シンカー:コア消費者物価指数は、2017年1月にマイナスからプラスに転じて以降、上昇幅が順調に拡大してきたが、3月には初めての縮小した。企業は、4月の新年度から、新商品・サービスなどでより攻勢を強めてきていると考えられる。年度末の3月は、その前に、旧商品・サービスの値下げを含む販促で、需要喚起を図ったとみられる。販促は功を奏し、3月の消費は持ち直したと考える。潜在成長率を上回る成長が示す需要超過の拡大と、賃金の上昇などによるコストの増加が、明確に物価を押し上げ始めている形に変化はない。年度初めの4月以降に、サービス価格の引き上げがより強く進行していく可能性がある。年央には、コア消費者物価指数の前年同月比は+1.0%へ戻り、年後半には1%を上回っていくと考えられる。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

3月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.9%と、2月の同+1.0%から上昇幅が縮小した。

2017年1月にマイナスからプラスに転じて以降、上昇幅が順調に拡大してきたが、初めての縮小となった。

季節調整済前月比でも-0.1%と、2017年3月以来のマイナスとなった。

潜在成長率を上回る成長が示す需要超過の拡大と、賃金の上昇などによるコストの増加が、明確に物価を押し上げ始めている形に変化はない。

3月のコアコア消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)は前年同月比+0.5%と、2月から変化はなかった。

企業は、4月の新年度から、新商品・サービスなどでより攻勢を強めてきていると考えられる。

年度末の3月は、その前に、旧商品・サービスの値下げを含む販促で、需要喚起を図ったとみられる。

2月の天候不順による販売低迷で積みあがった在庫整理もあったとみられる。

販促は功を奏し、3月の消費は持ち直したと考える。

アベノミクスが円安や短期的な需要対策だけではなく、日本経済の内需を含めた本格的な景気拡大に寄与しているのは、非製造業の売上高経常利益率がしっかり上昇し、これまでにない圧倒的な最高水準になっていることで説明できる。

その高水準の利益率がとうとう伸び悩み始めたことが確認されている。

賃金の上昇などによるコストの増加を、売上数量の増加でカバーする余地が減っていることを意味する。

高水準の利益率を維持するためには、企業の選択としては、売上数量を更に増加させるか、価格を引き上げる必要が出てくることになる。

年度初めの4月以降に、サービス価格の引き上げがより強く進行していく可能性がある。

春闘を経た賃金上昇が需要を支える形もあり、売上数量増加と価格上昇の両立が可能とみられることが、経営者の値上げの判断を後押しするだろう。

年央には、コア消費者物価指数の前年同月比は+1.0%へ戻り、年後半には1%を上回っていくと考えられる。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司