従業員が入社した企業に対して忠誠を尽くし、生涯にわたって勤め上げるという働き方は、もはや当たり前ではなくなってしまった。インターネットが普及し、情報がいきかう現代では、職場への不満があれば、より良い条件の職場を求めて離職するケースが珍しくない。

従業員が離職する原因、そしてその対策とは何だろうか。厚生労働省が実施した統計から離職の実情と背景を探り、離職率を下げるための対策について考える。

業種によって異なる離職率

Businessman
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

「大卒の3割が3年以内に辞める」といわれて久しい。その状況は改善することなく、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況に関する資料一覧」によれば、2013年での大卒就職者の3年内離職率は31.9%であった。

しかしこの離職率は、どの業種に従事しているかによって変わってくる。厚生労働省が発表している「平成27年雇用動向調査結果の概況」では、産業別の入職率および離職率を調査しているが、最も離職率が高かったのは宿泊業・飲食サービス業で28.6%、次いで生活関連サービス・娯楽業が21.5%、その他のサービス業が20.0%という結果であった。これらの業種は、入職率についても同じ順位で高く、人の出入りが激しくて定着しにくい傾向にあることがうかがえる。

一方で、離職率が最も低かったのは複合サービス事業で8.1%、次いで金融業・保険業の8.7%、建設業の9.5%と続いた。これらの職種は入職率についても同様に低かった。また16大産業のうち、製造業など3産業については離職率が入職率を上回っており、早急な対策が必要となっている。

前職を辞めたわけについて徹底分析

それでは離職に至った理由とは何だろうか。前職を辞めたわけについては、男性と女性、年齢層などによって傾向が異なる。

男性の場合、平成27年の同調査では「その他の理由(出向等を含む)」を除くと「定年・契約期間の満了」が15.0%で最も高かった。次いで「給料等収入が少なかった」が10.5%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」も同じく10.5%であった。一方女性の場合は、「その他の理由(出向等を含む)」を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が13.8%と最も高く、「職場の人間関係が好ましくなかった」の12.2%が続いた。男性に比べて「職場での働きやすさ・環境」を重視していることが見て取れる。

前年と比べて上昇幅が大きかったのは、男性では「仕事の内容に興味が持てなかった」、女性では「給料等収入が少なかった」となった。

また年齢別に離職理由を見てみると、60代で離職した理由は男女ともに「定年・契約期間の満了」が最も高かった。しかし20代~50代の男女では、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」、「職場の人間関係が好ましくなかった」、「給料等収入が少なかった」といった職場環境や待遇に対する不満が多く見られた。

職場環境改善で離職率に歯止めをかける

これらの統計から、職場環境は離職率に大きな影響を及ぼしているといえる。そのため、職場環境を見直して改善することは、離職率に歯止めをかけるのに有効な手段といえよう。また職場環境の改善によるメリットはそれだけではない。環境が整うことによって従業員の働く意欲が高まって生産性が上がり、企業の業績向上にもつながることが分かっている。(厚生労働省2015年度「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」より)

しかし、職場環境を改善すると簡単にいっても、一朝一夕にできることではない。事業主の時間的・金銭的負担は小さくなく、しかも継続してより良い環境を提供していく必要があるためだ。

そのため厚生労働省では、職場環境の改善に取り組む事業主を対象に、各種の助成制度を用意している。労働時間や年次有給休暇の見直しなどに対する「職場意識改善助成金」や、企業内におけるキャリアアップを促進するための「キャリアアップ助成金」などの援助が受けられるのだ。研修制度の導入や仕事と家庭の両立も支援しており、職場改善を目指す事業主にとって力強い味方となってくれる。

従業員の離職を防ぐためには

企業の業績にも影響を及ぼす従業員の離職問題を改善するには、従業員が長く勤めたいと思えるような魅力的な職場づくりが大切だ。労働時間の削減、勤務形態の柔軟性、報酬制度の見直しなど、離職を防
ぐための課題は山ほどある。

従業員の目線に立ち、様々な支援制度を利用するなどして職場環境を改善する取り組みこそが、離職率を下げるうえで重要となってくるであろう。(提供: 百計オンライン

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