既存店舗の効率化と海外展開で業績アップを図るコンビニ業界。2018年度2月期連結決算から見えた今期の勝者は、北米展開が順調なセブン-イレブンだった。セブン-イレブン好調の背景とそれを追うローソン、ファミリーマートの今後の海外戦略を探ってみたい。
セブン-イレブン、ファミリーマートは増益、ローソンは減益
2月決算が多い小売業界の本決算が続々と発表される中、コンビニ御三家であるセブン-イレブンを運営するセブン&アイホールディングス <3382> 、ファミリーマートを運営するユニー・ファミリーマート <8028> 、ローソン <2651> の2018年度2月期連結決済が出揃った。
3社の中で特に好調だったのが、セブン&アイホールディングスだ。営業収益は6兆378億円、純利益は前期比87.2%増の1811億円となった。好成績の理由は、北米進出が順調なことだ。2016年6月には米国CSTブランズから約80店舗を買収、2017年4月には同じく米国Sunoco LPから1000店舗以上が傘下に加わるなど、積極的なM&A戦略が実を結んでいる。
続いてユニー・ファミリーマートホールディングスは、売上高は1兆2753億円、最終利益は前期比55.9%増の336億円となっている(国際会計基準IFRSを採用)。好調の理由はサークルK、サンクスから、ファミリーマートへのブランド転換が成功したためだ。
御三家の中で唯一減益だったローソンは、売上高は前期比4.1%増の6573億円だったが、最終利益は26.3%減の268億円となった。理由としては、設備投資費用がかさんだことなどが挙げられる。とはいえ同社の中期経営ビジョンによると2017年、2018年は投資フェーズであり、2019年以降の飛躍フェーズに向けて順調に進んでいると言えるだろう。
国内注目はデジタル化
コンビニは、2018年2月時点で日本国内に5万5395店あり、すでに飽和状態となっている。地域密着型の小規模店舗であるコンビニは、大幅な売上増を図ることは難しい。そのため国内ではPB商品や総菜などによる差異化や業務効率アップが存続の鍵となる。
特に深刻化している店員確保問題は、徹底したデジタル化で対応することが必須である。各社それぞれが新型POSレジやタブレットの導入などを順次行っており、ローソンは自動つり銭機の導入やICタグを利用した無人レジの試用なども行っている。デジタル化などの設備投資で今期は減益となったローソンだが、今後その効果が期待できる。
今後の海外展開方針に注目
国内店舗の設備刷新を行う一方で、各社は日本貿易振興機構ジェトロとも協力して、海外進出にも順次力を注いでいる。今期ローソン、ファミリーマートは国内を優先したが、来期以降はそれぞれに特徴ある海外戦略が期待できる。
セブン-イレブンは発祥の地アメリカで積極的に行っているM&Aが功を奏し、2018年3月時点で全米に9451店舗を展開している。それでも全米におけるシェアは約5%だ。米国のコンビニはまだ寡占化しておらず、100 店舗クラスの中小コンビニが多数存在する点も踏まえると、今後同国における更なるシェア拡大が期待できる。また、アジア各国においては、エリアライセンスによるさらなる出店数の拡大を目指す。
台湾やタイに強いファミリーマートは、すでに上海を中心に2280店を展開している。筆頭株主である伊藤忠は1972年に中国に進出して以来、同国と強いつながりを持つ。2015年には中国最大手の国有複合企業CITICに出資し、「ファミリーマート中国10万店構想」の基礎を築き始めた。
一方で海外進出では他の2社に「戦略的」後れを取っているローソンも、特に中国内陸部に焦点を当てた海外進出を図る。2017年11月末時点で海外店舗約90%、1318店が中国にある。親会社三菱商事のノウハウを生かし、2020年までに3000店出店を目指す。
国内充実と海外出店で、日本のコンビニが「世界中どこにでもあって便利」となる日も近いかもしれない。
豪州在住フリーライター サーロー清雅(さやか)
外資ITコンサルティング企業、米系運用会社にて日本、インド支社勤務後に退職。異文化で海外準富裕層の資産形成に対するスタンスや、お金との付き合い方を垣間見る。日本人の金融リタラシー向上へ貢献することをモットーに、国内外の資産運用・投資情報など、人生を豊かにするためのマネー情報を発信中。