経済ジャーナリスト荻原博子さんの著作『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書)が、版を重ねてロングセラーになっています。投資をはじめるビジネスパーソンや主婦が増えるなか、安易な考えで投資をしないよう注意を促す内容は共感できますが、不動産投資への言及は間違いが多いように感じます。失礼ながら反論させていただきます。

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(写真=Sergey Nivens/Shutterstock.com)

「物件価値はゼロに近づいていく」はありえない

『投資なんか、おやめなさい』では、以下の投資の問題点を指摘しています。

・外貨建て生命保険
・個人年金
・毎月分配型投信
・定期預金
・個人向け国債
・外貨預金 and more…

早い話があらゆる投資を斬りまくっているわけです。 その内容は全体的に納得できるようまとまっていますが、不動産投資(マンション投資)の部分は、あまりにも現実とかけ離れているため反論したいと思います。

荻原先生が不動産投資を否定する理由はいくつかありますが、そのなかでも、「投資用マンションは所有している間に価値が下がっていく」という点を強調しています。たとえば、本文から抜粋するとこのような感じです。

“貯金なら、1,000万円預けたら、この1,000万円に対して微々たるものでも利息がついていくのですが、投資用マンションで1,000万円の物件を買うと、2年目には950万円の価値になり、3年目には900万円の価値になるというように、物件そのものの価値が下がってゼロに近づいてきます。”

この荻原さんの意見で明らかな間違いがあります。不動産投資に詳しい方ならすぐにお気づきだと思いますが、「物件そのものの価値が下がってゼロに近づいてきます」の部分は明らかな間違いです。

たしかに、税務上は減価償却で価値が下がっていきますが、実際に売買するときの実勢価格は、ある程度の築年数で下げ止まると考えるのが不動産業界の常識です。これは資料を見てみると一目瞭然です。三井住友トラスト不動産のレポートによると築年別の東京都内マンションの坪単価は次の通りです。

・築1年  261万円
・築10年 204万円(築1年と比較して57万円マイナス)
・築20年 150万円(築1年と比較して111万円マイナス)
・築30年 148万円(築1年と比較して113万円マイナス)
参照:「東京都 大阪府 愛知県の築年別中古マンション坪単価」(1万円未満は四捨五入しています)

築1〜20年の間は、なだらかに資産価値が減っていきますが(平均年間約5万円ペース)、築20年と築30年を比較すると坪単価がほぼ同じです。つまり、築20年以降は、価値減少が下げ止まったということです。

また、同じ著書の中で荻原さんは「1,000万円で買った1DKマンションを10年目で売ろうした場合、通常だと500万円になる」と言い切っています。もし、これが事実なら、さきほどのデータの築10年の坪単価は130万円になるはずですが、実際は204万円で22%の減少率でしかありません。

強調しすぎの修繕リスクに違和感

このような文章にも反論したいところです。

“予期せぬ修繕のリスク。トイレが詰まったり、エアコンが壊れたり古くなって買い換えたり、風呂の追い焚きができなくなったりと様々なトラブルに対処する費用は大家持ち。水回りの工事などは1回30万円かかります。”

たしかに、不動産投資には、修繕リスクがあります。経営計画は修繕費用を組み込んで立案するのが安全です。その一方、新築物件であれば、築10年ぐらいは大掛かりな修繕が発生しないというのが基本的な考え方でしょう。

修繕リスクを必要以上に強調し、不動産投資は危ないと言い切ってしまうのはかなり乱暴です。

2年に2ヵ月の空室が前提にギモン

また、空室リスクについては、「家賃更新時に空室が2ヵ月発生すると仮定すべき」と言及していますが、立地の良い物件であれば退去になっても募集をかければすぐに埋まるケースが大半です。さらに退去前から募集をかければ空室期間を大幅に短縮できます。

ほかの部分と同様に、物言いが強引で事実と異なる……という印象です。

このコラムでお伝えしたいことは、荻原さんの考えは間違っている!と断じることではなく、有名な先生の言ったことを鵜呑みにせず、「自分自身で考えることが投資においては重要」ということです。

ほかの投資と比較し、メリット・デメリットを客観的に把握したうえで不動産投資をスタートさせましょう。(提供:不動産投資セミナー

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