結果の概要:名目個人消費は市場予想に一致も、個人所得は予想を下回る

米国,個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

10月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は9月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.2%(前月改定値:+0.4%)となり、+0.3%から上方修正された前月および、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.4%(前月改定値:+0.5%)と、こちらは+0.3%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+0.4%)に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.3%(前月改定値:+0.4%)と、こちらも+0.2%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+0.3%)には一致した(図表5)。貯蓄率(1)は6.2%(前月:6.4%)と前月から▲0.2%ポイントの低下となった。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.1%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、+0.2%(前月値:横這い)と、前月および市場予想(+0.1%)を上回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+2.0%(前月値:+2.2%)と前月から低下、市場予想(+2.0%)には一致した。コア指数は+2.0%(前月値:+2.0%)とこちらは前月、市場予想(+2.0%)に一致した(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:消費対比で所得の低調が持続。貯蓄率は7ヵ月連続低下

名目個人消費(前月比)は、18年3月以降+0.4%~+0.6%の堅調な伸びが持続している(図表1)。これは、雇用不安の後退や消費マインドが堅調であることが消費を後押ししていると考えられる。

一方、個人所得は9月が17年6月(同+0.1%)以来の水準に低下したほか、18年3月以降、消費の伸びを下回っていることから、貯蓄率は18年2月の7.4%をピークに7ヵ月連続の低下となった。

個人消費は良好な消費マインドなどを背景に堅調となっているが、足元で株価が不安定になっていることや、米中貿易戦争に伴う国内物価の上昇などが良好な消費マインドに影響する可能性があるため注目される。前述のように消費は所得対比で実力以上の強さとなっていることから、消費マインドなどの悪化によって所得対比並みの伸びに鈍化する可能性は十分にあろう。

一方、物価は総合指数(前年同月比)が、前月からやや低下したものの、FRBが物価目標としている2%の水準を維持したほか、物価の基調を示すコア指数も5ヵ月連続で物価目標に一致した。物価は、足元で上昇ペースが鈍化しているものの、景気回復や労働需給の逼迫持続から、今後は上昇圧力が掛かりやすい状況が続くとみられる。

所得動向:賃金・給与、利息・配当収入が低調

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.2%(前月:+0.5%)と、高かった前月の反動もあって、17年10月(同+0.1%)以来の低い伸びとなった(図表2)。もっとも、9月の賃金・給与の伸びは鈍化したものの、労働需給の逼迫が持続していることから、低下は一時的だろう。一方、利息・配当収入は+0.1%(前月:+0.1%)と前月並みの伸びに留まった。また、移転所得は+0.6%(前月:+0.4%)と、こちらは18年1月(+1.4%)以来の高水準となった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.2%(前月改定値:+0.4%)と、+0.3%から上方修正された前月から低下し、17年6月(横這い)以来の低水準となった(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベースも前月比+0.1%(前月:+0.2%)と、こちらも前月から低下した。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:自動車関連投資の増加に伴い耐久財消費が増加

名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.3%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化した一方、財消費が+0.6%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速して全体を押上げた(図表4)。財消費では、非耐久財が+0.3%(前月:+0.2%)と小幅な加速に留まった一方、耐久財が+1.4%(前月:+0.6%)と大幅に加速したことが大きい。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+1.7%(前月:+0.9%)となったほか、自動車・自動車部品も+2.3%(前月:+1.1%)と前月から大幅に伸びが加速した。

非耐久財では、衣料・靴が+0.4%(前月:▲1.4%)と前月から増加に転じたものの、ガソリン・エネルギーが横這い(前月:+2.2%)と前月から伸びが大幅に鈍化した。

一方、サービス消費では、外食・宿泊が▲1.4%(前月:▲0.0%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、医療サービス+0.4%(前月:+0.6%)や、住宅・公共料金+0.4%(前月:+0.6%)などで前月から伸びが鈍化した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:前年同月比でエネルギー価格は5ヵ月ぶりに1桁の増加ベースへ鈍化

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.4%(前月:+1.9%)と前月からマイナスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は横這い(前月:▲横這い)と、ゼロ%近傍での動きとなっている。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+5.1%(前月:+11.3%)と5ヵ月ぶりに1桁の伸びに低下した(図表7)。なお、エネルギー価格は16年11月以降、物価を押上げる状況が持続している。最後に食料品価格指数は+0.5%(前月:+0.5%)と、こちらも前月なみの伸びを維持し、15ヵ月連続でプラスとなった。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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