要人発言で揺れ動いたドル円相場
先週、ドル円相場は108円台前半まで大きく円高が進行した。
その要因は、先週末まで開かれていた世界経済フォーラム(WEF)/通称ダボス会議で、アメリカのムニューシン財務長官が「貿易の面ではドル安のほうが望ましい」と発言したこと だ。
そこから一気にドル安円高に動いた。
しかしその直後にトランプ大統領が「ドルは強いほうが良い」と発言し、一旦戻したものの、
その後、黒田日銀総裁が「長いこと苦労してきたが、デフレ脱却の道すじが見えてきた」というような発言をしたことから、日銀の金融緩和が早期に縮小するという観測が強まり、また大きく円高に動くということになった。
人間の思惑で円買いを仕掛けている部分も
このような要人発言で、コロコロ、コロコロ為替が動くというのは投機的な動きだと考える。
その背後には、その人達の発言をひろって機械的に、文字通りアルゴリズムが、円買いを仕掛けているということもあるだろうが、そうではなく本当の人間の思惑部分も相当程度あると考えている。
冷静になって考えると、アメリカの金利は、アメリカ経済の好調さや減税などを織り込んで、すでに2.6%以上に長期金利が上昇している。
一方日本は、日銀がイールドカーブ・コントロールを続けている。現在長期金利をゼロ付近にしているが、仮に日銀がこの緩和を縮小し金利を上昇させたとしても、せいぜい0.1%程度が限度だ。
マーケットは最終的に何に着目するのか
そう考えると、実際にマーケットは最終的に何に着目するのか。
金利の水準や金利上昇のスピードか、あるいは実際アメリカがやっている利上げなのか。
仮に日銀が緩和縮小に動くとしても、利上げまで踏み込めるのは何年先なのか。
そのあたりを考えると、足元の緩和縮小観測だけでは、円高方向に為替がふれるというのは行き過ぎだ。
先週の円高への流れは、投機的な動きであろうと考える。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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