2018年より、副業解禁の動きが進んでいる。2018年1月、厚生労働省は働き方改革の一環として、正社員の副業や兼業を後押しするガイドラインを発表した。

従来は、副業・兼業を就業規則で原則禁止にしている企業が多かったが、労働人口が減少する中で、政府は積極的に副業を導入すべきとしている。副業に取り組むことにより、自己実現や所得の増加、将来の起業・転職準備にもなるとメリットが強調されている。

では、副業解禁が今後の企業の事業継続にどのような影響をもたらすのだろうか。今回は、経営者が考えておくべきポイントを紹介していく。

大手企業でも副業解禁の動きが強まる

job
(写真=ImageFlow/Shutterstock.com)

2017年に発表されたリクルートキャリアの調査によると、副業・兼業を禁止している企業は77.2%。推進している企業はわずか0.3%、容認している企業は22.6%にとどまった。

しかし、政府の発表を受けて大手企業でも副業解禁の動きが強まっている。2016年にはロート製薬、2017年にはディー・エヌ・エー、ソフトバンク、コニカミノルタ、2018年には新生銀行とユニ・チャームが副業解禁を発表。そして、2019年にはカゴメも副業解禁を予定している。

副業を解禁する主な目的は「優秀な人材の確保」にあり、新たな専門性を身につけたり、人脈を広げたり、会社にイノベーションをもたらしたりする効果を狙っているのだ。

副業解禁がもたらす組織・事業の基盤変化

伝統的な日本の雇用体系では、「就社」とも言われることがあるように、社員の能力は一つの会社のために使うことを前提としていた。しかし、副業解禁により社員は様々な場所でスキルを発揮することになる。日本型雇用が根本的に変わろうとしているのだ。

現在、AI(人工知能)の躍進的な発展によりデジタル革命が起きている。これを受けて、我々を取り巻く労働環境や価値観は大きく変容している。その中で企業が成長を続けていくためには、イノベーションの創出が不可欠になる。本業を守りつつも、新規事業や新製品といった新しい事業へ果敢にチャレンジする。そのためにも有効になるのが、副業によって視野が広がった社員の力なのだ。

また、労働力不足により多様な人材の活用、すなわち企業のダイバーシティ化も求められている。企業は、社員にとって魅力的なプラットフォームとして機能させ、従来の会社の枠組みにとらわれず優秀な人材とコラボレーションして仕事を進めていく、という考え方も重要になるだろう。

副業について今、経営者が考えるべきこととは

メリットの多い副業解禁だが、経営者としてはリスクも考慮しておかなければならない。

まず、情報漏洩の危険性を防ぐために機密保持に関するルールを定めておくべきだろう。競業での副業も避けさせるべきだ。また、副業することによって過労にならないよう、健康を配慮するルールを設けることも必要である。

必要最低限のルールは明文化して、しかし必要以上に締め付けない。そうすることで、社員は副業に取り組みやすくなり、新たなスキルや視野を手に入れて、企業に貢献してくれることだろう。

副業解禁による事業創出の例

2017年5月、中小企業庁により副業を通じた事業創出の事例が公開された。その中からいくつか事例を紹介しよう。

事例1.
大手ソフトウェア開発会社で働きながら、起業家を支援するイベント企画運営会社で副業しているN氏。全く異なる業界のことを同時にインプットすることで、視野が大きく広がりそれぞれの業務に活かせている。「役に立てている」という実感が湧き、どちらの会社でも楽しくやりがいを持って働いている。

事例2.
大手クラウドソーシング事業会社で働きながら、マルチメディアコンテンツ制作サークルを立ち上げたY氏。副業で得たクリエイター視点を活かして、本業のシステム改善を提案できている。その結果、顧客企業の外注コストを削減することに成功。副業では自己実現を果たせており、本業のユーザー拡大にも貢献できている。

このように、副業で得た視点やスキルを本業で活かすことにより、双方の起業の発展に貢献する社員が増えているのだ。副業のリスクを抑えつつ、解禁に向けて動き出してみてはいかがだろうか。(提供:百計ONLINE


【オススメ記事 百計ONLINE】
後継者問題解消、3つのパターン
事業承継税制の活用で後継者へのバトンタッチをスムーズに
相続税対策に都心の不動産が適している理由とは
長寿企業に見る、後継者育成と「番頭」の重要性
中小企業の事業譲渡としての秘策・従業員のMBOについて