女優の原田知世さんは、筆者にとってマドンナのような存在である。彼女の代表作といえば、何といっても1987年公開の映画『私をスキーに連れてって』だ。当時の日本は空前のスキーブームで、筆者も週末になると友人を誘ってスキー場に出かけたものだ。ひょっとしたら、原田知世さんのような素敵な女性に出会えるのではないか、との淡い期待を抱きながら……。

ところで、読者のみなさんは「JR SKISKI」キャンペーンをご存知だろうか。JR東日本(東日本旅客鉄道) <9020> が毎年実施しているスキー旅行のキャンペーンなのだが、今年度は『私をスキーに連れてって』の公開30周年を記念して、なんと原田知世さんがイメージキャラクターに起用されたのだ。TVCMやYouTube等のプロモーションを見て、懐かしい気持ちで一杯になったのは筆者だけではないはず。

おりしも株式市場では2月7日、スポーツウェアのゴールドウイン <8111> が1万2880円と史上最高値を付けた。日米の株価が大波乱に見舞われる中、ゴールドウイン株は一時24%高を記録する急上昇を演じたのだ。この背景には今期の営業利益が1992年3月期以来26年ぶりの過去最高を更新するとの見通しがある。これはスキーブームが「本格的に再燃する」兆しなのだろうか?

ゴールドウィンが26年ぶりの過去最高益へ

ゴールドウイン,株価
(画像=Copyright © 2017-2018 JR SKISKI All rights reserved. JR EAST)

2月6日、ゴールドウインが発表した2018年3月期第3四半期決算(4〜12月)は売上が16%増の517億円、本業の利益を示す営業利益は78%増の65億円と大幅増収増益となった。

メインブランドである「ザ・ ノース・フェイス」「ヘリー・ハンセン」等のアウトドアブランドが絶好調だ。特に10月中旬以降の気温の低下で高採算のダウンウエアや防寒アクセサリーなどの販売が好調に推移したことが好業績を後押しする要因となった。

スポーツアパレルは春夏物に比べ、重衣料と呼ばれる秋冬物のほうが高単価で採算も高い傾向にある。ゴールドウインの業績も四半期ベースで10〜12月期のウェイトが最も高く、今年の厳冬の業績への寄与は大きい。

ゴールドウインは好調な第3四半期決算を受けて、2018年3月期通期予想の売上を663億円から690億円に4%、営業利益を50億円から62億円に24%とそれぞれ上方修正した。これは1992年3月期の営業利益46億円を26年ぶりに更新する見立てである。

ザ・ノース・フェイスによる採算改善が続く

ゴールドウインの好調は一過性のものではない。今期予想が実現すると8期連続の増収、10期連続の営業増益となるが、こうした長期的な増収益の柱の一つとなっているのが主力ブランドの「ザ・ ノース・フェイス」だ。

筆者はアウトドアが大好きで、休日になるとジョギングや登山、トレラン、釣りなどを友人と楽しむ機会が多いのであるが、「ザ・ ノース・フェイス」はそんなアウトドアシーンにおいて頻繁に目にするブランドであり、男女問わず人気が高い。この背景には直営店の拡大も大きく影響しているようだ。

「ザ・ ノース・フェイス」といえば、かつては登山ショップやスポーツショップなどでしか購入できないブランドであったが、現在は直営店が136店舗(前期末時点)に達し、自主管理売り場での売上比率は54%を占めている。第3四半期についても、直営店やWebサイトでのEC売上増により粗利が2.4%改善し、利益の大幅上方修正を支えている。

バブル崩壊で失われた「大切な何か」を想起?

筆者の経験から言うと、アウトドアを愛する人は「汗を流す楽しみ」「自然に接する喜び」を求めて山に訪れるようになる。山が好きになるとトレランもしたくなる、山が好きになると釣りもしたくなる、山が好きになると雪山やゲレンデにも行きたくなる……。いわば「アウトドアのスパイラル」にはまっていくものだ。こうした層が「ザ・ ノース・フェイス」の主要リピーターとなっており、ゴールドウインの業績を支えているのだろう。

筆者の周りはバブル世代が多いのであるが、「JR SKISKI」キャンペーンに刺激を受けて、スキーや雪山遊びを再開した友人も少なくない。筆者はもちろん、多くのバブル世代にとって『私をスキーに連れてって』は、その後のバブル崩壊で失われた何か大切なものを想い起こさせてくれる、特別な作品に感じられるのかも知れない。

最近のゲレンデはスキーウェアではなく、アウトドアウェアを着用して滑るのがトレンドとなっているようであるが、バブル期も現在もスキーの「滑る楽しみ」は変わらない。さて、今度の週末は「永遠のマドンナ」を求めてスキー場に行ってみようか。

平田和生(ひらたかずお)
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。