結果の概要:雇用増加数は市場予想を下回る伸び、失業率は予想以上に低下

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5月4日、米国労働省(BLS)は4月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+16.4万人の増加(1)(前月改定値:+13.5万人)となり、+10.3万人から上方修正された前月改定値は上まったものの、市場予想の+19.3万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を下回る伸びに留まった(後掲図表2参照)。

失業率は3.9%(前月:4.1%、市場予想:4.0%)とこちらは7ヵ月ぶりに前月から低下、市場予想も下回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(2)は62.8%(前月:62.9%)とこちらは、上昇するとの市場予想に反し、前月から低下した(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

結果の評価:堅調な雇用増加継続も、家計調査や時間当たり賃金は冴えない結果

4月の非農業部門雇用者数は、悪天候などの影響から低調な伸びとなった前月からの回復が、市場が予想するほど強くなかったことを示した。もっとも、前月数値が+3万人超上方修正されたことや、18年初からの月間平均増加ペースが+20.0万人増と、17年平均(同+18.2万人増)を上回っていることを考慮すると、雇用者数は依然として堅調なペースで増加していると考えられる。

一方、家計調査は失業率が7ヵ月ぶりに低下し、00年12月(3.9%)以来の3%台と改善を示したが、労働参加率の低下にみられるように、労働市場からの退出者が増加した結果であるため、労働需給の改善を反映したものとは言い難い。

また、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.1%(前月改定値:+0.2%、市場予想:+0.2%)と、+0.3%から下方修正された前月および、市場予想を下回った。さらに、前年同月比も+2.6%(前月改定値:+2.6%、市場予想:+2.7%)と、こちらも+2.7%から下方修正された前月に一致したものの、市場予想を下回っており、賃金上昇の回復は足踏みとなった(図表1)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

このようにみると、4月の雇用統計は引き続き堅調な雇用増加はみられるものの、家計調査は失業率の低下にみられる程には回復していないほか、賃金上昇の回復ももたついていることを示しており、冴えない結果と言える。

事業所調査の詳細:財生産部門の伸びが加速

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+11.9万人(前月:+11.5万人)と前月並みの伸びとなった(図表2)。

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民間サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+1.0万人(前月:▲0.2万人)と前月から増加に転じたこともあって、専門・ビジネスサービスが+5.4万人(前月:+3.9万人)と前月から伸びが加速した。また、医療サービスも+2.4万人(前月:+2.1万人)と小幅ながら伸びが加速した。一方、運輸・倉庫が横這い(前月:+1.6万人)と前月から大幅に伸びが鈍化したほか、小売業も+0.2万人(前月:+0.6万人)と伸びが鈍化した。

一方、財生産部門は前月比+4.9万人(前月:+2.0万人)と、前月から伸びが加速した。製造業が+2.4万人(前月:+2.2万人)と伸びが加速したほか、建設業も+1.7万人(前月:▲1.0万人)と前月から増加に転じて財生産部門の雇用を押上げた。

政府部門は、前月比▲0.4万人(前月:横這い)と前月から減少に転じた。内訳をみると、連邦政府が+0.1万人(前月:+0.1万人)と前月並みの伸びを維持した一方、州・地方政府が▲0.5万人(前月:▲0.1万人)と前月から減少幅が拡大したことが大きい。

前月(3月)と前々月(2月)の雇用増(改定値)は、前月が+13.5万人(改定前:+10.3万人)と+3.2万人上方修正された一方、前々月が+32.4万人(改定前:+32.6万人)とこちらは▲0.2万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+3.0万人の上方修正となった(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って5月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が前月比+20.4万人(前月改定値:+22.8万人、市場予想:+19.8万人)と、+24.1万人から下方修正された前月改定値は下回ったものの、市場予想は上回った。この結果、ADP統計は17年11月以来6ヵ月連続で20万人超の増加ペースを維持しており、2ヵ月連続で10万人台に低下した雇用統計に比べて、雇用増加ペースが堅調であることを示している。

4月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.84ドル(前月:26.80ドル)となり、前月から+4セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.5時間(前月:34.5時間)と、こちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は925.98ドル(前月:924.60ドル)と前月から増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:労働力人口は減少、失業率低下は労働需給の改善を意味しない

家計調査のうち、4月の労働力人口は前月対比で▲23.6万人(前月:▲15.8万人)と、2ヵ月連続の減少となったほか、減少幅が拡大した。内訳を見ると、就業者数が+0.3万人(前月:▲3.7万人)と小幅ながら前月から増加に転じた一方、失業者数が▲23.9万人(前月:▲12.1万人)と前月から減少幅が拡大したことが大きい。非労働力人口は+41.0万人(前月:+32.3万人)とこちらも2ヵ月連続で増加したほか、前月から増加幅が拡大した(図表5)。これらの結果、労働参加率は2ヵ月連続で低下した。

このため、失業率は7ヵ月ぶりの低下となったものの、労働参加率の低下にみられるように、職探しを諦めて労働市場からの退出者が増加したことによるものであり、労働需給は引き続きタイトであるものの、4月は失業率の低下に反し労働需給の回復は足踏みしていると言えよう(図表6)。

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次に、4月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、129.3万人(前月:132.2万人)と前月から▲2.9万人減少した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも20.0%(前月:20.3%)と、前月から▲0.3%ポイント低下した。一方、平均失業期間は23.1週(前月:24.1週)と、こちらも前月から低下した(図表7)。

最後に、周辺労働力人口(136.2万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(498.5万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、4月は7.8%(前月:8.0%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。U-6が7%台に低下するのは06年12月(7.9%)以来である。

一方、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.9%ポイント(前月:3.9%ポイント)と、こちらは前月から横這いとなった。

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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
(4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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