結果の概要:雇用者数は前月、市場予想を下回る
1月5日、米国労働省(BLS)は12月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+14.8万人の増加(*1)(前月改定値:+25.2万人)と、+22.8万人から上方修正された前月を大幅に下回ったほか、市場予想の+19.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2)。
失業率は4.1%(前月:4.1%、市場予想:4.1%)と、こちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表6)。一方、労働参加率(*2)は62.7%(前月:62.7%)と、こちらも前月に一致した(後掲図表5)。
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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
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結果の評価: 12月は全般的に回復が足踏みも、労働市場の回復基調は持続
12月の非農業部門雇用者増加数は前月改定値、市場予想を下回ったものの、10-12月期の月間平均増加ペースは20.4万人増と、ハリケーンの影響で鈍化した7-9月期の12.8万人増を大幅に上回った。また、17年通年では17.1万人増と16年の18.7万人増から小幅に伸びが鈍化したものの、統計開始以来最長となる87ヵ月連続で雇用が増加していることを考慮すると、12月は予想を下回ったものの、雇用増加ペースの基調は強いと言える。
一方、家計調査では失業率と労働参加率が3ヵ月連続で横這いとなった。失業率は00年12月以来の低位に留まっており、労働需給がタイトであることを示しているものの、足元では回復が足踏み状態となっている。
12月の時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.3%(前月改定値:+0.1%、市場予想:+0.3%)となったほか、前年同月比が+2.5%(前月改定値:+2.4%、市場予想:+2.5%)となり、前月比、前年同月比ともに▲0.1%ポイント下方修正された前月改定値からは加速したものの、市場予想に一致する結果となった(図表1)。
このようにみると、12月の雇用統計は全般的に回復が足踏みしていることを示す結果と言えよう。もっとも、基調としての労働市場は回復が継続しているとみられる。企業の採用意欲が強いことから労働需要が非常に強いためだ。一方、回復期間が長期化する中で熟練労働者を中心に一部業種で労働力不足が深刻化しており、労働供給面から雇用回復ペースが鈍化する可能性については注意が必要だ。
事業所調査の詳細:年末商戦に向けた採用増の反動で小売業の雇用が減少
事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+9.1万人(前月:+17.6万人)と、前月から伸びが大幅に鈍化した(図表2)。
サービス部門の内訳では、年末商戦に向けて採用を増やしていた小売業が前月比▲2.0万人(前月:+2.6万人)と、採用増の反動もあってマイナスに転じた。また、専門・ビジネスサービスも+1.9万人(前月:+4.9万人)と前月から伸びが鈍化した。一方、医療サービスでは+3.1万人(前月:+2.9万人)と小幅ながら前月から伸びが加速した。
財生産部門は、前月比+5.5万人(前月:+6.3万人)とこちらも前月から伸びが鈍化した。建設業が+3.0万人(前月:+2.7万人)と前月から伸びが加速した一方、製造業が+2.5万人(前月:+3.1万人)と伸びが鈍化した。
政府部門も、前月比+0.2万人(前月:+1.3万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、連邦政府が前月比+0.1(前月:▲0.5万人)と増加に転じたものの、州・地方政府が+0.1万人(前月:+1.8万人)と、前月から伸びが鈍化したことが大きい。 前月(11月)と前々月(10月)の雇用増(改定値)は、前月が+25.2万人(改定前:+22.8万人)と+2.4万人上方修正された一方、前々月が+21.1万人(改定前:+24.4万人)とこちらは▲3.3万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.9万人の下方修正となった(図表3)。
なお、BLSの公表に先立って1月4日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+25.0万人(前月改定値:+18.5万人、市場予想:+19.0万人)と、+19.0万人から小幅に下方修正された前月から伸びが加速したほか、市場予想を大幅に上回った。この結果、12月は前月から伸びが鈍化した雇用統計とは不整合な動きとなった。
12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.63ドル(前月:25.54ドル)となり、前月から+9セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.5時間(前月:34.5時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は918.74ドル(前月:915.63ドル)と前月から増加した(前掲図表4)。
家計調査の詳細:労働力人口は2ヵ月連続増加も力強さを欠く
家計調査のうち、12月の労働力人口は前月対比で+6.4万人(前月:+16.2万人)と、前月から伸びが鈍化したものの、2ヵ月連続の増加となった。内訳を見ると、失業者数が▲4.0万人(前月:+9.2万人)とマイナスに転じたものの、就業者数が+10.4万人(前月:+7.1万人)と前月から伸びが加速し、労働力人口を押し上げた。一方、非労働力人口は+9.6万人(前月:+2.1万人)と前月から伸びが加速し、3ヵ月連続の増加となった。
この結果、労働力人口は増加したものの力強さに欠けたことから、労働参加率は3ヵ月連続で62.7%に留まり9月につけた63.0%を下回る状況が持続している(図表5)。
なお、12月の家計調査では季節調整係数の見直しにより、13年1月以降の統計が改定されたが、17年の失業率では9月分が4.4%から4.3%に▲0.1%ポイント下方修正されたほかは、小数第1位までの変更は無かった(図表6)。
次に、12月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、151.5万人(前月:159.3万人)となり、前月対比では▲7.8万人(前月:▲5.2万人)と、5ヵ月連続の減少となった。長期失業者の失業者全体に占めるシェアも22.9%(前月:23.9%)と、3ヵ月連続の低下となった。また、平均失業期間は23.6週(前月:25.2週)と、こちらも3ヵ月連続の低下となった(図表7)。
最後に、周辺労働力人口(162.3万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(491.5万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、12月は8.1%(前月:8.0%)と4ヵ月ぶりに前月から上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.0%ポイント(前月:3.9%ポイント)と、こちらも6ヵ月ぶりに拡大に転じた。
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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
(4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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