米トランプ政権が保護主義的な姿勢を強めるなか、リスク回避的な円高圧力の強い状況が続いており、ドル円は3月に入ってから105円台から106円台での推移が続いている。3月FOMCにおいて、FRBは利上げペースの加速を示唆したが、市場では「当面の利上げペースは事前の想定ほどではない」との受け止めからドルが売られ、足元も105円台後半で推移している。

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今後も当面は円高に警戒が必要な時間帯が続きそうだ。トランプ政権は鉄鋼・アルミの輸入制限決定に続き、近々中国の知的財産権侵害への制裁に動く見通しであり、中国の出方次第では貿易戦争の様相を呈することになる。この場合、市場ではリスク回避的な円買いが拡大し、105円の壁を割り込む恐れがある。一方、今後3ヵ月を見通せば、ドル円は持ち直す可能性が高いと見ている。トランプ政権の狙いは貿易戦争ではなく貿易赤字是正であり、交渉・譲歩の余地がある。次第に過度な警戒が落ち着くことで、日米のファンダメンタルズに沿った円安ドル高が再開するだろう。高金利を求めて国内投資家のドル買いが動き出すこともドル高要因になる。3ヵ月後の水準は108円程度と予想している。

ユーロ円もリスク回避的な円高圧力が続き、足元は130円台後半で推移している。ドル円同様、当面は円高圧力が続くものの、ECBは6月にも緩和の縮小を決める可能性が高い。市場が落ち着いていくにつれてECBの緩和縮小が意識され、ユーロ高圧力が高まるだろう。ユーロ円の3ヵ月後の水準は133円程度と予想している。

長期金利は、リスク回避的な国債需要の高まりを受けて低下、足元は0.03%台で推移している。日銀は早期緩和縮小観測を再び台頭させないためにも金利抑制スタンスを当面崩さないとみられ、金利の顕著な上昇は見込まれない。ただし、リスク回避姿勢の後退により、3ヵ月後の金利水準は現状比でやや上昇と予想している。

(執筆時点:2018/3/22)

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上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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