40代に必要なのは「スキルの斜め展開」

とはいえ、40代から新しいスキルを習得できるのだろうか。

「誤解が多いのですが、ミドル世代のスキルアップは、まったく新しいことに挑戦する必要はありません。やるべきなのは、『スキルの斜め展開』。今持っているスキルの幅を少し広げてみる、または今と少しだけ違う方向へスキルを伸ばしてみる。それが40代の能力開発です。

加えて、転職に備えてぜひやっておきたいのが、今持っているスキルの普遍化です。

一つの会社で培ってきたスキルは個別性が高く、そのままでは外部で通用しません。ただし、今までに得た知識や経験は無駄ではなく、それらをいったん抽象化し、体系化して整理すれば、普遍的なスキルとして他の場所でも役立てられます。

知識や経験を整理するときに役立つのが、経済学や経営学、心理学、法学といった学問です。社会経験が豊富なミドルだからこそ、学説を読んだときに『あの現場で経験したのは、こういうことだったのか』と、自分の中にあるものを整理できる。すると、自分のスキルを汎用性のあるものと、個別にアレンジすべきものとに整理できるので、会社が変わっても自分のスキルを適応させることができます」

そして柳川氏は、40代のうちにセカンドキャリアを考えることの重要性をこう話す。

「40代は多くの仕事を任され、会社に頼られる立場です。ところが50代になると、気づいたときには会社に居場所がなくなっていることも多い。40代は目の前の仕事が忙しく、脂の乗った時期だからこそ、いざとなってから慌てないよう、早めに手を打っておくことが必要です」

柳川範之(やながわ・のりゆき)東京大学大学院経済学研究科教授
1963年、埼玉県生まれ。83年、大学入学資格検定試験合格。88年、慶應義塾大学経済学部通信教育課程卒業。93年、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。93年、慶應義塾大学経済学部専任講師。96年、東京大学大学院経済学研究科助教授。2007年、制度変更により同准教授。11年より現職。『40歳からの会社に頼らない働き方』(ちくま新書)など著書多数。≪取材・構成:塚田有香、写真撮影:長谷川博一≫(『The 21 online』2018年6月号より)

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