海外の「人事評価制度」を考察する場合、日本の雇用システムは世界的にも独特な形態であったことを認識しておく必要があります。欧米では主に職に対して的確なスキルがある人を採用するジョブ型で、日本では年功序列、終身雇用制度のもと、企業に必要な人を新卒で一括採用して職を割り振るメンバーシップ型でした。日本でも1990年代以降、「成果主義」の導入が相次いでいますが、主として欧米と日本の違いなどを織り交ぜて、海外の人事評価制度の特徴を紹介します。

欧米企業の評価制度は成果主義

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(写真=Elnur/Shutterstock.com)

欧米での評価制度は、人物より業績や貢献度に重点を置いた「成果主義」が特徴です。社員が持つスキルや能力より、何をどれだけ成し遂げ、貢献したかを重視するものです。長年、終身雇用の下で企業が社員を育成する制度下で評価してきた日本では、成果主義が根付きにくい側面もあるようです。

欧米でも、厳格に成果だけを評価する手法が全従業員に適用されている訳ではありません。例えば、アメリカではリーダー層のマネジャー以上と、一般社員では評価基準が異なります。成果で給料が変動するのはマネジャー以上で、一般社員は職務に応じた給料となるのが普通です。

アメリカ企業ではリーダー層と一般社員は別基準

先述のように、一般的にアメリカ企業での評価基準は、リーダー層のホワイトカラーと、一般社員またはブルーカラーで異なります。企業が求める業務内容が違うからで、リーダー層のマネジャー級以上は幅広い知識やスキル、経験をもとに企業への成果が要求されます。一方、特定の業務を適正にこなすことを求められるのが一般社員またはブルーカラーなのです。

アメリカ企業では通常、リーダー層の幹部候補社員は昇進、昇格が前提で採用されています。一方、多くの一般社員やブルーカラーは一定のポジションまでが一般的です。

アメリカ企業で社員のランク付けを止める動き?

アメリカの大手企業であるグーグルやゼネラル・エレクトリック社などで近年、人事評価を止める動きが相次いでいます。と言っても、社員の成長やエンゲージメントを高め、企業の業績に繋げる人事評価は必要不可欠です。何を止めたかと言うと、実は社員の相対的なランク付けです。

従来、アメリカ企業の人事評価では、成果とリーダーシップや成長度などを、いずれも3段階などに当てはめて査定する方法が用いられました。ところが、実際には割り振りが先行して目的化し、低い評価の社員は貢献意欲を失うというデメリットが顕著となり、ランク付けを止める動きが起きたのです。

目標管理制度(MBO)も人材マネジメントの基本の1つですが、これも同様にランク付け自体が目的化したことで、今では上司や管理職がコミュニケーションを強化し、日常的に社員のエンゲージメントを高めることに重点が移っています。

背景には、人材不足とビジネス環境の急激な変化があります。余剰人員を抱えていた時代には、ランク付けで振り分けることが有効でした。現在はIT(情報技術)やAI(人工知能)の急速な発展もあり、設定した目標の動きが速く、普遍的に通用する時代ではなくなってきています。

日本企業が欧米の人事評価制度から学ぶべきこと

アメリカ企業では、社員のランク付けを止める動きから、現場の人材マネジメントを強化しています。そのほか、担当業務や各部門に最適な目標設定で社員を客観的に絶対評価する動きがさらに強まっています。

雇用形態や労働観が異なる日本で、一概に欧米方式を採り入れることがベターではありません。しかし、少子高齢化による人材不足が深刻でダイバーシティにも取組む中、人事評価制度や現場のコミュニケーション機能への期待は高まっています。

今後、人材マネジメントを強化するには、適切で公平な評価基準や項目を備えた絶対評価による人事評価制度が重要です。客観的に透明性を持った評価が昇給や重要なポジションに起用されるシステムができれば、社員のエンゲージメントは高まり、評価制度への信頼性も増します。

企業のビジョンや目標に沿って、定期的な評価結果を次の人材育成へのステップとし、キャリアアップを目指す社員には必要なスキルや能力、目指すべき方向性などを明確に示すことも大切です。人事評価が、企業にとって経営戦略を構築するには欠かせない重要性が認識されてきています。(提供:あしたの人事online


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