税制改正により平成27年1月1日より、相続税の基礎控除額が、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられ、相続税を支払う対象が増えています。法定相続人が3人なら、基礎控除額は4,800万円となりますが、都内に住居を構えているだけで超える可能性があります。相続税を支払わなければならないか気になるところでしょう。
一方、実際に課税対象となる人は全体の8%程度(平成28年分)です。節税するためには、相続税や贈与税の仕組みを理解しなければなりません。今回は、贈与税がかからない生命保険の入り方に焦点を当てて解説します。
生命保険による相続税対策
生命保険は相続税対策に活用することができます。死亡保険金の受け取りで「500万円×法定相続人の数」を控除できるためです。たとえば、母と子2人の場合、「500万円×3=1,500万円」が非課税となりますので、生命保険で準備をしておけば、1,500万円を課税なしで残すことができます。
一方、相続税を補完する税として贈与税があります。贈与税は生前に財産を譲渡した場合に課税される税ですが、毎年110万円の非課税枠(基礎控除)があります。贈与税の税率は相続税より高くなりますが、この非課税枠を利用することで、贈与を活用した資産の受け渡しが可能となります。
さらに、生命保険は固有の財産となる点も重要です。仮に資産よりも借金の方が多い場合、相続を放棄するのが一般的です。しかし、生命保険で残しておけば、相続放棄をしたとしても、保険金は遺族に支払われます。ただし相続を放棄した場合は、生命保険金の非課税金額の適用を受けることはできません。
相続税対策としての生命保険と贈与税の基礎控除
たとえば、父が生命保険の契約者、母が被保険者、子が受取人の保険の場合、母が亡くなったときに受け取った保険金は贈与税の対象となります(下表①)。父が保険契約を通して子に贈与している形です。一方、父が契約者かつ被保険者で、子が受取人の場合、父が亡くなった時ときに受け取った保険金は相続税の対象となります(下表②)。父が亡くなったことで子が財産を受け取っているため、こちらは相続扱いとなります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税関係 | 最高税率 | |
---|---|---|---|---|---|
① | 父 | 母 | 子 | 贈与税 | 4,500万円超で55% |
② | 父 | 父 | 子 | 相続税 | 6億円超で55% |
※相続税と贈与税の最高税率は55%で同一ですが、基礎控除後の課税金額と税率の基準が異なります。そのため、課税金額が同じ場合、贈与税の方が、税率が高くなることが多いのです。
このように契約の仕方で課税関係が変わってきますが、死亡保険金であれば、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用することができます。また、贈与税の基礎控除を活用する方法を考えてみましょう。たとえば、子が契約者、父が被保険者、子が受取人だった場合、父が亡くなったときに受け取った保険金は所得税(一時所得)の対象となります(下表③)。一時所得には、所得金額が半分になるというメリットがあります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税関係 | 最高税率 | |
---|---|---|---|---|---|
③ | 子 | 父 | 子 | 所得税(一時所得) | 4,000万円超で45% |
※一時所得 {総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)}✕1/2(総所得算入時)
そこで、父から子に基礎控除内の110万円を毎年贈与し、子がそれを生命保険の保険料に充当します。そうすれば、子に保険料を支払うだけの余裕がなくても、先ほどの、契約者(子)・被保険者(父)・受取人(子)という保険契約を結ぶことができ、子が受け取る保険金は一時所得の対象となります。
基礎控除を利用する際の注意点
毎年110万円以内なら必ず非課税になるかというとそうとも限りません。第三者である税務署から見て贈与であることを明らかにしておく必要があります。子(受贈者)がお金の管理をしていること(預金口座は子の名義)、生命保険料控除は子が受けることに注意し、できるだけ書面で贈与契約を結んでおきましょう。もし、基礎控除として認められなければ、すべてまとめて贈与税の対象となる可能性があります。
また、贈与税の基礎控除を利用した相続税対策は、相続税が高くなりそうなケースで生きてきます。単純に、生命保険の非課税枠の利用だけで十分な場合もありますので、気になる人は税理士など専門家に相談しましょう 。(提供:保険見直しonline)
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