本記事は、小井土 正亮氏の著書『「教える」を手放す 人とチームの自律を引き出すコーチング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。

「教える」を手放す 人とチームの自律を引き出すコーチング
(画像=Trueffelpix/stock.adobe.com)

「どうするか」ではなく「いかにあるか」がすべて

コーチングを実践する際、多くのリーダーは「どう言えばいいか」「何をすればいいか」(スキル)を気にします。
これまでの経験から、私はコーチングにおいて最も重要なのは、「スキル(Doing)」ではなく、リーダーとしての「あり方(Being)」だと考えるようになりました。
ハウツー本には、コーチングについて「何をすべきか」ということが多く書かれています。しかし、「何をすべきか」だけにフォーカスを当ててしまうと、その方法は無数に存在し、どれだけ知識を身につけてもキリがないことになります。

なぜなら、同じような場面に遭遇したとしても、「まったく同じ」であることはあり得ず、唯一の正解などないからです。

コーチングのファーストステップは、相手と「ともにつくり出す」というあり方になれるかどうかです。むしろそのスタンスさえ取れるようになれば、あとは大同小異、どのような働きかけをしても大きな差は生まれないと感じるほどです。

リーダーは、目の前の相手の成長を支援するために、ときには同じ目線に立ち、ときには俯瞰的にその状況を見る。
ときには後ろから押したり、前に立って引っ張ったりして、前進をサポートする。
さらに横から押して進むべき方向を修正する。
まさに進むべき方向に「導く」のです。

コーチングの3つの「あり方」

私は、次の3つのスタンスを大切にしています。私自身のコーチングの実践全体を貫いている部分であるといえます。
「何をする」のではなく「どんな存在であろうとしたのか」です。

知る存在である

相手がどうなりたいと考えているのか。そのために何に困り、何を求めているのかを把握している存在。そのためにヴァーバル(言語的)な方法はもちろん用いるが、相手の表情、目の力、話しぶり、身なりの変化などから「察する」ことも必要となる。

認める存在である

相手の価値観、人生観を尊重し、まず自分とは異なることを認めている存在。そのためには、自分とはどういった点で異なっているのかを理解するために徹底した自己分析、自己理解も欠かすことができない。

見守る存在である

相手の主体的な行動が起きるまで待ち、必要であればサポートできる存在。本人のなかでどのような変化が起きているのかを想像し、不必要に働きかけをしない。

「教える」を手放す 人とチームの自律を引き出すコーチング
小井土 正亮(こいど・まさあき)
1978年岐阜県生まれ。筑波大学体育系准教授。筑波大学蹴球部監督。
岐阜県立各務原高等学校卒業後、筑波大学体育専門学群に進学。在学中は大学3年、4年と全日本大学サッカー選手権大会で準優勝を経験。筑波大学大学院に通いながら、水戸ホーリーホックに入団。1年間プロ選手生活を送った後、現役引退。2002年に筑波大学蹴球部ヘッドコーチに就任。大学院修了後、柏レイソルのテクニカルスタッフ、清水エスパルスやガンバ大阪のアシスタントコーチなどを経て、2014年に筑波大学体育系着任。翌年から蹴球部の監督に就任。
サッカー日本代表の三笘薫選手をはじめ、多くのプロ選手、指導者を輩出。2025年には関東大学サッカーリーグ優勝、全日本大学サッカー選手権大会優勝と45年ぶりの二冠に導く。

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