はじめに――2018年にガラケー調査をする理由
総務省の発表した平成29年通信利用動向調査によると、日本におけるスマートフォンの保有状況は75%を越えている。しかしこれは、世界各国と比べると決して高い数値とは言えない。日本独自の発達を遂げたガラパゴス携帯、通称ガラケーを使い続けている層が一定数いるからだ。
しかし、現在実用化に向けて開発が進められている5G回線のサービス開始にともない、多くのガラケーが通信を行っている3G回線が終了する可能性がある。そのとき、ガラケーユーザーはどう動くだろう。スマートフォンを購入するのか、それともガラケーにこだわるのか?
先日MMD研究所では、ガラケーユーザー1,009名を対象に「2018年6月 フィーチャーフォン利用者の実態調査」を実施した。スマートフォンを取り巻く技術が目覚ましく発展している今だからこそ、ガラケーユーザーの実態を把握し、改めて日本におけるガラケーのニーズを洗い出すためだ。本コラムでは、その調査結果をもとにガラケーユーザーの実態を紐解いていく。ガラケーがなくなる日は、本当にやって来るのだろうか?
(※通常MMD研究所では「フィーチャーフォン」という正式名称を用いているが、本コラムにおいては、より一般ユーザーに馴染みの深い「ガラケー」を用いることとする。)
2018年現在 5人に1人がガラケーを持っている
事前調査において、全国の15~69歳の男女15,018人にプライベートで利用している端末を聞いたところ、スマートフォンを利用していると回答したのは全体の77.9%、ガラケーを利用していると回答したのは19.9%だった。
19.9%――この数値を高いと思われるだろうか、低いと思われるだろうか。 20. MMD研究所で過去に実施したガラケーユーザー対象の調査と比較すると、ガラケーの利用率は低下している。「2016年6月フィーチャーフォン利用者実態調査」では、ガラケーユーザーは全体の31.2%。「2017年2月 フィーチャーフォン利用者のスマートフォンに関する意識調査」では23.9%だった。年を追うごとにガラケーユーザーが減っていることは確かだが、2016年から2017年にかけては7.3%減少しているのに対し、2017年から2018年にかけては4%しか減少していない。
2018年現在でも全体の2割弱、言い換えればほぼ5人に1人がガラケーを持っているという結果が出たことは、調査担当者としても驚きだった。
スマートフォンへの乗り換えを検討しているガラケーユーザーは23.8%
ガラケーユーザー(スマートフォンとの併用ユーザーは除く)2,364人にスマートフォンへの乗り換え検討状況をきいたところ、現在乗り換えを検討しているユーザーが23.8%、過去に検討していたが現在はしていないユーザーが17.5%、一度も検討したことがないユーザーが58.7%だった。
ちなみに同様の設問がある2017年の調査では、検討しているユーザーが20.2%、過去に検討していたが現在はしていないユーザーが22.9%、検討したことはないユーザーが56.9%という結果だった。
2017年から2018年にかけて、スマートフォンへの乗り換えを検討しているガラケーユーザーの割合が増えていることが窺える。とはいえ、2018年の調査でもスマートフォンへの乗り換えを検討していないユーザーの方がはるかに多く、全体の76.2%を占めている状況だ。 現役のガラケーユーザーは、ガラケーに対して不満を抱いてはいないのだろうか?
ガラケーユーザーのほぼ半分がガラケーに「不満はない」
本調査において、ガラケーユーザー1,009人を対象にガラケー端末への不満をきいたところ、全体の49.0%がガラケーに不満を持っていないことがわかった。
不満があればスマートフォンへ乗り換えるだろうから、当然といえば当然の結果だが、検討状況別の回答結果はどうなっているだろう。
やはり、スマートフォンへの乗り換えを検討していないガラケーユーザーの方が、ガラケーに不満はないと回答している割合が高い。一度も検討したことないユーザーにいたっては、7割近くがガラケーの機能・性能に不満を持っていないようだ。
一方、現在スマートフォンへ乗り換えようと検討しているユーザーのうち、不満はないと回答したのは18.5%にとどまる。乗り換えを検討しているだけあって、ガラケーに諸々の不満は抱えているようだが、最も多い不満がガラケーに「時代遅れ」なイメージがあることだというのは興味深い。ちなみに、一度も検討したことがないユーザーで、ガラケーの「時代遅れ」なイメージを不満に思っているのは、7.0%に過ぎない。
3G回線が終了しても、スマートフォンにしたくない?
