結果の概要:名目個人消費支出は市場予想に一致も、個人所得は予想を下回る

米国,個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

8月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は7月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月値:+0.4%)となり前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.4%(前月値:+0.4%)と、前月、市場予想(+0.4%)に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.2%(前月値:+0.3%)と、前月から伸びが鈍化したものの、+市場予想(+0.2%)には一致した(図表5)。貯蓄率(1)は6.7%(前月:6.8%)と前月から▲0.1%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.1%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月値:+0.1%)と、前月から上昇したものの、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+2.3%(前月値:+2.2%)と、前月から上昇、市場予想(+2.3%)に一致した。コア指数も+2.0%(前月値:+1.9%)と前月から上昇、市場予想(+2.0%)に一致した(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:堅調な消費の伸び、緩やかな物価上昇が持続

名目個人消費(前月比)は、2月にマイナスとなった後、5ヵ月連続で堅調な伸びを維持している(図表1)。一方、7月は個人所得が消費の伸びを下回った結果、貯蓄率は前月から低下した。もっとも、貯蓄率の水準自体は6%台後半と、7月のGDP大幅改定前の3%台前半に比べて高い水準を維持しているため、所得対比で消費余力が十分に残っていることを示している。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

引き続き、労働市場の回復持続で雇用不安が後退していることや、堅調な株価などを背景に消費者センチメントが高い水準を維持していることを考慮すれば、今後も消費は堅調な伸びが期待できる。

一方、物価は総合指数(前年同月比)、コア指数(同)ともに前月から加速した。この結果、物価の基調を示すコア指数はFRBが物価目標としている2%の水準に一致した。来月予定されているFOMCでは追加利上げの実施が確実視されているが、足元の物価状況を踏まえてどのような物価・政策金利見通しを提示してくるのか注目される。

所得動向:可処分所得は名目、実質ともに前月から伸びが鈍化

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.4%(前月:+0.4%)と堅調な伸びを維持した一方、利息・配当収入は+0.3%(前月:+0.4%)と前月から小幅に伸びが鈍化した(図表2)。移転所得は+0.3%(前月:+0.2%)とこちらは前月から伸びが加速した。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.3%(前月:+0.4%)と、前月から伸びが鈍化した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベースでも前月比+0.2%(前月:+0.3%)と、こちらも前月から伸びが鈍化した。

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消費動向:全般的に堅調も自動車関連は4ヵ月連続で減少

名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.2%(前月:▲0.1%)と前月から増加に転じた(図表4)。耐久財が▲0.2%(前月:▲0.1%)と2ヵ月連続で減少したものの、非耐久財が+0.4%(前月:▲0.1%)と前月から増加に転じ全体を押上げた。

耐久財では、家具・家電が▲0.1%(前月:+0.1%)と前月から減少に転じたほか、自動車・自動車部品が▲0.9%(前月:▲0.7%)とマイナス幅が拡大した。これで自動車関連の消費は4ヵ月連続の減少となった。

非耐久財では、ガソリン・エネルギーが▲0.2%(前月:▲0.4%)と2ヵ月連続で減少したものの、衣料・靴が+1.0%(前月:▲1.2%)、食料・飲料が+0.4%(前月:横這い)と前月から増加に転じた。

一方、サービス消費は、+0.4%(前月:+0.6%)と前月から伸びは鈍化したものの、堅調に増加した。外食・宿泊が+1.1%(前月:+1.6%)と高い伸びを維持したほか、住宅・公共料金が+0.4%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。一方、医療サービスが+0.3%(前月:+0.4%)、金融・保険が横這い(前月:+0.4%)と前月から鈍化したほか、娯楽が▲0.3%(前月:+1.0%)と減少に転じた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:前年同月比でエネルギー価格は3ヵ月連続2桁の上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.5%(前月:▲0.2%)と2ヵ月連続でマイナスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.1%)と、こちらは2ヵ月連続でプラスとなった。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+13.4%(前月:+13.%)と3ヵ月連続で2桁の伸びとなった(図表7)。エネルギー価格は16年11月以降、物価を押上げる状況が持続している。最後に食料品価格指数は+0.5%(前月:+0.6%)と、こちらも13ヵ月連続のプラスとなっており、物価を押上げている。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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