貿易収支(季節調整値)は3ヵ月連続の赤字

貿易統計
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財務省が10月18日に公表した貿易統計によると、18年9月の貿易収支は1,396億円と3ヵ月ぶりの黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲528億円、当社予想は3,463億円)を上回る結果となった。輸出入ともに前月から伸びが大きく鈍化したが、輸出が前年比▲1.2%(8月:同6.6%)と1年10ヵ月ぶりの減少となる一方、輸入が原油高の影響で前年比7.0%(8月:同15.3%)の増加となったため、貿易収支は前年に比べ▲5,143億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲4.8%(8月:同1.1%)、輸出価格が前年比3.7%(8月:同5.4%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.7%(8月:同4.4%)、輸入価格が前年比10.0%(8月:同10.5%)であった。

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原数値の貿易収支は3ヵ月ぶりに黒字となったが、季節調整済の貿易収支は▲2,389億円と3ヵ月連続の赤字となり、赤字幅は8月の▲1,910億円から拡大した。輸出入ともに前月比で減少したが、輸出の減少幅(前月比▲2.5%)が輸入の減少幅(前月比▲1.7%)を上回ったことが貿易赤字の拡大につながった。

9月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=76.1ドル(当研究所による試算値)と、7月の77.0ドルから若干低下したが、足もとのドバイ原油価格は80ドル程度まで上昇しており、通関ベースの原油価格も10月以降は80ドル台で推移することが見込まれる。貿易収支(季節調整値)は先行きも赤字の月が多くなるだろう。

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7-9月期の輸出は自然災害の影響で大きく下振れ

9月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲2.6%(8月:同3.3%)、EU向けが前年比▲4.5%(8月:同4.7%)、アジア向けが前年比▲4.6%(8月:同0.4%)と主要3地域向けの全てがマイナスとなった。

7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲4.8%(4-6月期:同3.2%)、EU向けが前期比▲2.5%(4-6月期:同1.6%)、アジア向けが前期比▲1.2%(4-6月期:同▲0.6%)、全体では前期比▲2.8%(4-6月期:同1.1%)となった。

7、8月と豪雨、台風上陸による供給制約が輸出に一定の悪影響を及ぼしたとみられるが、9月は台風21号による関西空港の閉鎖、北海道地震による生産休止の影響などから輸出の下振れ幅はさらに大きくなった。

7-9月期の輸出は自然災害の影響で大きく下押しされているため、基調が見極めにくくなっており、過度に悲観する必要はない。ただし、世界貿易量の伸びは17年中の前年比4~5%台から足もとでは3%台半ばまで低下しており(オランダ経済政策分析局による)、日本の輸出は実態として減速局面に入っている可能性がある。

一方、7-9月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比▲0.2%(4-6月期:同▲0.0%)と小幅な低下となった。輸入も自然災害による一定の下押しはあったものの、輸出に比べればその影響は小さかったとみられる。

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7-9月期の外需寄与度は▲0.1.%程度のマイナスに

9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、18年7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比▲1%台後半の減少、輸入が前期比▲1%台前半の減少となった。財の輸出が5四半期ぶりに減少したことに加え、訪日外国人の急減によってサービス輸出が4-6月期から減少幅が拡大したため、財貨・サービスの輸出は9四半期ぶりに減少したとみられる。輸出の減少幅が輸入の減少幅を上回ることにより、7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.1%(4-6月期:同▲0.1%)と2四半期連続のマイナスとなることが予想される。

当研究所では鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、10/31のweeklyエコノミストレターで7-9月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率を押し下げることに加え、4-6月期に高い伸びとなった民間消費、設備投資の伸びが大きく低下すること、公的固定資本形成の減少幅が拡大することなどから、小幅なマイナス成長になると予想している。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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