日本の政策シンクタンクのこれからの方向性
金子:日本における政策シンクタンクのこれからの方向性についてお考えはありますか。
鈴木:もう少し、政治とか政策形成過程に入り込んだり、自分たちのつくった政策研究のネタをしつこく売り込み続けたり、それこそ、場合によっては議員をサポートするような、まさに政治コンサル的なことをやるような部分を入れないと日本のシンクタンクが生き残り、役割を果たしていくことは難しいのかなと私はずっと思っています。
それはなぜかというと、ご存じのように、日本の場合、国会議員も地方議員もそうですが、政策的なサポートをしてくれる人がほとんどいないわけですよね。だから、アイデアを持っていっても、いいとは言ってくれても、実際にそれを盛り込んだ法案や政策をつくれるかというと、つくれないのが日本の現状だと思うんですよ。
そういう意味では、アメリカ以上にもっと踏み込んだサポートをしないと、日本のシンクタンクはなかなか存在感を示すことができないのかなと思っています。
金子:本当に世の中を変えようとするところまでなかなかいかなくて、やはり何かレポート出して終わりというか、いい成果がまとまってそれなりに周りから反応がよければそれでいいということですね。本当に世の中を動かすというところまでの意識が弱いかなと。
鈴木:ではないかなと思いますね。多くのことをやらなくていいから、限定されたものでいいから、もっとやるべきだと思います。
金子:PHP総研の場合、創設時から「研究のための研究ではなく具現化するための研究である」と明示されているので、まさにそれをやらなければいけない。
横江:やはり、政治家と行政と協力するということだと思います。クローズドの勉強会などで政治家とか行政、そしてメディアの人を呼んでいつも一緒に議論しながら、一緒につくっていくぐらいのつもりでやっていくと。
それから、もう少し資源があるなら、政策研究の基盤をつくるために、さっき言ったデータベースのようなものをつくってほしい。専門研究のうちのいくつかについて基盤になるデータベースをつくってくれると、社会への貢献が大きいと思います。
金子:最後に、政策シンクタンクPHP総研に期待することをお願いします。
横江:自由な立場で政策提言、政策研究ができる場所は他にそうないので、それだけでも優位性があるといえるのではないでしょうか。それを活かしてクローズドの勉強会やデータベースなど、やれるだけやればいいと思います。
金子:身の丈の中で精いっぱいやるということですね。
横江:手持ちのリソースで、やれるだけやる。そうすれば、社会から必要とされて転がっていくということではないかと思います。
鈴木:私はぜひスパイスの効いた研究、アジェンダセッティングをやって、その成果を、実際の政策形成に活かしていただきたい。
それができるためには、やはり行政も政治も、どんなにいいものでも突然持ってこられたら受け付けないので、常日ごろから、メディアも含めて政治や政策絡みの分野で人間関係をつくりながら、絶えず出てきた成果をそこに生かせるような形をつくっていただきたい。政治とか政策の世界は、誰が持ってきたかとか、誰が言っているかが非常に重要です。持ち上げ過ぎてもいけないのかもしれないですが、PHP総研はそういうことをやっている数少ないところなので、期待しています。
金子:もう少し頑張れ、ということですね(笑)。
鈴木:頑張りましょう(笑)。
金子:日本にとっても世界にとっても正念場の今こそ、政策シンクタンクには活路を拓くアイディアを提示する役割が求められていると思います。無論、私たちPHP総研もこれからの繁栄、平和、幸福についての大きな絵を描き、その実現に向けて真っ直ぐに取り組まなければなりません。本日は色々ヒントをいただきました。ありがとうございました。