FXのような取引においては、テクニカル分析に絶大なる信頼を置く投資家が多いです。しかし、時には「テクニカル分析」を捨てることで、道が開けることもあるのです。

(本記事は、新山優氏の著書『元コンビニ店員だけど、FXで月給100万ちょいもらってる話』ぱる出版(2017年8月18日)の中から一部を抜粋・編集しています)

先生、勘弁してください

私は、絶体絶命の危機を救ってもらおうとして、その先生の塾に参加しました。ホワイトボードには大きく今までとは逆のことをやれ!と書いてありました。『今までとは逆のことをやれ?』そうは言われても、具体的に何をしたら良いのかよく分かりませんでした。先生が、教室に入ってきて、ホワイトボードを消して、新たに『一瞬で勝てるようになる方法』と書きました。

先生「今まで勝っている人が何をしてどうやって勝ってきているのかを知ることがとても大切です。どういう行動を取れば、投資でプラスになるのかと考えたことはありますか?」

『んんん?』そう言えば、私は、自分が1日いくら稼げるか?コンビニのアルバイトのように日給を稼ぐような考えしか思いつきませんでした。必死にトレードをしていただけ、ただ、それだけです。勝っている人の行動?もしかして、FX雑誌に掲載されていた勝ち組トレーダーたちの手法は、勝っている人の行動を調べていたと言えるのだろうか?

先生「前回のセミナーで、利益をとる時は、凄く小さくて、失う時は、凄く大きい人、こういう人はコツコツドカンの典型になるというお話をしましたね?」

『はい。覚えています。まるで、自分の話をされているような気分になりました。』

先生「それを、簡単に直すには、一発、一瞬で、できるんです!」

え?もう、心の声が大叫びでした。凄い!やったぁ。この塾に入って良かった!

先生「負ける人は、何を考えているか?というと、今、足元の利益を少なくとも失いたくないと思っているというわけです。そうでしたね?」

『はい。私のこと、何で分かるんですか?もう、これ以上、損失を作りたくないです。お金を失いたくないです。』また、心の声が大きく叫び、カラダはうなづいていました。

先生「そういう人達は、逃げてしまうトレードをするのです」

『逃げる?はい。私は完全に「勝ち逃げトレード」という手法をやってましたけれど、何か?』

先生「本来到達するはずの利益のところまで継続できずに、早め早めで利益を確定して確実にしていこうとするのです」『むむむ。その通りですけれど、それをしなかったから、自分の場合は最初に大負けしたんだし、それは、賢いやり方ですよね?』

先生「投資金を失うことを恐れて、ビビッちゃって、逃げちゃってる人は、気を付けてください。そのままでは、本当に勝つトレーダーにはなれません。そんな風に、コツコツと勝ちを積み重ねて、大きく負けていたら意味がないんです。その意識を変えてください」

『む、む、胸が痛い…。自分はビビッちゃってたというのか?こんなにテクニカル分析も駆使して、強いトレードと確実な利確を計画的にしていたつもりなのに……。勝ち組思考とは言えないのだろうか?』

先生「この塾に入ったあなたは、これから、大きく勝つ人になっていただきたいのです。それは、コツコツ勝つというタイプではないということです。勝つトレーダーは、小さな利益をコツコツと稼ぐのではなくて、むしろ、それを、捨てられるようになることです」

『捨てる?私、初回で、マイナス18万円も負けましたけれど、それを捨てるというわけですか?いや。待てよ。それは無理。リスクは取れません。』

先生「それは、どういうことかというと、低迷していた相場が、大きく上がりました!という時に、例えば、株だったら3倍上がりました!というような時に、勝つ人というのは、小さな利益を取ることは捨てます。しかし、負ける人は、小さな利益を取ろうとして、すぐに利確します。勝つ人というのは、その3倍という値幅を確実に取っていきたいので、小さな利益を取ろうとはしません。資金が減ると、利益も減ることが分かるからです。仮に、上がると思って、上がらなくて戻ってきてしまったとしても、その1回のトレードの利益というのは、買値とプラスマイナスゼロの状態で捨ててしまって良いのです。トントンで良いと考えるのです」

『まじか?確かに、初めてトレードした時は、トレンドが下降しても、戻ってきて5万円を利確するまで待ち続けて、結局、マイナスになっても、また、戻ってくるのを待っていたな?そうか、今後は、マイナスになる前に、プラスマイナスゼロまでは戻ってくることを粘っても、それ以上は、損切りすれば良いのか!今までどうしてそんなことにも気が付かなかったのだろうか?』

