パナソニック(旧松下電器産業)を一代で築き、「経営の神様」と呼ばれた故・松下幸之助氏(1894年~1989年)。書籍出版などを行うPHP研究所や、未来のリーダーを育成する松下政経塾も創設した。PHPとは「繁栄によって平和と幸福を」という意味の英語の頭文字であり、その思いを込めた書籍が多数世に送り出された。松下氏の書籍のなかから、40代で人生や仕事を考えるのに役立つ4冊を紹介する(文中価格は紙版、PHP Webサイトの価格)。
『道をひらく』――発行520万部超、40年以上読み継がれる短編集
『道をひらく』は、PHP研究所の機関紙『PHP』に連載した短編120あまりをまとめたものである。生きる上での勇気や成功への指針を与える真理が綴られ、40年以上もの間読み継がれている。
本書の最初の短編「道」は、自分だけに与えられたかけがえのない道(人生)を一生懸命に進むことで新たな道がひらけることを教えてくれる。その他にも、落ち込んだ時に勇気を与え、人間関係がうまくいかない時に心を変え、物事がうまく進まない時に冷静にさせてくれるなど、生きる上での道をひらく。
人生と事業の成功者である松下氏の数々の言葉は、あらゆる年代、職業の人の心のよりどころとなるだろう。
940円(本体価格870円)
『素直な心になるために』――素直な心を高め、自他ともに幸せを実現する教え
人間が好ましい生き方を実現するには、それにふさわしい考えや行動が大切であり、その根底をなすものが素直な心であると説く。
本書には「素直な心の内容」、「素直な心の効用」、「素直な心のない場合の弊害」、「素直な心を養うための実践」の4章があり、それぞれ10ヵ条が綴られている。
「素直な心の内容」では、私利私欲にとらわれず謙虚に耳を傾けることを学ぶことができる。「素直な心の効用」では、危機をチャンスと受けとめ、和やかになることのメリットを示す。「素直な心のない場合の弊害」では、素直な心を持たないことのデメリットを説く。「素直な心を養うための実践」では、素直な心を自分のものにする方法を教えている。
この本は、頭で分かっていてもできていないことや忘れていることを思い出させ、自分の心を引き締めてくれる。ふとした時に何度でも読み返したくなる書籍である。
555円(本体価格514円)
『若さに贈る』――社会人としての心構えなどについて、初心を思い返す書
『若さに贈る』は、若者へ贈る社会人としての心構えなどが記されている。松下氏の生い立ちから始まり、9歳で大阪のお店に奉公に行き商売に触れたことなど、現代との違いが興味深い。
本書では、成功者の真似をしても必ずしも成功するとは限らないこと、人それぞれの個性を伸ばし生かすことが大切であること、名誉や利欲に目がくらんではいけないことなど様々な言葉が綴られている。
さらには、過去のものとなりつつある戦争の悲惨さについても考えさせられる。若者だけでなく、初心を忘れかけた社会人にもおすすめできる書籍である。
907円(本体価格840円)
『人間としての成功』――人間の成功とは何か、成功するにはどうすべきかを導く
松下氏が考える人間としての成功は、各個人に与えられた天分を十分に生かすことである。それにより本当の生きがいや幸せを実感できる。そのためには、自分の天分や特質を把握することが大切だ。社会的な地位や名誉、財産は必ずしも人間としての成功の基準にはならない。このような人間としての成功のための教えが綴られている。
ただし、時代にそぐわない点も若干見受けられる。例えば、厳しく叱ることの肯定については違和感があり、時代の変化を感じることができる。
松下氏は、貧困であったために小さい頃から商売を学び、学歴がなかったためにすべての人に教えを乞うなど、前向きに生きてきた。そんな松下氏の生き様から生まれた『人間としての成功』は、多くの人を成功に導いていることだろう。
503円(本体価格466円)
文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES
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