第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所(社長 矢島 良司)では、全国の20~59 歳の男女1,400 人に対して「子どもがいる正社員の休暇に対する意識調査」を実施いたしました。そのうち、本リリースでは法定外の特別休暇制度に関する調査結果を紹介します。
本リリースは、当研究所ホームページにも掲載しています。 URL http://group.dai-ichi-life.co.jp/cgi-bin/dlri/ldi/total.cgi?key1=n_year
≪調査結果のポイント≫
特別休暇制度の導入状況 ● 導入割合が高い制度は「病気休暇」39.3%、「リフレッシュ休暇」28.1%
特別休暇制度の利用割合 ● 利用割合が高い制度は「記念日休暇」62.5%、「学校行事休暇」62.0%
特別休暇制度の利用意向 ● 利用意向が高い制度は「病気休暇」54.1%、「リフレッシュ休暇」49.8%
今後導入すべき特別休暇制度は何か? ● 利用意向は高いが導入割合が低い制度は「学校行事休暇」「記念日休暇」
特別休暇制度を導入する効果 ● 導入効果の上位2位は「有給休暇を減らすことなしに休暇を取得できる」と「目的が明確なので職場の人の理解が得やすい」
≪調査実施の背景≫
わが国では今、働く人の健康を確保し、仕事に対する意欲と能力を十分に発揮しながらワーク・ライフ・バランスのとれた働き方を実現するため、労働時間制度の改革が行われています。その一環として休暇制度の見直しも進められています。
休暇制度には、法定休暇と法定外休暇があります。法定休暇には、年次有給休暇や育児休暇、介護休暇などがあります。年次有給休暇取得率は2015 年調査では47.6%(平成27年就労条件総合調査)であり、依然として10 年前である2005 年調査(47.1%)の水準に留まっています。このため国は、労働基準法の改正をして年次有給休暇の取得義務化を定めるなど、その取得率向上を目指しています。
他方、法定外休暇は、企業が休暇の目的や取得形態を労使による話し合いによって任意で設定できる休暇です。結婚休暇や忌引休暇などの伝統的な法定外休暇の他、厚生労働省が定めた「労働時間等見直しガイドライン」(2006 年制定、2010 年改正)において例示されている「特に配慮を必要とする労働者」に対して付与される様々な休暇制度も該当します。例えば、病気休暇、ボランティア休暇、教育訓練休暇などがあります(以下、年次有給休暇と区別するために「特別休暇制度」と称します)。国は年次有給休暇の取得促進のための取組とともに、「特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度の普及のための広報事業」など、特別休暇制度の普及促進を図り、人々が心身ともに充実した状態で意欲と能力を十分発揮して働くことのできる社会づくりを目指しています。
特に子育て世代にとって「休暇」は、自分の健康維持ばかりでなく、子どもの世話・教育などの役割を果たす上で、職場での仕事と同様に重要な活動を目的としている場合があります。女性の活躍推進の視点からも、意欲的に仕事をしながら子育てとの両立を可能とするために、柔軟な働き方、休み方の実現が求められています。
こうしたことを背景に、当研究所では、民間企業で正社員として働く子育て世代の休暇に対する意識を探るためにアンケート調査を実施し、子育て世代の特別休暇制度に対する意識や実態をたずねましたので、その結果を紹介します。
≪調査概要≫
1. 調査対象 20~59 歳で、民間企業で正社員として働いており、かつ大学生(短大、専門学校、大学院を含む)までの子どもがいる男女1,400 人(男女700人ずつ)
2. 調査方法 インターネット調査 (株式会社クロス・マーケティングのモニター)
3. 調査時期 2015 年11 月
4. 調査対象の属性
特別休暇制度の導入状況
導入割合が高い制度は「病気休暇」39.3%、「リフレッシュ休暇」28.1%
