企業収益の伸びが急加速

法人企業統計
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財務省が9月3日に公表した法人企業統計によると、18年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比17.9%と8四半期連続の増加となり、18年1-3月期の前年比0.2%から伸びを大きく高めた。製造業が前年比27.5%(1-3月期:同▲8.5%)と2四半期ぶりの増益となったことに加え、非製造業が前年比12.4%(1-3月期:同5.0%)と前期から増益幅が拡大した。

法人企業統計
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経常利益の伸びは17年1-3月期の前年比26.6%をピークに鈍化傾向が続いていたが、18年4-6月期は伸びが急加速し、1年ぶりの二桁増益となった。

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製造業は、売上高が前年比6.7%(1-3月期:同1.4%)と前期から伸びが大きく高まる中、売上高経常利益率が17年4-6月期の8.8%から10.6%へと大幅に改善したことが収益の高い伸びにつながった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費(前年比3.6%)、変動費(同5.3%)ともに増加したが、売上高の伸びを下回ったことから、人件費要因、変動費要因ともに利益率の押し上げ要因となった。

非製造業は、売上高が前年比4.5%(1-3月期:同3.9%)と7四半期連続で増加し、売上高経常利益率が17年4-6月期の6.0%から6.5%へと改善した。人件費要因、変動費要因、金融費用要因、減価償却費要因ともに利益率を押し上げた。

経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高水準を更新

季節調整済の経常利益は前期比16.9%(1-3月期:同3.5%)と2四半期連続で増加し、2016年7-9月期(同15.8%)以来の10%を超える高い伸びとなった。製造業が前期比34.4%(1-3月期:同3.4%)と2四半期連続で増加し、非製造業が前期比7.5%(1-3月期:同3.5%)と3四半期連続で増加した。

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経常利益(季節調整値)は17年後半には人件費や原材料費などのコスト増を要因としてやや伸び悩んだが、18年1-3月期に4四半期ぶりに過去最高を更新した後、4-6月期はその水準をさらに大きく上回り、製造業、非製造業ともに過去最高益となった。

先行きについては、海外経済の回復や国内需要の持ち直しを背景に企業収益の改善基調が続くことが見込まれるが、輸出の伸びが鈍化していること、人件費や原材料費の増加が続くことから、増益ペースは鈍化することが予想される。

設備投資の回復が本格化

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比12.8%(1-3月期:同3.4%)と7四半期連続で増加し、前期から伸びが大きく加速した。製造業(1-3月期:前年比2.8%→4-6月期:同19.8%)、非製造業(1-3月期:前年比3.6%→4-6月期:同9.2%)ともに前期から伸びを大きく高めた。

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季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比6.9%(1-3月期:同0.8%)と4四半期連続で増加した。製造業が前期比11.0%(1-3月期:同▲2.5%)と2四半期ぶりに増加、非製造業が前期比4.7%(1-3月期:同2.6%)と4四半期連続で増加した。

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好調が続く企業収益に対して設備投資の伸びは緩やかにとどまってきたが、18年4-6月期は今回の景気回復局面(2013年1-3月期~)では前年比、前期比ともに最も高い伸びとなった。設備投資の回復がようやく本格化してきたとみることができるだろう。

ただし、設備投資の回復はあくまでも企業収益の大幅な増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景としたもので、キャッシュフローに対する設備投資の比率は引き続き低水準にとどまっている。企業の投資スタンスが積極化し、キャッシュフローに対する設備投資の水準を大きく引き上げるまでには時間がかかるだろう。

4-6月期・GDP2次速報は上方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/10公表予定の18年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.5%)となり、1次速報の前期比0.5%(前期比年率1.9%)から上方修正されると予測する。

設備投資は前期比1.3%から同2.2%へと上方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比14.0%と1-3月期の同2.1%から伸びが急加速した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整しても前年比で二桁の高い伸びとなった。また、金融保険業の設備投資は前年比7.3%(1-3月期:同8.9%)と堅調を維持した。GDP1次速報の設備投資は名目・前年比5.1%となっており、本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

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また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度0.0%から変わらないだろう。その他の需要項目では、公的固定資本形成は6月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲0.1%から同▲0.3%へ若干下方修正されると予想する。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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