日本人の死因のトップであるがん。その備えとして、「がん保険」と「医療保険のがん特約」という2つの保険がある。名前が似ている2つだが、いったいどちらが自分に適しているのか。がん保険・がん特約の特徴を見つつ、選ぶ際に注意したいポイントを解説する。

40代男性の約半数ががん保険・がん特約に加入。

がん,保険
(画像=g-stockstudio/Shutterstock.com)

まずはがん保険・がん特約の契約状況を見てみよう。年代別の加入率は以下の通りで、加入率が最も高いのが40代男性。約半数ががん保険・がん特約で経済的な備えを意識していることが分かる。

全体……37.8%(男性:38.7%/女性:37.1%)
20代……21.8%(男性:19.6%/女性:23.9%)
30代……44.3%(男性:44.8%/女性:43.8%)
40代……44.2%(男性:48.0%/女性:41.6%)
50代……42.6%(男性:41.9%/女性:43.0%)
60代……33.7%(男性:36.8%/女性:31.3%)
(生命保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」より)

がんにかかった際の治療費は約60万~150万円

厚生労働省の「医療給付金実態調査報告書(平成28年度)」によると、がんにかかった際、入院に必要な医療費の総額は、約60万~約150万円。この時にいくつかの条件を満たすことで、「高額療養費制度」の適用を受けられる。

この制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費の上限額を超えた額は払い戻しを受けられるというもの。たとえば、年収800万円の人が医療費の自己負担金30万円支払った場合、実際の支払額は17万1,820円となる。

だが、健康保険適用外の重粒子線治療などの先進医療を受けた場合、治療費は約300万円にも上る。また、個室を利用した場合の差額ベッド代は、高額療養費の対象外だ。

「がん保険」と「医療保険のがん特約」の違いとは

40代男性のがん保険・がん特約の高い加入率は、がん治療の経済的リスクへの意識が高いことの表れとも言える。それではがんに備えるこの2つの保険は何が違うのか?

「がん保険」は、その名の通りがんの治療に特化した保険で、医療保険のようにがん以外の病気の保障には通常対応することができない。だが、「手術・抗がん剤・放射線治療」はもちろん、通院時のタクシー代や退院後のウィッグの費用などに自由に使える「診断一時金」が給付されることや「入院日数無制限」など、がんに限って言えば頼もしい存在だ。

「医療保険のがん特約」は、通常の医療保険の保障に加えて、がん治療に有効な保障を上乗せすることができるというもの。医療保険に加えるものなので、がんの治療に関しては「がん保険」よりも保障が弱いのが一般的だ。上乗せできる特約には、がん一時給付金、三大疾病特約、女性疾病特約、通院特約、先進医療特約などがあり、必要だと思う特約を選択することができる。

頼りになる「がん保険」、低コストな「医療保険のがん特約」

実際の商品で「がん保険」と「医療保険のがん特約」のシミュレーション、比較してみた。

【がん保険】
オリックス生命 がん保険Believe
初回診断給付金:100万円
がん治療給付金:50万円(1年)
入院給付金:1万円 日数無制限
退院一時金:10万円
手術給付金:20万円
通院給付金:1万円
先進医療:通算2,000万円
保険料:40歳男性5,025円、40歳女性3,826円

【医療保険のがん特約】
オリックス生命 医療保険 新CURE 特約付加
がん一時金特約:100万円(1年)
入院給付金:1万円 三大疾病入院無制限
手術給付金:20万円・5万円
先新医療特約:通算2,000万円
がん通院特約:1万円
保険料:40歳男性7,336円、40歳女性6,475円
※がん特約を付加しない医療保険単体の保険料:40歳男性の場合3,906円、女性の場合3,665円
(オリックス生命 保険料シミュレーションより)

上の例の場合、「医療保険(がん特約の付与なし)とがん保険」に加入した時の月々の保険料は男性8,931円、女性7,491円。「医療保険にがん特約を付加」した場合と比べて、月々のコストは男性1,595円、女性1,016円増加する。医療保険にすでに加入している人は、中途付加できるかどうかは商品によって異なるので保険会社に確認する必要があるが、「医療保険にがん特約付加する」方が経済的負担は少ない。

一方で、「医療保険とがん保険」の両方に加入した場合は、保険の保障内容が重複していても、保障対象であれば給付金がそれぞれ支払われる。費用負担が大きい分、がんに対する備えとしては「がん保険」の方が手厚いのだ。

がんになった時の「経済的対応」を想定して選ぶ

「がん保険」と「医療保険のがん特約」、どちらがよいか判断するためには自分の置かれている状況を確かめる必要がある。

親族にがんに罹患した人が多いといったようながんのリスクを抱える人や、緊急時に使える預貯金が少ない、自営業など、罹患時の経済的ダメージへの不安が大きい人は、「がん保険」へ加入するのがよいだろう。月々の負担は増加するが、がんは治療期間が1年以上の長期になる可能性もあるためだ。ただ「がん保険」には90日の免責期間があるため、早めの準備が必要であることも注意しておきたい。

月々のコストを抑えたい、複数回・長期間の治療に対応できる備えがあり治療費をある程度カバーできれば十分だという人は、「医療保険のがん特約」で対応できるだろう。

「がん保険」と「医療保険のがん特約」どちらにするか悩んだら、自分が実際がんになった際に、経済的にどのように対応するのか、できるのかということを想像して決めたい。

文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

【関連記事】
ビギナー必見、投資・積立できるクレジットカード5選
つみたてNISA、金融機関はどこにすればいい? 4つのポイントから証券会社を選ぶ
40代が今さら聞けない「投資信託」の始め方
「アドバイスをもらいたい」人のためのロボアド「投資助言型」13種を比較
審査に通りやすいクレジットカードを見つける3つのポイント