先生「相場が自分の思ったように動くとは言い切れないけれども、3倍の利益を取るためには、どこかでエントリーしない限り、永遠に利益も取れません。どこかしらでの一発は絶対に取るように投資の行動をしていかないといけないのです。コツコツドカンをやってる人は、残念ながら、それとは逆のことをずっと繰り返しているのです。それは、ずばり、どういうことでしょうか?」

『え?どういうこと?』

先生「それは、ずばり、一生勝てるようにならないということです」

『ガーンッ。それはまずい。一生勝てるようにならないなんて、先生、お願いだから、そんなことは、言わないで欲しい。借金がどんどん増えていくような人生は、イヤだし、自転車操業からも脱け出したい、コンビニ生活だって辞めたいんです!』

いよいよ、具体的にコツコツドカンから脱出できる方法の実践会の時間となりました。私は、休憩ということで、トイレに行くと、鏡に映る自分の目が血走っているのが分かりました。

テクニカルを捨てる勇気

席に戻って、気合いを入れて、耳をかっぽじって聞く姿勢を取りました。果たして、これからの私の人生はどうなるのだろうか?この先生の教えで、私は、本当の天国行きとなるか?地獄行きとなるか?吉と出るか?凶とでるか?この先生が、天使なのか?悪魔なのか?意を決して初めて声を出して質問をしてみました。

先生「コツコツドカンの人は、これから、とても簡単な手法を教えます」

私は、固唾を飲んで、緊張した面持ちで、先生の言葉のメモを取る準備をしました。

先生「すばり!1勝9敗手法です。三ヶ月間、粘っても良いから、3倍の利確を取るまで、途中で利確をしないで勝負することです」

私「先生、もしも、上昇トレンドだと思って、エントリーした途端に、下落方向に向かってしまった場合は、どうしたら良いのでしょうか?」

先生「そういう場合は、ロスカット設定をしてから、エントリーすれば良いのです。利益が小さくて損失が大きいことに問題があるので、損失を小さくしてエントリーしてみてください。プラスマイナスゼロ以上で利確していけば、損失はでないわけですよね?

1回でも、ドカーンと動いたら、一発逆転のように、勝ち組になります」

『おお!そうか。私は、3倍の利確を狙うということは、借金を増やすことだと勘違いしていたけれど、ここで言う、負けとは、プラスマイナスゼロだから、借金は1円も増えないのか…。これは、凄いぞ!やばっ。見えたぞ。ゴールが見えたぞ。9回、3倍にならなくても、1回でも、到達すれば、10万円は、30万円に、100万円は、300万円になるのかぁ〜凄いな?これ。早速やってみよう。』

先生「もう、レンジでチョコチョコ取っていくなんてことは、100回分捨てても良いから、やらないように。1回だけでも、ドカンと取って、勝率を気にしないトレードをしてください。これがFXの本質であることを知るのです」

『ひえ。今週は、とにかく、勝率を上げる方法を片っ端から勉強していたところですよぉ。1勝100敗でもいいんだぁ?』

先生「負けている人から見ると、勝てるトレーダーさんは、特別な人で、つい、才能があったり、優秀な手法を知っていて、それを使いこなしているのだろう。それを知らない自分は、勉強不足なんだと思ってしまいがちです」

『先生、その通りです!』

先生「しかし、実際には、そうではありません。才能がなくても、優秀な手法を知らなくても、勝てるのです。逆に言うと、そのような才能や手法に頼ろうとするから負けるのです。もう一つ、負けてしまう人は、手法やルールを使いこなせずに、自分勝手に判断して行動してしまうことが原因です。手法のルールに従わない人が損失を拡大させてしまうのです。それは、とても、残念なことです。どんな手法を使っても同じです。負けるパターンを繰り返す人は、いつまで経っても勝てないトレーダーのままになってしまうのです。あなたはいかがですか?」

私は、眉間にシワを寄せて先生の方をみました。先生と目が合うと、先生は優しそうな笑顔で続けました。

先生「それでは、あなたが勝てる人になる為には、どうしたら良いのか?もう一度、復習をしてみましょう。あなたには、特別な才能もトレーダーとしてのセンスも必要ありません。あなたに大切なことは、きちんとルール通りに従うことだけです。ルール通りに従ってトレードできるようになって、はじめて、その手法やサインの良し悪も判断できるようになるはずです」

新山優
1984年生まれ。就職氷河期の影響を受け、就活そのものを断念し、コンビニエンス・ストアのアルバイトで月20万円に満たない生活をスタートさせる。渋谷の中心地で、多い時は週7日の深夜勤務を続ける中、FXの研究を始める。新山システムと言われる大胆かつ繊細な投資法で、常勝トレーダーの仲間入りをする