過去スマートフォンへの乗り換えを検討していたガラケーユーザー193人、一度も検討したことがないガラケーユーザー490人(計683人)を対象に、3G回線が終了し、現在所有しているガラケーを利用できなくなった場合どのように対応するかをきいてみた。
検討状況別にみていくと、過去スマートフォンを検討したことがあるガラケーユーザーは、スマートフォンの購入意向が高い。それに比べて、スマートフォンを一度も検討したことがないガラケーユーザーは、ガラホの購入意向の方が高い結果となった。また、「その他」と回答した割合も比較的高くなっている。
「その他」のフリー回答をみていくと、「まだ分からない」「料金を見て決める」という趣旨の回答が目立った。現時点では態度を決めかねている様子が窺えるが、3G回線が終了してしまったとしても、現状から大きく変わる選択肢は選びたくない――そんな嗜好を持っているガラケーユーザーが多いことが推察できる。
中古ガラケー端末の購入意向
今回の調査では、ガラケーユーザーの半数以上が同じ端末を少なくとも6年以上は利用していることが明らかになった。多くのガラケーユーザーが同じ端末を使い続けている理由はいくつか考えられるだろう。ガラケーの端末が壊れにくいこと。端末へのこだわりを持っているガラケーユーザーが比較的少ないこと。また、ひょっとしたらこんな理由もあるかもしれない。新しいガラケー端末が発売されなくなってきたこと。
もし、中古で自分の探しているガラケー端末が販売されていたら、ガラケーユーザーは動くのだろうか。
本調査対象のガラケーユーザー1,009人に中古ガラケー端末の購入意向をきいたところ、スマートフォンの検討状況によって若干のバラつきはあるものの、いずれも7割から8割のユーザーに購入意向がないことが分かった。出来ることならガラケーを使い続けていきたいが、中古端末には抵抗がある――そんなガラケーユーザーの姿が見えてくる。 また、古いガラケー端末ではメーカーのサポートが終了してしまった機種も多い。もし現在所有している端末が故障してしまったら、ガラケーを利用し続けたいユーザーは、この先一体どうすればいいのだろうか?
まとめ――まだガラケーは消えない?
日本独自の発展を遂げたガラケー。徐々に減少しているとはいえ、今でもおよそ5人に1人がガラケーを所有しているということが今回の調査で明らかになった。そのうちスマートフォンへの乗り換えを検討しているのは2割を越える程度しかおらず、乗り換えを検討していない多くのユーザーがガラケーに不満を持っていないというのが現状だ。
3G回線が終了したとしてもスマートフォンを購入するつもりはなく、かといって中古のガラケー端末にも興味がない――そんなガラケーユーザーが一定数存在しているのだとしたら、新品のガラケー端末には未だに需要があるのではないか。使い慣れた二つ折りの端末で、ボタンを押して操作したいユーザーは、どれだけ技術が進化したとしても、その形態を選び続けるのだろう。
いつかガラケーが消える日はやってくるのかもしれない。しかし、少なくともそれは今ではないようだ。
執筆者:坂本 有珠
◆本コラムに関して
掲載しているデータは、販売データのごく一部です。また、弊社では単に数字をまとめるだけではなく、そのデータから何が言えるのか、今後の展望や戦略に役立てるべく様々な分析手法も取り入れています。
※本調査レポートの百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計しても100%とならない場合がございます。
(提供:MMD研究所)