コアCPI上昇率は7ヵ月ぶりの1%
総務省が10月19日に公表した消費者物価指数によると、18年9月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比1.0%(8月:同0.9%)となり、18年2月以来7ヵ月ぶりの1%台となった。事前の市場予想(QUICK集計:1.0%、当社予想も1.0%)通りの結果であった。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.4%(8月:同0.4%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品が前年比5.6%(8月:同8.7%)と高めの伸びとなったことから、総合は前年比1.2%(8月:同1.3%)と2ヵ月連続の1%台となった。 コアCPIの内訳をみると、電気代(8月:前年比3.1%→9月:同3.6%)、ガス代(8月:前年比2.6%→9月:同2.8%)、ガソリン(8月:前年比16.2%→9月:同17.3%)、灯油(8月:前年比22.3%→9月:同23.2%)の上昇幅がいずれも前月から拡大したため、エネルギー価格の上昇率は8月の前年比7.4%から同8.1%へと高まった。
また、食料(生鮮食品を除く)は3ヵ月連続で上昇幅が拡大し、前年比1.0%(8月:同0.9%)となった。人件費の上昇を反映し、外食が前年比1%台の伸びが続いていることに加え、原材料費上昇の影響などから、その他の食料品も徐々に伸びを高めている。
一方、8月に前年比10.2%の高い伸びとなった宿泊料が同0.8%と大きく鈍化したことから、教養娯楽が8月の前年比1.6%から同1.0%へと伸びが低下した。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.63%(8月:0.57%)、食料(生鮮食品を除く)が0.23%(8月:0.21%)、その他が0.14%(8月:0.12%)であった。
上昇品目数の割合が再び50%を上回る
消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、9月の上昇品目数266品目(8月は258品目)、下落品目数は186品目(8月は199品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は50.9%(8月は49.3%)、下落品目数の割合は35.6%(8月は38.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は15.3%(8月は11.3%)であった。
上昇品目数の割合は18年8月に14年6月以来、約4年ぶりに50%を下回った(14年6月の数値は消費税率引き上げの影響を除いた筆者による試算値)が、9月には再び50%を上回った。ただし、その水準は依然として低く、物価上昇に裾野の広がりは見られない。
コアCPI上昇率は当面1%程度で推移も、上昇ペースの加速は見込まれず
コアCPI上昇率は7ヵ月ぶりの1%となったが、その主因はエネルギー価格の上昇幅拡大である。
既往の原油高の影響から電気代、ガス代の上昇率が高まっていることに加え、9月以降の原油価格の急上昇を受けて、ガソリン、灯油価格もこのところ大幅に上昇している。エネルギー価格の上昇率は10月には前年比9%程度(9月は同8.1%)となった後、高止まりが続き、コアCPI上昇率に対するエネルギーの寄与は18年度末まで0.7%程度で推移することが見込まれる。
一方、賃金との連動性が高く、コアCPIの5割以上を占めるサービス価格は低い伸びが続いており、18年9月は前年比0.2%となった。コアCPI上昇率はエネルギー価格の高止まりを主因として、当面1%程度の推移が続くことが予想されるが、2%に向けて上昇ペースが加速する可能性は極めて低いだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
・貿易統計18年9月-自然災害の影響で輸出が減少し、7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.1%程度のマイナスに
・鉱工業生産18年8月-自然災害の影響で7-9月期は2四半期ぶりの減産へ
・中期経済見通し(2018~2028年度)