20歳未満の未成年者は、契約や遺産相続などの法律行為をすることができません。未成年者がこれらの行為をするためには、親権者に代理してもらうか同意してもらうことが必要です。

両親が亡くなるなどして親権者がいなくなってしまった場合には、親権者の代わりになる「未成年後見人」を立てる必要があります。

この記事では、未成年後見人を選任する方法と未成年後見人の職務内容についてお伝えします。

1.未成年後見人とは

未成年後見人の選任方法
(画像=税理士が教える相続税の知識)

未成年後見人は、親権者のいない未成年者を監護養育するほか、未成年者に代わって財産の管理や法律行為の代行を行います。

親権者が死亡したときには、遺産相続や保険金の受け取りといった法律行為を未成年者本人に代わって実行します。しかし、これらの当面の目的が終了した後も、未成年者が成人するなど一定の時点までは未成年後見人としての職務は続きます。

2.未成年後見人選任の手続き

未成年後見人を立てるためには家庭裁判所に申し立てをします。未成年後見人は遺言で指定することができ、遺言にその記載があれば市区町村役場に届け出ます。

未成年後見人の選任方法
(画像=税理士が教える相続税の知識)

2-1.家庭裁判所に申し立てる場合

未成年後見人を立てるには、未成年者本人または親族が、未成年者の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。管轄する裁判所は下記のページから調べることができます。

裁判所|裁判所の管轄区域

必要書類

申し立てに必要な書類は次のとおりです。

  • 未成年後見人選任申立書(800円分の収入印紙を貼付)
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 未成年者の住民票または戸籍附票
  • 未成年後見人候補者の戸籍謄本(法人の場合は商業登記簿謄本)
  • 親権者がいないことを証明する資料(親権者が死亡したことがわかる戸籍謄本など)
  • 未成年者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金の残高証明書など)
  • 申し立てをする人と未成年者との関係を示す資料(戸籍謄本など)
  • 連絡用の郵便切手

「未成年後見人選任申立書」の様式は次のページからダウンロードできます。

裁判所|未成年後見人選任の申立書

未成年後見人になれる人

未成年後見人になるために特に資格は必要ありません。兄弟姉妹も成人であれば未成年後見人になることができます。また、複数人が未成年後見人になることもでき、法人も未成年後見人になることができます。

ただし、行方不明者や家庭裁判所から法定代理人を解任された人などは法律上未成年後見人にはなれません。

なお、申し立てでは未成年後見人の候補者を推薦することができますが、誰が選任されるかは家庭裁判所が決定します。未成年者が多額の財産を相続する場合や、未成年者の養育や財産管理の方針が親族どうしで大きく食い違う場合などでは、弁護士や司法書士など専門職の後見人が選ばれることがあります。あるいは専門家が未成年後見監督人となる場合もあります。

2-2.遺言で指定されている場合

未成年後見人は遺言で指定することもできます。ただし、遺言者が死亡しても、もう一方の親が親権者として健在である場合は効力がありません。

手続きは、遺言で指定された未成年後見人本人が遺言者の死亡日から10日以内に届け出ます。届け出先は未成年者の本籍地または未成年後見人の所在地のいずれかの市区町村役場です。届け出には遺言書が必要ですが、その他の必要書類については届け出先の窓口で確認してください。

遺言では未成年後見人を監督する未成年後見監督人を指定することもできます。

2-3.未成年後見人は戸籍に記載される

未成年後見人が選任されたことは、未成年者の戸籍に記載されます。

未成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立てた場合は、裁判所から市区町村に連絡されるので戸籍に関する手続きは不要です。

3.未成年後見人の職務

未成年後見人は未成年者の「身上監護」と「財産管理」を行います。この章では、未成年後見人の職務と報酬、職務の終了時期について詳しくお伝えします。

3-1.身上監護と財産管理

未成年後見人は、就任時、就任中、終了時のそれぞれの時期に応じて、下記の表に記載されている職務を行います。職務にあたっては、未成年者の意思を尊重して心身や生活の状況にも配慮することが求められます。

未成年後見人の選任方法
(画像=税理士が教える相続税の知識)

職務が不十分であったり、不正な行為を行ったりした場合は、未成年者本人または親族、未成年後見監督人などの求めによって、家庭裁判所が未成年後見人を解任することができます。たとえば、未成年者の身上監護を十分に行わなかった場合や、未成年者の財産を横領した場合などがあてはまります。

未成年後見人が解任されたとき、あるいは健康上の理由などで辞任したときは、新しい未成年後見人を選任して財産を引き継ぎます。

裁判所への報告義務

裁判所に申し立てて未成年後見人を選任した場合は、定期的に家庭裁判所に報告する義務があります。

後見の開始から1か月以内に未成年者の財産調査を行い家庭裁判所に報告します。その後は毎年定められた時期に「後見事務報告書」と「財産目録」を家庭裁判所に提出します。

報告手続きの詳細は管轄の家庭裁判所で確認してください。

3-2.未成年後見人に対する報酬

未成年後見人は報酬を受け取ることができます。

報酬を受け取るには、家庭裁判所に「報酬付与の審判」の申し立てを行い、決定を受けなければなりません。報酬の額は、後見人として職務を行った期間や職務の内容、未成年者の財産の状況などから決定されます。

手続きをしないで未成年者から報酬を受け取ったり、未成年者の財産から引き落としたりしてはいけません。家庭裁判所の決定を受けてはじめて未成年者の財産から報酬を受け取ることができます。

3-3.未成年後見人の職務の終了

未成年者に次のことがあった場合には、未成年後見人の職務が終了します。

  • 成人したとき
  • 婚姻したとき
  • 養子縁組したとき
  • 死亡したとき

このときは10日以内に市区町村役場に届け出なければなりません。また、家庭裁判所に連絡のうえ、管理していた財産を2か月以内に未成年者本人または養親、相続人に引き継ぎます。

4.まとめ

以上、未成年者が遺産を相続するときに必要となる未成年後見人について、選任手続きと職務内容をお伝えしました。

未成年後見人は親権者がいない未成年者について身上監護と財産管理を行います。家庭裁判所に選任を申し立てるほか、親権者が遺言で指定することもできます。遺産相続や保険金の受け取りなど当面必要な用件が終わったとしても、未成年者が成人するなど一定の時期までは未成年後見人の職務は続きます。

未成年後見人は事務的な職務だけでなく、未成年者を教育してしつけることも重要で、親代わりといえる立場にあります。十分に養育しなかったり財産を横領したりした場合は、家庭裁判所から解任される場合もあります。

未成年後見人は、未成年者の保護が目的であることを念頭に職務にあたることが大切です。

(提供:税理士が教える相続税の知識