PTA役員を断るときに大切な話し方
たとえば、自分の子どもが通う小学校で、PTAの役員の仕事を引き受けてくれという勧誘を受けたとき、どんな対応をしたらいいでしょうか。
「はい、はい、はい、はい」
と言って軽く受け流したとします。
そうすると、相手は「引き受けてくれた」と思うかもしれませんし、人の話を軽んじたと感じるかもしれません。もしも軽んじられたと思われた場合は厄介です。
あなたが引き受けたとしても、「この人は人の話を軽く受け止めるから、しっかりやってくれないのではないか」という疑いの目で見られるかもしれません。
また、あなたが「はい、はい、はい、はい」と言いながらも、役職に就くことを断ったとしたら、なおのこと非難を浴びることでしょう。
PTAの役員を引き受けてくれないかと依頼する側は、必死になって申し入れをしてきているのです。それを軽んじたり、無視するようなことがあったら、白い目で見られるのは必至です。
そうならないためにどうすればいいのでしょうか。
まずは、相手の依頼をしっかりと受け止めましょう。笑顔で姿勢よく、相手の目を見て話を聞くのです。そして相手とどんな関係を結びたいのかを思い浮かべます。その上で気分を整えて、言葉を繰り出します。
「朗らかに、了承してもらえてうれしい」という気分だとしましょう。そんな気分を先に味わいます。その上で言葉を繰り出していきましょう。
「○○さんのおっしゃること、よくわかります。誰かがPTAの役員を引き受けないと、子どもたちのサポートができませんものね。これまで皆さんの活動を拝見してきましたが、とても有り難いと感謝しておりました。私も何か貢献しなければならないなと感じていたところです。
今回のお話をうかがって、今度こそお役に立てるチャンスかと思い、とてもうれしくなりました。ところが、あいにくなのですが、私の仕事の関係で今年は重大な危機を迎えておりまして、一刻の猶予もない状態なのです。詳細を申し上げるのは控えさせていただきますが、今年はおそらく1日も実質的な休みを取れないかと存じます。大変お恥ずかしい話で恐縮です。詳しく申し上げられないことで、心苦しいのですが、ご理解いただければ幸いです。
そうは言っても、せっかくのお話ですので、メールでのやり取りやデータの整理などについてはお手伝いできることもあるかと思います。そのような形でもよければ今回のお仕事を引き受けさせていただけるかと存じます。会合の出席や行事への参加ができませんことをご理解いただければ幸いです。PTA活動の意義を重々理解した上で、ほとんど関われないことを残念に思います」
まず相手の話をしっかりと受け止めて、相手が「自分自身のことを好きだ」と思えるように働きかける。たったそれだけで、同じ断るでも相手に与える印象はガラリと変わるはずです。
さて4回の連載を通して「話し方」における「気分」の重要性について述べてきました。いかがだったでしょうか。
好評発売中の拙著『「言いにくいこと」をハッキリ伝えても、なぜか好かれる話し方』では、
「忙しそうな上司に、急ぎの検印をお願いしたい」
「友人からの借金のお願いをうまくかわしたい」
「義理の両親が、勝手に子どもにお菓子を与えるのをやめさせたい」
など、様々なシーンで役立つ「気分をコントロールした話し方」を解説しています。ご興味のある方は、ぜひご一読いただけましたら幸いです。
藤由達藏(ふぢよし・たつぞう)〔株〕Gonmatus 代表取締役。夢実現応援家
モットーは「人には無限の可能性がある」。経営者から学生まで幅広い層の個人を対象に夢実現応援の対話(コーチング)を提供するとともに、企業に向けた研修や講演も提供。
1967年生まれ。1991年、早稲田大学第一文学部卒業後、プラス〔株〕に入社。営業、企画、新規事業設立等に携わる。2009年、全プラス労働組合中央執行委員長に就任。労働組合運動にコーチングを取り入れる。2013年9 月、コーチとして独立。コーチングを核として、各種心理技法や武術、瞑想等の経験を統合し、夢実現応援対話技法を確立。2015年7月、『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』(青春出版社)の出版を機に作家活動を開始。著者累計40万部を突破。
2016年9 月、〔株〕Gonmatus を設立。夢実現応援事業、出版プロデュース、動画制作等の事業を展開。(『The 21 online』2018年06月15日 公開)
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