8月の生産は4ヵ月ぶりの上昇

鉱工業生産
(画像=PIXTA)

経済産業省が9月28日に公表した鉱工業指数によると、18年8月の鉱工業生産指数は前月比0.7%(7月:同▲0.2%)と4ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.5%、当社予想も同1.5%)を下回る結果となった。前月時点の予測調査では、8月は前月比5.6%の高い伸びとなっていたが、7月の西日本豪雨に続き8月も台風上陸による工場の稼動停止が相次いだため、生産計画から大きく下振れた。出荷指数は前月比2.1%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.4%と3ヵ月連続で低下した。

8月の生産を業種別に見ると、在庫の積み上がりが続く電子部品・デバイスは前月比▲8.8%と大きく落ち込んだが、西日本豪雨の影響で7月に前月比▲4.2%と落ち込んだ輸送機械が挽回生産によって前月比5.2%の高い伸びとなったほか、国内外の設備投資回復を反映しはん用・生産用・業務用機械が前月比5.6%の上昇となった。速報段階で公表される15業種のうち、10業種が前月比で上昇、5業種が低下した。

鉱工業生産
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財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年4-6月期の前期比0.5%の後、7月が前月比▲0.7%、8月が同4.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年4-6月期の前期比3.3%の後、7月が前月比0.6%、8月が同▲1.4%となった。7、8月の水準を4-6月期と比較すると、資本財出荷が▲0.7%、建設財が▲1.8%低い水準にある。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

18年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比3.1%と1-3月期の同0.7%から伸びが急加速した。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は明確となっているが、7-9月期は自然災害による供給制約の影響もあり伸びが低下する可能性が高いだろう。

消費財出荷指数は18年4-6月期の前期比3.1%の後、7月が前月比▲2.7%、8月が同2.9%となった。8月は耐久消費財が前月比7.0%(7月:同▲6.0%)の高い伸びとなる一方、非耐久消費財が前月比▲0.9%(7月:同0.9%)と6ヵ月ぶりに低下した。消費財出荷指数の7、8月の平均は4-6月期よりも▲2.6%低い。

18年4-6月期のGDP統計の民間消費は前期比0.7%と2四半期ぶりの増加となったが、17年4-6月期から増加と減少を繰り返しており、均してみれば緩やかな持ち直しにとどまっている。夏場の消費は猛暑が季節商品を押し上げる一方、猛暑、豪雨、台風上陸による外出手控え、生鮮野菜の価格高騰が消費の下押し要因となり、全体としては横ばい圏の動きとなっている。

現時点では、18年7-9月期のGDP統計の民間消費は前期比で小幅なプラスを予想している。

7-9月期の生産は自然災害の影響で前期比マイナスへ

製造工業生産予測指数は、18年9月が前月比2.7%、10月が同1.7%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(8月)、予測修正率(9月)はそれぞれ▲4.1%、▲1.9%であった。8月の実現率のマイナス幅は西日本豪雨の影響で▲3.5%となった7月を上回るマイナス幅となった。

18年8月の生産指数を9月の予測指数で先延ばしすると、18年7-9月期は前期比▲0.1%の低下となる。9月の予測指数は9/10時点で調査されているが、9月上旬の台風21号、北海道地震による供給制約の影響は完全には織り込まれていない可能性が高い。9月の鉱工業生産は予測指数の伸びを大きく下回り、7-9月期は前期比ではっきりとしたマイナスとなることが予想される。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

夏場の生産は自然災害の影響で下振れており、回復基調が途切れたとは判断していないが、IT関連財の在庫積み上がりには引き続き警戒が必要だ。

8月のIT関連財は出荷指数が前月比▲2.4%の低下となる一方、在庫指数は前月比1.4%と6ヵ月連続で上昇し、IT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は7月の▲29.3%ポイントから8月には▲32.3%ポイントと悪化幅がさらに拡大した。品目別には、半導体集積回路、液晶素子、ビデオカメラなどの在庫が大きく積み上がっている。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

鉱工業全体の在庫水準はそれほど高くないため、今のところ生産調整圧力は限定的だが、IT関連財の調整がさらに長期化すれば、生産の下振れリスクが高まるだろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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