まず、代表的な特別休暇制度を挙げ、回答者の勤務先に年次有給休暇とは別に導入されている特別休暇制度の有無をたずねました。その結果、「ある」と答えた人の割合を示したものが図表1です。全体では「自分の病気・けがの治療・療養のための休暇(病気休暇など)」(以下「病気休暇」)に「ある」と回答した人が最も多く39.3%を占めています。次に「リフレッシュ休暇」28.1%、「ボランティア休暇(社会貢献のための特別休暇)」(以下「ボランティア休暇」)13.9%などが続いています。
回答者の勤務先の企業規模別にみると、いずれの特別休暇制度も企業規模が大きいほうが「ある」の回答割合が高い傾向があります。特に「リフレッシュ休暇」と「ボランティア休暇」は企業規模が大きくなるにつれて高いです。「子どもの学校行事のための休暇」(以下「学校行事休暇」)は29 人以下の企業が最も高いですが、その他の制度はすべて3,000 人以上の企業が最も高いです。概ね、規模の大きな企業のほうが特別休暇制度を導入している傾向が高いことがうかがえます。
特別休暇制度の利用割合
利用割合が高い制度は「記念日休暇」62.5%、「学校行事休暇」62.0%
勤務先に「ある」と回答した特別休暇制度について、2014 年度1年間に利用したことがあると回答した人の割合を示したものが図表2です。
勤務先に「ある」と回答した特別休暇制度の中で、利用したことがある割合が最も高い制度は「記念日休暇(誕生日など)」(以下「記念日休暇」)であり、僅差で「学校行事休暇」が続いています。「病気休暇」や「孫の世話のための休暇」(以下「孫休暇」)、使途に制限なく少なくとも1か月以上の期間取得できる「サバティカル休暇(長期勤務者対象の長期休暇)」(以下「サバティカル休暇」)は対象者が限定されるため単純比較はできないですが、対象者を限定しないにもかかわらず「ボランティア休暇」の利用割合が最も低いです。
性別にみると、女性のほうが利用割合が高い制度が多いですが、特に「学校行事休暇」「教育訓練休暇(自己啓発、研修などのための特別休暇)」(以下「教育訓練休暇」)、「ボランティア休暇」は、10 ポイント前後の差で女性が男性を上回っています。
一方、企業規模別については利用割合との関連は特にみられません。特別休暇制度の利用状況は、企業規模にかかわらず、各特別休暇制度を取得する必要性ないし意向がある従業員の多寡や、各職場における特別休暇制度の「利用のしやすさ」などによって決まるものと思われます。
特別休暇制度の利用意向
利用意向が高い制度は「病気休暇」54.1%、「リフレッシュ休暇」49.8%
勤務先に「ある」と回答した特別休暇制度について、2014 年度1年間に利用したことがあると回答した人の割合を示したものが図表2です。
勤務先に「ある」と回答した特別休暇制度の中で、利用したことがある割合が最も高い制度は「記念日休暇(誕生日など)」(以下「記念日休暇」)であり、僅差で「学校行事休暇」が続いています。「病気休暇」や「孫の世話のための休暇」(以下「孫休暇」)、使途に制限なく少なくとも1か月以上の期間取得できる「サバティカル休暇(長期勤務者対象の長期休暇)」(以下「サバティカル休暇」)は対象者が限定されるため単純比較はできないですが、対象者を限定しないにもかかわらず「ボランティア休暇」の利用割合が最も低いです。
性別にみると、女性のほうが利用割合が高い制度が多いですが、特に「学校行事休暇」「教育訓練休暇(自己啓発、研修などのための特別休暇)」(以下「教育訓練休暇」)、「ボランティア休暇」は、10 ポイント前後の差で女性が男性を上回っています。
一方、企業規模別については利用割合との関連は特にみられません。特別休暇制度の利用状況は、企業規模にかかわらず、各特別休暇制度を取得する必要性ないし意向がある従業員の多寡や、各職場における特別休暇制度の「利用のしやすさ」などによって決まるものと思われます。
今後導入すべき特別休暇制度は何か?
