本多静六(ほんだせいろく)とは?
資産運用をしている方で本多静六という人物をご存知の方もいるかもしれない。慶応2年(1866年)生まれ。「東京帝国大学教授」、「日本初の林学博士」、明治神宮や水戸・偕楽園(かいらくえん)などを造った「国立公園の生みの親」など様々な肩書き・異名を持ち、そのかたわら『本多式月給四分の一天引き貯金』という方法で自ら資産の築き上げ、1927年60歳にして退官を期にその資産、現在の時価で100億以上を匿名で寄付した人物としても知られる。
本多が25歳から貯蓄と投資を始めてから60歳に至るまでの頃は、日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦・関東大震災など変化の激しい世の中と言われる。現代よりも先の読めない時代だったかもしれないことを想像すると、その中での投資と運用において学ぶものが多いかもしれない。
25歳で始め40歳には株式の配当だけで給料以上の収入に
本多静六は仕事の重要性とともに、またどんなに苦しくても収入の4分の1を貯蓄・投資に回していくことを強く説いているが、その中でも特に運用の具体的な方法や考え方は学びたいところである。まず本多が25歳から『4分の1貯金』なるものでその資金を貯蓄・投資に回し15年後の40歳になる時には大学教授としての棒給よりも預金の利息、保有株式の配当の方が上回っていたとのこと。運用を考えている、もしくはすでに始めている方でもここをゴールにしている方も少なくないだろう。これに当てはめると65歳まで働くのが標準になる現代では50歳からスタートしても遅くない計算になる。
利益確定もしているがすべて売り払うこともしない
本多は資産をふやすための雪だるまの芯なるものを作り、そうすれば最初はどんなに小さくてもあとは面白いようにふえていくと言っている。そして具体的な運用で参考にできることとしては、保有していた株式が2倍になった場合には半分を売却することによって当初の投資資金を確保する決まりとしていた。それにより残りの半分はタダで手に入れた資産とみなして気楽に配当などを得て長期保有ができるとのこと。個人投資家の場合だと2倍になった時点でさらに倍になることを期待してそのまま保有してみたり、次に倍になる銘柄はどれだとすべて売却して乗り換えたりしてしまう方も少なくないのではないだろうか。
しかし、ウォーレンバフェットをはじめ、現代の著名投資家にも共通する部分は、買う時点では価格で買うのではなく資産価値として買い、値上がりの部分から他の投資先への資金として一部を振り分けるなどしている。
好景気時代には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資を
そしてもう一つ。本多静六は戦争や震災など大変動ばかり心配しては手も足も出せないのでそれよりも静かに景気の循環を観察し、好景気には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資に徹することもすすめている。
ここ数年で運用を考え始めた方の中には、やれアベノミクスだとか専門家なるものが日経平均3万円を宣言したとか、それらに期待して「いっちょ、一儲けしてやろうか」と考えて運用を始めた方もいるかもしれない。サーフィンのようにいい波に乗って波がピークアウトする前に上手く降りればいいだろうと考えれば単純かもしれない。しかし著名な投資家や実際に投資で資産を築き上げた人はほとんどその時の流行りのテーマや株価の水準を投資の尺度としたやり方とは例外なく一線を画している。アベノミクスの行方や世界貿易戦争への不安など好景気の踊り場を迎えるような雰囲気も否定できない状況だが、d我々運用を指南する者、運用をしていく者もそれらに惑わされることなく本多静六のような揺るぎない投資スタンスを確立したいものである。
トウシル編集チーム
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