シンカー:日本が比較優位を持つ資本財の輸出が堅調な伸びをみせるとともに、円安をともなう競争力の改善を反映して世界貿易に対する日本のシェアも上昇しているとみられる。人手不足は深刻であり、需要の増加に対する供給の対応を整え収益機会を逸失しないため、企業は生産性を向上させることが急務となっている。そして、新製品の投入などでの売上高の増加のため、設備投資と研究開発が拡大し始めている。好調な内外需を背景に、生産の増加トレンドは引き続きしっかりとしているとみてよいだろう。経済産業省は、生産の判断を「持ち直している」とし、前回の「持ち直しの動き」から上方修正した

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

11月の鉱工業生産指数は前月比+0.6%と、10月同+0.5%に続き、2ヶ月連続の上昇となった。

誤差調整後の経済産業省予測指数である同-0.1%を上回った。

10月が二度の台風の本州接近で物流が滞るなどして、生産に下押し圧力があったため、その反動で予測指数より上振れたとみられる。

これまではIT関連財を中心とする生産・在庫循環のグローバルな好転に支えられていた。

その動きが一服した後は、IoTなどの産業変化もあり、データセンサーや車載向けの部品などは増加を続けている。

更に、日本が比較優位を持つ資本財が堅調な伸びをみせるとともに、円安をともなう競争力の改善を反映して世界貿易に対する日本のシェアも上昇しているとみられる。

11月の資本財の実質輸出は前月比+6.3%とかなり強かった。

日本の輸出環境には追い風が吹いている。

更に、総選挙による連立与党の勝利を経て、政府は2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として「大胆な税制、予算、規制改革などあらゆる施策を総動員する」方針となり、投資活動を促進すると考えられる。

人手不足は深刻であり、需要の増加に対する供給の対応を整え収益機会を逸失しないため、企業は生産性を向上させることが急務となっている。

そして、新製品の投入などでの売上高の増加のため、設備投資と研究開発が拡大し始めている。

内外需含め資本財(除く輸送機械)の生産指数は前月比+4.0%となり、122.6という水準は2008年7月以来の高さである。

雇用の増加と賃金の上昇を背景に、消費活動がしっかりしてきている。

生産の増勢が、外需から内需を中心に裾野が広がってきているとみられる。

7-9月期の実質GDPは二次速報で前期比+0.3%から+0.6%へ上方修正された。

設備投資の上方修正とともに、民間在庫の寄与度が+0.2%から+0.4%へ上昇修正されたことが押し上げた。

二次速報での在庫は、おもに仕掛品と素原材料で修正されることになっている。

二次速報で上方修正されたということは、企業が先行きの生産の増加の準備を進めていることを示している可能性がある。

12月の誤差修正後の経済産業省予測値は前月比+1.8%と引き続き堅調である。

誤差修正後の予測指数を前提とすると、10-12月期の生産は前期比+1.5%と7四半期連続で増加し、7-9月期の前期比+0.4%から増勢が加速した。

1月の予測指数は前月比-4.5%となっている。

年末商戦に向けた耐久消費財の作りこみと在庫積み上げがあり、その反動で1月の予測指数は見かけ上は弱い。

しかし、1月の生産は在庫がどれだけ販売により取り崩されていくのかが左右するとみられる。

年末商戦は好調であるとみられ、1月の予測指数は大幅に上方修正される可能性がある。

好調な内外需を背景に、生産の増加トレンドは引き続きしっかりとしているとみてよいだろう。

経済産業省は、生産の判断を「持ち直している」とし、前回の「持ち直しの動き」から上方修正した。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司