(本記事は、嶋津良智氏の著書『「弱い」リーダーが最強のチームをつくる』ぱる出版、2018年3月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
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「平等サポート」はメンバーの持ち味を殺す メンバーは「公平」に扱いましょう
メンバーには様々な「違い」があります。性格の違い、能力の違い、考え方の違い、多種多様です。ある人は短気だけど決断力はあり、ある人は何事も先延ばしにするけど寛容な性格の持ち主かもしれません。
「平等に扱わなきゃ」と、個性の異なるみんなに同じ指導をしていたら、メンバーから最高のパフォーマンスを引き出せなくなります。メンバーを平等にサポートすると、メンバーの持ち味を殺してしまいます。
野菜を育てるとき、すべて同じ育て方をしていたら野菜は育ちませんよね。なすにはなすの、きゅうりにはきゅうりの育て方があります。大切なのはおいしい野菜に育てることです。いまの時代、在宅や短時間勤務もあれば、ノマドのような働き方だってあります。いろんなパターンがあるなか、その人がもっとも仕事をしやすい環境を整えることが、リーダーの仕事です。
その人が「俺は、外で仕事をするほうが効率的なのだ」と言うなら、会社のルールに抵触しない限り認めてあげましょう。「私はみなより遅い時間から働くほう効率がよい」と言うなら、チームに支障が出ない限り認めるべきです。みなをみな同じ枠に当てはめるほうが不自然です。
「公平サポート」を行うときの3つの注意点
ただし、こういう「公平サポート」を行うときは、メンバーと以下の3つの内容について、必ず取り決めを行ってください。
(1)成果の定義
「何をもって成果とするのか」を定めます。
(2)計画表の作成
「いつまでに、何を、どれくらい、どうするのか」という計画表を提出させます。
(3)進捗の報告
「いつ、どのような方法で進捗報告が成されるか」を決めます。
「外で仕事したい」「はい、どうぞ」ではリーダーといえません。この3つを定めないと、ルールを乱すだけになるので事前にしっかり話し合いましょう。「説明責任」を果たすリーダーには「結果責任」「育成責任」「説明責任」「成長責任」という4つの責任がありますが、不平等サポートを行うとき、大切にすべきは「説明責任」です。
「平等」という言葉にとらわれて画一的なサポートを行ってはいけません。それぞれの能力や生活状況に配慮すれば、別扱いになって当然です。メンバー全員を平等に扱うことはリーダーの怠惰。「平等」ではなく、「公平」なマネジメントを目指しましょう。「差別」ではなく、「区別」をするのです。
「好き」「嫌い」で差別的に接することはもってのほかですが、リーダーはメンバーの特性・状況を見極め、最高のパフォーマンスを引き出せるようサポートしていきましょう。
やってはいけない気持ち悪い褒め方
メンバーを褒める話になると、「褒めてあげたいんだけれど、自分は褒めベタなんだよね」と否定的に答える人がいます。
褒めベタの共通点は「自分があまり褒められたことがない」ということでしょう。どうやったら人が喜ぶのか、褒め方がわかりません。「どうやったら褒め上手になれるんだろう?」と悩む人が多いのですが、褒め上手になる必要はありません。
身も蓋もなくいうと、褒めベタが無理に褒めようとする姿は気持ち悪い。それはきっと相手にすり寄ろうという気持ちがあるからです。多くの場合、メンバーにもその気持ちを見透かされ「なんか唐突に褒められたけどさ、魂胆見え見えで気持ち悪いよな」などと言われます。自分が苦手なことを無理してやって、メンバーに陰口をたたかれたら、目もあてられません。
チームの基本は「お互いを補いあうこと」、リーダーの基本は「己を知ること」でしたね。ネガティブな人間なのであれば、無理に明るく振る舞う必要はありません。大切なのは、無理やり自分が変わるのではなく、自分の不得意な点をメンバーにカバーしてもらうことです。「自分は暗い」「褒めるのが下手だ」とわかっているなら、褒め上手なメンバーにカバーしてもらいましょう。
他のメンバーに相手を褒めてもらうときのコツは2つです。
(1)「褒め」のアウトソーシング
信頼できるメンバーに「俺がこう褒めていたって、アイツに言ってくれない」と協力を求めましょう。いわば、「褒め」の委託、アウトソーシングです。これは、直接褒められるより本人にとって嬉しいもの。悪口は直接言われるより、陰で言われたほうがヘコみますよね。それと一緒で、「褒め口」も直接言われるより、人づてに聞いたほうが嬉しいもの。どんどん「褒め」を外注しましょう。
(2)第三者の言葉を借りて褒める
この第三者はあなたより位が上だとより効果が高くなります。たとえば、売り上げ目標を達成したメンバーに対して、「営業部長が大したもんだって褒めてたぞ」と伝えるのです。
これならあなたのやることは褒めるではなく、伝えること。ハードルがぐっと下がります。
「欠けたドーナツ」言い方ひとつでモチベーションは変わる
「欠けたドーナツ」という比喩をご存知でしょうか。ドーナツの一部が欠けていると、他の正常な部分に目がいかず、その欠けた部分にばかり目がいく人間の習性を指します。
人は、他人の欠点はすぐ目につくのに、長所にはなかなか目を向けないものです。意識して褒めるようにしないと、褒めることはなかなかできません。
言い方ひとつで、メンバーのモチベーションは激しく上下します。リーダーは、自分の言葉にそれだけの力があると自覚しましょう。
嶋津良智(しまづ・よしのり)
一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事。30000人以上のリーダー育成に携わった、リーダー育成の第一人者。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。24歳で最年少営業部長に抜擢。就任3ヶ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。28歳で独立・起業し、代表取締役に就任。2004年、52億の会社まで育て株式上場(IPO)を果たす。2005年『リーダーズアカデミー』を設立。業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界14都市でビジネスセミナーを開催。2013年、一般社団法人日本リーダーズ学会を設立。