結果の概要:名目個人消費は市場予想に一致も、個人所得は予想を下回る
9月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は8月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月値:+0.3%)となり前月に一致したものの、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.3%(前月値:+0.4%)と、こちらは前月を下回ったものの、市場予想(+0.3%)に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+0.3%)と、+0.2%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+0.2%)には一致した(図表5)。貯蓄率(1)は6.6%(前月:6.6%)と前月から横這いとなった。
価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.1%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比横這い(前月値:+0.2%)と、前月および市場予想(+0.1%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+2.2%(前月値:+2.3%)と前月から低下、市場予想(+2.2%)には一致した。コア指数は+2.0%(前月値:+2.0%)とこちらは前月、市場予想(+2.0%)に一致した(図表7)。
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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
結果の評価:消費は18年2月以来、6ヵ月ぶりの伸びに鈍化
名目個人消費(前月比)は、マイナスとなった18年2月以来、6ヵ月ぶりの伸びに鈍化した(図表1)。また、8月は消費の伸びが所得の伸びと一致した結果、貯蓄率は前月から横這いとなった。
米中貿易戦争に伴い、中国からの輸入品に追加関税が賦課されるため、今後輸入品価格の上昇による消費への影響が懸念される。
しかしながら、消費を取り巻く環境は、労働市場の回復持続で賃金上昇が加速しているほか、堅調な株価などを背景に消費者センチメントが高い水準を維持していることから、引き続き消費に追い風となっている。このため、今後も消費の底堅い状況が続こう。
一方、物価は総合指数(前年同月比)が、小幅ながら4ヵ月ぶりの低下となった。先月発表された8月の消費者物価も同様に低下していたことから、前年比でみた8月の物価は伸びが鈍化した可能性が高い。もっとも、物価の基調を示すコア指数は前月に続きFRBが物価目標としている2%の水準に一致しているほか、時間当たり賃金の伸びが加速していることなどを考慮すると、物価の伸び鈍化は一時的だろう。
所得動向:賃金・給与が18年1月以来の高い伸び
個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.4%)と18年1月(同+0.6%)以来の高い伸びとなった(図表2)。一方、利息・配当収入は▲0.1%(前月:▲0.0%)と2ヵ月連続で減少したほか、移転所得は+0.4%(前月:+0.5%)と、高い伸びを維持したものの前月から鈍化した。
個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.3%(前月:+0.3%)と、前月並みの伸びとなった(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比+0.2%(前月:+0.2%)と、こちらも前月並みの伸びとなった。
消費動向:自動車関連消費の減少に伴い耐久財消費が減少
名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した一方、財消費が+0.3%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。財消費では、非耐久財が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みを維持したものの、耐久財が▲0.1%(前月:+0.5%)と減少に転じたことが大きい。
耐久財では、娯楽財・スポーツカーが▲0.3%(前月:+0.4%)、自動車・自動車部品も▲0.2%(前月:+0.8%)と前月から減少に転じた。
非耐久財では、衣料・靴が▲0.9%(前月:+1.9%)と前月から減少したものの、ガソリン・エネルギーが+3.0%(前月:▲1.8%)と前月から増加に転じ非耐久財消費を押上げた。
一方、サービス消費では、外食・宿泊が横這い(前月:+1.4%)、医療サービスが+0.3%(前月:+0.4%)と、前月から伸びが鈍化した一方、娯楽が+0.2%(前月:▲0.5%)と前月から増加に転じたほか、金融・保険が+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した。また、住宅・公共料金は+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びとなった。
価格指数:前年同月比でエネルギー価格は4ヵ月連続2桁の上昇
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.5%(前月:▲0.5%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲横這い(前月:+0.1%)と、こちらは3ヵ月ぶりに小幅ながらマイナスとなった。
前年同月比では、エネルギー価格指数が+11.3%(前月:+13.4%)と4ヵ月連続で2桁の伸びとなった(図表7)。エネルギー価格は16年11月以降、物価を押上げる状況が持続している。最後に食料品価格指数は+0.5%(前月:+0.5%)と、こちらも前月なみの伸びを維持し、14ヵ月連続でプラスとなった。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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