利用意向は高いが導入割合が低い制度は「学校行事休暇」「記念日休暇」
各特別休暇制度の利用意向(利用したいと思う割合)と導入割合(勤務先に制度がある割合)との関連をみるために、利用意向と導入割合をプロットしてイメージ図として表したものが図表4です。
利用意向も導入割合も高い典型的な特別休暇制度には、「病気休暇」や「リフレッシュ休暇」があてはまります。
他方、利用意向は高いが導入割合が低い制度には、「学校行事休暇」や「記念日休暇」などがあります。本調査対象は子どもを育てながら働いている人です。こうした家庭生活に配慮した特別休暇制度への期待は、子どもの養育や家族と過ごすための時間を重視したいとの思いが強く反映された結果であると思われます。
特別休暇制度を導入する効果
導入効果の上位2位は「有給休暇を減らすことなしに休暇を取得できる」と「目的が明確なので職場の人の理解が得やすい」
特別休暇制度は年次有給休暇とは異なり、企業が任意で設定するものです。実際、厚生労働省の委託事業で実施された「平成25 年度特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度に関する意識調査」(2014 年)によると、特別休暇制度を導入していない企業の割合は48.2%であり、そのうち64.7%の企業が導入していない理由として「年次有給休暇だけで十分である」と答えています。年次有給休暇の取得を前提とする企業が多い中、特別休暇制度を企業が導入する効果について人々はどのように認識しているでしょうか。
特別休暇制度の導入効果をたずねた結果、「有給休暇を減らすことなしに休暇を取得できる」(46.0%)と「目的が明確なので職場の人の理解が得やすい」(42.4%)に4割以上が回答しています(図表5)。これらの回答から、多くの人が「取得可能日数が限られている年次有給休暇を使うことへの抵抗感」と「職場の理解がないと休みにくいという意識」を感じている中、年次有給休暇と独立して特別休暇制度を導入することにより、こうした抵抗感・意識を緩和し、年次有給休暇を補足して円滑に休暇を取得できる効果があると認識していることがわかります。
≪研究員のコメント≫
以上、特別休暇制度に対する子育て世代の意識等をみてきました。特別休暇制度は企業が任意に設定するものであるため、あまり普及していないようです。実際、特別休暇制度を導入していない企業の多くが「年次有給休暇だけで十分である」としています。ただ、特別休暇制度の中には記念日休暇、学校行事休暇、病気休暇、リフレッシュ休暇など、勤務先に導入されていると利用割合が高いものがあり、またそれらは今後の利用意向も高いです。年次有給休暇のみでなく、こうした特別休暇制度を導入することで、人々の休暇取得慣行に変化をもたらす可能性が期待できると思われます。具体的に、休暇取得促進のための特別休暇制度の導入意義として以下の2点が挙げられます。
1つは年次有給休暇の補足機能です。例えば病気やケガの場合に年次有給休暇に優先して利用できる病気休暇を設置すれば、年次有給休暇を将来の病気に備えて節約しなくても安心して取得できます。2つ目は会社が従業員に休むきっかけづくりを付与できる点です。例えば子どもの養育のための学校行事休暇、従業員の能力開発のための教育訓練休暇、ボランティア休暇などの設置を通じて、会社は従業員の私生活の活動に対する理解、支援を表明することができます。従業員がこうした目的で年次有給休暇を別途取得する場合でも、職場の理解が得られやすいため休みやすさにつながります。
今後、企業は長時間労働の抑制など「働き方」のみでなく、年次有給休暇の取得促進に寄与する特別休暇制度を職場の状況に合わせて組み入れた休暇制度として整備するなど、「休みやすさ」にも視点を置いた見直しを図ることで、子育て世代のワーク・ライフ・バランスを支え、仕事に対する意欲と能力を十分に発揮できる職場環境を整えることも必要と思われます。
(研究開発室 上席主任研究員 的場康子)
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(津田・新井) TEL.03-5221-4771 FAX.03-3212-4470 【URL】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/index.html