インターネットを利用できるパソコンを有料で使えるネットカフェ。自宅にパソコンがある人からすると「なぜわざわざ?」と思われるかもしれないが、昨今の若者は自宅にパソコンを持たず、レポートすらスマホで書き上げるといわれる。パソコンはない人だけでなく、高速ネット回線をつなげていないという利用者もいるだろう。

日本では当初、ネット接続できるパソコンの貸し出しが「マンガ喫茶」のサービスの一つだった経緯もあり、「インターネット・コミック・カフェ」のような形態の店舗が一般的になっている。

ただ最近では、ノートPCやタブレット、スマートフォン、携帯ゲーム機などに対応して、無線LANのアクセスポイントの設置やLAN端子を開放するといったサービスを提供している店も増えてきているという。そこでここでは、ネットカフェを展開している上場企業の現況をのぞいてみることにしたい。

複合カフェの走り「自遊空間」を運営 ランシステム

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(写真=PIXTA)

ランシステム <3326> は、施設内で多様な娯楽コンテンツを同一の料金で提供するカフェスタイルの店舗、いわゆる「複合カフェ」の走りとなった「自遊空間」を運営している。この「自遊空間」は、時間消費型のアミューズメントというビジネスモデルが支持され、FCを含め全国に広く展開されている。

一人でやって来た顧客は、受付カウンターで入場手続きを終えた後、施設内の好みのコンテンツを自由に利用できる。子供のころに読んだ漫画を読み返すのも、ハイスペックPC導入ブースで快適環境下のオンラインゲームを楽しむのも、それこそ「自遊」なのだ。

カップル向けにはダーツやビリヤードも人気がある。ペアで座れるソファー席で充実した時間を楽しむことができる。また複数人やファミリーの顧客には、ゆったりしたファミリールームも用意されている。

ゲオグループから現在はRIZAPグループのSDエンターテイメント

SDエンターテイメント <4650> は須貝興行からスガイ・エンタテインメントを経て2005年にゲオの傘下となった後、2014年にはゲオグループを離脱、RIZAPグループ <2928> の傘下となっている。地元の北海道でゲームやボウリングなどを展開する他、本州ではフィットネス施設を展開している。

同社の展開する時間消費型の複合カフェ「dinos cafe」では、飲食とともにコミックや雑誌、インターネットやオンラインゲームなど、様々な娯楽コンテンツを楽しむことができる。最新・最速のPC「ALIEN WARE」を導入するなど、設備面も充実している。

また最近では、オープンカフェブースで仕事をする人や、レストラン感覚で食事を楽しむ顧客も増えているという。

紳士服のAOKIが運営「快活CLUB」

AOKIHD <8214> は紳士服専門店で業界2位のグループでは、エンターテイメント事業のヴァリックがカラオケルームや複合カフェ、フィットネスクラブなどを展開している。特に「快活CLUB」は、「極上のリラックスをもっと手軽に」とのコンセプトの下、会員制複合カフェとしてインターネットやコミック、マッサージチェアなどの多彩なコンテンツを提供している。

「快活CLUB」の店舗演出は、アジア屈指のリゾートアイランド、バリ島の高級ホテルをイメージしたもので、インテリアにはバリ直輸入品を使用。照明の使い方にも工夫を加えるなど、利用客に日常から離れた「癒しの空間」を提供しているという。またコンテンツも、一人でもゆっくり楽しめるコミック、雑誌、マッサージシートのほか、多人数で楽しめるオンラインダーツやビリヤード、カラオケなどが用意されている。

さらに女性のための新しい空間「女性専用エリア Villa me time」では、女性の顧客からの意見を参考に、企画・立案からお店のデザインにいたるまでを若手女性社員が手掛けるなど、従来の「インターネットカフェ」のイメージを払拭するような、明るく、安心・安全で、清潔感のある空間を実現しているのだという。

このほかにもたとえばテイツー <7610> が以前ネットカフェを営んでいたが、2011年に事業を譲渡している。また翔泳社などを傘下に持つSEホールディングス・アンド・インキュベーションズ <9478> は今年9月、ネットカフェ事業を営んでいた子会社INCユナイテッドの株式を譲渡、ネットカフェ事業からは撤退している。

狭い個室ということもあってか、かつては「暗いイメージ」を持っている人もいたネットカフェだが、最近はきれいに使いやすく、快適な空間を提供しているところも少なくない。いくたびかの淘汰やM&Aが繰り返されるうちに、単なるインターネット環境の提供といったレベルではなく、利用者のために快適な空間を演出するというビジネスモデルが、徐々に確立されつつあると言っても良いのかもしれない。(ZUU online編集部)