(本記事は、嶋津良智氏の著書『「弱い」リーダーが最強のチームをつくる』ぱる出版、2018年3月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【関連記事 『「弱い」リーダーが最強のチームをつくる』より】
・(1)なぜ、リーダーが「叱られる」チームは強いのか?反対意見が出ないのは「裸の王様」
・(2)「平等は持ち味を殺す」「無理して褒めない」――メンバーのモチベーションを上げる方法
・(3)メンバーのモチベーションを見極める「Y理論」とは?
・(4)社員のやる気を引き出す「新型トップダウン」とは?
・(5)自分の成長を一番に考えるリーダーこそ「最も成長できない」

「弱い」リーダーが最強のチームをつくる
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

「弱さ」を隠すチームが背負う致命的リスク

私は、自分自身のことを非常に弱い生き物だと思います。毎日の仕事を通じて、あるいはプライベートでも問題に直面するたび、「気が小さいなぁ」とか、「弱い人間だなぁ」と実感することが多いです。

24歳からリーダーとなり、社交的な性格である私がこういうことを言うと、「意外だ」と反応されることがよくあります。しかし私に限らず、人間は誰しも弱い部分を持っているのではないでしょうか?リーダーである以上、あるいはリーダーを目指しているならば、弱い自分を認めることには大きな意味があります。それは次の2点の理由です。

(1)成長願望が生まれる

弱い自分を認められるからこそ「今より、少しでも強く生きられるようになろう」と努力できます。矛盾するようですが、「自分の弱さを認め、自分をより良い状態に持っていこう」とアクションを起こせる人は、強い人間だと私は思います。

『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』(著 ロバートキーガン、リサ ラスコウ レイヒー/英治出版)には、

“大企業でも中小企業でも、役所でも学校でも病院でも、営利企業でも非営利団体でも、そして世界中のどの国でも、大半の人が『自分の弱さを隠す』ことに時間とエネルギーを費やしている。まわりの人から見える自分の印象を操作し、なるべく優秀に見せようとする。

駆け引きをし、欠点を隠し、不安を隠し、限界を隠す。自分を隠すことにいそしんでいるのだ”

という一節があり、こう結論づけます。

“弱点を隠している人は、その弱点を克服するチャンスも狭まる。その結果、組織は、その人の弱点が日々生み出すコストも負担し続けることになる”

「弱さ」を隠す。これは「弱さ」を克服することではありません。「弱さ」をオープンにしたうえで、その弱点をどうカバーするかが大切です。自分の弱点をさらすことのできないリーダーは、自分やチームの成長の機会を奪い取っていると知りましょう。

(2)メンバーの弱点を「個性」とみなせる

自分の弱さを受け入れられる人は、他人の弱さを受け入れられます。

Aさんは、〇〇に適しているけれど、気が弱い部分がある。

Bさんは根本的には強い人間だが、△△のことになると途端に力を発揮できなくなる。

Cさんは命令されたことをきちんと遂行するが、自分の考えを主張することができない。

というように、それぞれの人にそれぞれの強みがあり、それぞれの弱みがあるもの。それは当然のことですし、大切なのは、チームメンバー一人一人の弱点を「個性」と捉え、各人がそれぞれの弱みを補い合うことです。チームには、メンバーの弱点を補うことのできる人が必ずいます。弱点を補ってもらった人もまた、別のシチュエーションでは誰かの弱 みを補うことになります。

弱点を補い合うことはお互いの「違い」を認め合うことです。チームのメンバーからは、「自分にはないなにか」を学ぶことができるでしょう。反対に、あなたもチームの誰かに、その人にはないオリジナリティを投げかけることができるでしょう。そうやってお互いに欠けている考え方や価値観、好みをシェアできれば、メンバー一人一人の視野を広げられ ます。チームが強くなっていきます。

反対意見が出ないのはあなたが「裸の王様」だから 「苦言」はリーダーを成長させる

リーダーは自分を叱ってくれるメンバーを重宝しなければいけません。

偉くなればなるほど、年齢を重ねれば重ねるほど、その人の周囲からは叱ってくれる人が減ります。そんな状態が続けば、リーダーは「客観性」を維持しづらくなります。人間は弱いもので、耳の痛い意見も言ってもらわないと、己を見つめなおすことはなかなかできません。誰かに叱ってもらって初めて、自分の行いに修正を加えて、フラットな状態を保 つことができます。

たとえば子どものころ、テーブルに肘をついてご飯を食べたら、親や周囲の人から叱られましたよね。叱られたからこそ、子どもは礼儀や常識を学ぶことができたわけです。

私は社長になってからも叱られたことが何度もあります。あるとき、私はあまりにやるべきことをやらない新入社員に対して「やる気がないなら辞めたら」と言いました。すると翌日、その社員は本当に来なくなりました。

強い口調ではなく「頑張れよ」という私なりの励ましだったのですが、すぐさま社員から呼び出しをくらいました。当時の会社では、社長が社員を呼び出すのではなく、社員が社長を呼び出します。喫茶店で彼は私にこう言いました。

「嶋津さん、あれはまずいですよ。私のように付き合いが長ければ、あれも嶋津さん流の励ましだとわかります。でも、知らない人からすると理解不能です。追い詰められて逃げ場がなくなってしまいますよ」

もっともな指摘だと思いました。当時の私はいまだに営業部長の感覚から抜け出ていなかったのでしょう。社長としての言葉の重みをわかっていませんでした。深く反省すると同時に、彼のように物怖じせず意見を言ってくれる人間に感謝しました。リーダーといえど、ただの人。叱られてはじめて成長できます。

嶋津良智(しまづ・よしのり)
一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事。30000人以上のリーダー育成に携わった、リーダー育成の第一人者。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。24歳で最年少営業部長に抜擢。就任3ヶ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。28歳で独立・起業し、代表取締役に就任。2004年、52億の会社まで育て株式上場(IPO)を果たす。2005年『リーダーズアカデミー』を設立。業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界14都市でビジネスセミナーを開催。2013年、一般社団法人日本リーダーズ学会を設立。