企業の収益力を測ることのできるROE(株主資本利益率)が注目されて久しい。ROEは「企業が株主から借りたお金をどれくらい効率良く使用して利益を出しているか」を見る指標であり、重要な指標だ。
もちろんこの数値が高いからその企業の株価が上昇するかはまた別の話だが、収益力のある企業の株のほうが、そうでない企業に比べて魅力的であることは確かだ。そしてこれは、優待投資家が好んで買う株主優待銘柄でも同じことが当てはまる。収益力のある企業を上手に選べれば、株主優待のみならず値上がり益などの恩恵にもありつくことができるだろう。
そこで、収益力の高さの基準であるROE8%を超える企業で、かつPERが10倍台という比較的割高でない銘柄を選定した。
なぜ8%? ROEの最低ライン
ここで注目したのがROE「8%」超えの企業だ。この数値は、企業と投資家の望ましい関係構築のためのプロジェクトとして報告された「伊藤レポート」の中に記載されている。
もともと日本では重要視されていなかったROEだが、今後は具体的な数値8%を最低ラインとして明確に経営に落とし込むこと目標とすると明記している。企業の利益活動がいわゆる企業のためだけでなく本来の投資家のためにあるのだということを明確に数値化した点で大変意義のあるレポートである。
もし興味があれば経済産業省のホームページを参考にしていただきたい。
【参考】伊藤レポート
収益力の高い優待株
参考とする際には以下のポイントに留意していただきたい。
1.ROE8%以上 ※数値は2018年2月23日時点のものを基準
2.PERが10倍台 ※数値は2018年3月23日終値を使用
1.オーエムツーネットワーク <7614>
【株価】1682円
【ROE】10.17%
【PER】10.66倍
【優待の内容】1月・7月
100株で自社オリジナル商品の30%割引販売
500株以上で3000円相当の商品または食事券(7月のみ)
2.アイ・ケイ・ケイ <2198>
【株価】759円
【ROE】12.05%
【PER】17.32倍
【優待の内容】4月
100株で1500円相当のお菓子詰め合わせとレストラン(ラ・ロシェル)のお食事優待券
3.セントラルスポーツ <4801>
【株価】3785円
【ROE】14.03%
【PER】15.01倍
【優待の内容】3月・9月
100株でセントラルフィットネスクラブなどの施設無料、商品20%割引などに使える優待券3枚
4.システムリサーチ <3771>
【株価】2280円
【ROE】17.16%
【PER】12.59倍
【優待の内容】9月
100株で2000円相当のクオカード
5.竹本容器 <4248>
【株価】2504円
【ROE】12.10%
【PER】17.26倍
【優待の内容】12月
100株で自社オリジナルの容器に入ったお菓子の詰め合わせセット
6.リソルホールディングス <5261>
【株価】4550円
【ROE】11.82%
【PER】18.05倍
【優待の内容】3月
100株でライフサポート倶楽部会員カード
100株で自社グループ運営施設で使える商品券2000円10枚
7.オカダアイヨン <6294>
【株価】1410円
【ROE】10.13%
【PER】15.41倍
【優待の内容】3月
100株でクオカード1000円相当
8.ティーライフ <3172>
【株価】1182円
【ROE】9.79%
【PER】12.37倍
【優待の内容】7月
100株で1000円相当の買い物券
9.アサヒグループHD <2502>
【株価】5651円
【ROE】12.09円
【PER】18.23円
【優待の内容】12月
100株で1000円相当の自社商品(ビール、食品詰め合わせなどから選択)
ROEのみで判断しないこと
ROEは確かに資本効率を考える上で重要な指標であるが、あくまでどれくらい効率的に稼いでいるのかを知る指標である。
ただし、必ずしも企業の本当の収益力を反映しているとは限らない。例えば企業が自社株買いを行えば、ROE計算のための分母である株主資本が小さくなるので、ROEの数値がその分大きくなる場合もある。
重要数値とはいえ、他にもPERや利回りといった投資指標はたくさんあるので、ROEのほかに2つ、3つと比較する指標を増やしてみて、バランスのとれた企業を選ぶと良いだろう。
谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「インカムライフ.com」。著書に「超優待投資・草食編」がある