなわち、その行員が不正を行っていないか、休暇を取らせている間に調べるのだ。もし、顧客口座から資金を流用していたり、できもしない融資の口約束をしていたなら、1週間の間に露見するという考えだ。
確かに、不正を隠すためには頻繁にさまざまな隠蔽工作が必要になる。お客様との手続きもそうだ。他の行員や上司が代わりにお客様との手続きを行えば、不正が露見する可能性が非常に高い。不正と言うほど大げさではなくとも、事務や営業の問題点が明らかになることだってある。定められた事務手順に則って手続きを行っていなかったり、顧客対応に不備があったり、そういったことを「あぶり出す」という観点からもまんざら悪いことではない。
もし、その行員が休暇を取ることを渋ったり、頻繁に休暇の予定を変更するようであれば、上司から「疑いの目」で見られることになる。「何かを隠している…」そう思われても仕方がない。さらに、上司が部下の担当しているお客様をランダムに抽出し、訪問することになっている。実際にお客様と話すことで、部下の不正が発覚するというわけだ。
もっとも、中には間抜けな管理職もいて、こうした顧客訪問の際に「部下が不正をしていないか確認に来ました」なんて言い出す輩もいる。いきなり銀行の役職者がやって来て「不正が…」なんて話をされて驚かない人はいないだろう。決して笑い話ではなく、実際にそのような「調査」が行われているのだ。
銀行員は休暇を取るのもひと苦労
銀行員は毎年4月になると、色々な計画を立てなければならない。与えられた目標に対し、どんな進捗状況で営業活動を行うのかはもちろんのこと、同時に「年間の休暇の計画」も提出しなければならない。
本来、休暇の計画を立てるのは楽しいはずであるが、実際にはこれが案外厄介なのだ。先に述べたように、休暇を変更すると上司からは「疑いの目」で見られることになるからだ。あなたは、4月に1年間の予定なんて、正確に決めることが出来るだろうか。旅行するにも家族の予定だってあるし、自分の体調だってある。結局細かく考えても仕方がないので、適当に休暇を決めてしまいがちだが、それが後悔のもとになることもある。
自分の都合だけならまだ何とかなるが、他の行員の予定だって考慮しなければならない。みんなが自分の都合を優先し、銀行の窓口に誰もいなくなってしまったのでは洒落にならない。銀行の営業をスムーズに行うにはある程度の行員の頭数が必要だし、係ごとの配分だって重要だ。もし、自分が休暇を取ることで同僚や上司に迷惑をかけてしまってはいけないと考えると、なかなか休暇の予定を取るのも気を遣うものだ。
皆の希望を聞こうと休暇の予定表を回覧しても、「私、最後で良いです」と、誰もが譲り合ってなかなか休暇の予定を立てることができない。結局、誰もが適当に休暇を決めてしまい、不完全燃焼な1年を過ごすことも珍しくない。
より柔軟な改善が求められる
「行員が不正を行っていないか」調査することも重要であるが、もう少し柔軟に連続休暇を取れる仕組みへ改善することは出来ないものだろうか。現状の硬直した仕組みも銀行員らしいといえばそれまでであるが、休暇というものはやはり安心して取りたいものである。
すべての銀行員が正々堂々と休暇を楽しみ、リフレッシュし、時には自分自身に投資する。これからの時代、銀行員の休暇のあり方についても大きく改善したいところだ。(或る銀行員)
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