2017年、もはや規制当局が「無視できない」ほどの伸長を見せたビットコインなどの仮想通貨やブロックチェーン。

ビットコインを筆頭とする仮想通貨市場は2017年第2四半期に1000億ドル、第3四半期にはそれを上回る1700億ドルに急成長を遂げた(コインデスクの四半期調査による)。

ICOではファイルコインが2.6億ドルの資金調達で記録を更新するなど全体で12.4億ドルが調達されたほか、イーサリアムのブロックチェーン・プロジェクト参加企業は200社を超えている。

仮想通貨やブロックチェーンの伸長はもはや規制当局が「無視できない」水準に達し、今年のダボス会議ではついに主な議題として論じられることとなった。

ビットコインの割合が仮想通貨市場の半分以上 イーサリアム、リップルが追う

価格上昇のピークは第2四半期で267.39%。2017年11月に発表された第3四半期の報告書によると、第3四半期は中国を含む一部の地域で仮想通貨やICO廃止の風向きが強まった影響を受け、54.03%まで落ち込んだものの、(コインマーケット・キャップ2017年10月1日付データ )、特にビットコインやアルトコインは順調に価格を伸ばした。

イーサリアム、リップル、ダッシュ、モネロなどの日次リターンが約5%、価格が3000%増と快調さを見せた一方、ビットコインが再び仮想通貨市場の半分(48.5%)を占めるようになった。9月末日のコインダンスのデータでは、イーサリアム(19.41%)、リップル(5.16%)、ビットコインキャッシュ(4.94%)、ライトコイン(1.98%)、ダッシュ(1.69%)などを大きく引き離している。ビットコインの日次リターンは3.9%。

仮想通貨の市場価値は50%以上増え、1700億ドルを超えた。ビットコインの市場価値は約700億ドルと、VISA(2400億ドル)の3分の1弱というところまで迫っている。

「ビットコイン」「仮想通貨」「ブロックチェーン」に関するGoogle検索件数が記録的に増えたというから、新たな層による関心が一気に高まったものと推測される。

ICO史上最高額2.6億を調達したファイルコイン、コインベースがユニコーンに

第3四半期のICOの資金調達総額は12.4億ドル。資金調達額が最も大きかったのはファイルコイン( https://filecoin.io/ )で2.6億ドル。次いでテゾス( https://www.tezos.com/ )が2.3億ドルを記録した。

米国最大の仮想通貨取引所コインベース( https://www.coinbase.com/ )の資金調達総額は1億ドルを突破し、時価総額が16億ドルに。仮想通貨産業初のユニコーン誕生となった。2017年8月の時点でタスクベンチャーズやスパークキャピタルなどから、総額2.2億ドルを獲得している(クランチベース2018年1月24日付データ )。

過去1年の資産成長率を比較すると、仮想通貨の跳躍ぶりに圧巻させられる。国際不動産のリターンが4%、安全資産である金のリターンが10.1%、米国株式が13.1%であったのに対し、ビットコインは332.2%、仮想通貨は690.8%にもおよぶ(コインキャップ、コインダンス。Yahoo!ファイナンス2017年9月30日付データ )。

国際企業が続々ブロックチェーン・プロジェクトに参加

不特定多数が参加できるパブリックブロックチェーン資産は4倍増(750億ドル相当)。大手企業のブロックチェーン・プロジェクト参加も加速している。なかでも2017年2月に設立された「エンタープライズ ・イーサリアム ・アライアンス( https://entethalliance.org/ )」の急成長が目立つ。JPモルガン・チェース、Microsoft、アクセンチュア、インテルといった初期メンバーのほか、シスコ、マスターカードなどが新たに加わり、参加企業数が200社を超えた。

リナックスファウンデーションによる「ハイパーレジャー( https://hyperledger.org/ )」には、同じくJPモルガン・チェース、アクセンチュア、インテルのほか、アメリカンエキスプレスやIBM、ダイムラー、富士通、日立が参加。シスコ、オラクル、バイドゥ(百度)、シャオミ(小米)などが新メンバーに加え、参加企業数が100社以上に。

「R3( https://www.r3.com/ )」にも分散型台帳プラットフォーム「コルダ(Corda)」のプロジェクトパートナーとして、アクセンチュア、Microsoft、インテル、、KPMG、オラクル、NTTデータ、LG、キャップジェミニを含む国際企業100以上が参加している。

ダボス会議主議題 「国際金融の再構築」 と「クリプト資産バブル」

ダボス会議を主催する世界経済フォーラムは2015年の時点で、ブロックチェーンを「今後社会に影響をおよぼす大新興技術のひとつ」 と見なしていたが、ダボス会議で主議題として論じられるのは今年が初めてだ。

「国際金融の再構築」 と「クリプト資産バブル」 というふたつのテーマが選ばれ、ブロックチェーンに秘められた可能性や仮想通貨およびICOトークンの価格高騰に関して議論される 。

元バークレイズ銀行のCEOアントニー・ジェンキンス氏はフィナンシャル・タイムズ紙 のインタビューで、「もし世界の全通貨をひとつに統合することができれば、素晴らしい恩恵が受けられる」と述べている(2018年1月付記事)。この発言がすべての金融機関や政府機関の方向性を象徴するものではないにしろ、様々な国・地域でブロックチェーンや仮想通貨が「未知の可能性」から「実用化の可能性」へ移行しつつあるのは間違いなさそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

【編集部のオススメ FinTech online記事】
FinTech普及率調査「中国は日本の3倍以上」 EY報告書
機械学習するAIハッカーがセキュリティプログラムを打ち破る
ブロックチェーン・カンファレンス開催、ビットコインの犯罪捜査やセキュリティに関して議論
「ビットコインは詐欺」JPモルガン・ダイモンCEOが相場操縦と訴えられる
銀行とFinTechスタートアップが役割入れ替え API使ったビジネス模擬プレゼン