enzaに集まったデータで、より高い付加価値を
――enzaは、ゲーム以外でも使うことを考えているのでしょうか?
手塚 もちろんです。バンダイナムコグループは、映像事業やeコマースなど、エンターテインメントに関わる様々な事業をしていて、それらがenzaを活用することも想定しています。これができるのが、バンダイナムコグループの強みだと思います。
さらに、enzaによって、BXDはエンターテインメントのハブとなる企業になりたいと考えています。
玩具や映像など、IPを使ったビジネスは、バンダイナムコグループに限らず、いろいろな場所で行なわれています。それぞれがビジネスとして成り立つことが大事ですが、ゲームと連動することによって、さらなる付加価値を提供できればと思っています。
enzaを使えば、ゲームにアクセスしているお客様が、どういった人で、どういう好みをお持ちなのかを把握できますから、例えば、「このキャラクターが流行っている」という情報をいち早く捉えて、「じゃあ、このキャラクターのフィギュアを作りましょう」というように、商品開発にも活かすこともできます。
ゲームは毎日遊んでいただけますから、「この作品は、このくらいの年齢層の人が、これくらいの頻度で遊んでくれる」というような精緻なデータが取れるのです。
――コンビニのPOSデータみたいなものですね。こうした展開は、当初から考えていたことなのですか?
手塚 私は転職でバンダイナムコグループに入ったのですが、それは、グループが持っている色々な商品を連動させる仕事がしたかったからなんです。ずっとやりたいと思っていたことが、ようやく技術的にできるようになりました。
――すでにいくらか伺っていますが、これからの展開として、他にどのようなことを考えていますか?
手塚 まずは、地に足をつけて、柱となる面白いゲームを作ることが大事だと考えています。本数を多く出すことは目的としていません。ですから、規模の拡大を目指すよりも、先行するタイトルのノウハウを次に活かしていくことを考えています。
また、HTML5のゲームを作れる会社や技術者はまだ多くないので、色々な会社様にノウハウをお伝えして、市場を広げていきたいと思っています。enzaを開放しているのも、そのためです。
――他社が技術的に追いついたり、追い越したりすることもあり得るのではないでしょうか?
手塚 HTML5はソースコードが誰にでも見られるので、そういうことも想定しています。HTML5の技術が向上することは、市場が盛り上がることになるので、むしろ当社からノウハウを提供しているわけです。当社の強みはIPですから、技術的に他社に追いつかれても、差別化はできると思います。
――なるほど。お話を伺っていると新たな展開が実際に起こるのが楽しみになるばかりなのですが、課題だと感じていることはないのでしょうか?
手塚 認知を広げることでしょうか。ネイティブアプリだとストアがありますし、家庭用ゲームだと店舗があって、そこに行けばタイトルが並んでいます。お客様は、その中から遊びたいゲームを選ぶわけです。けれども、HTML5のゲームは、ストアにも店舗にも並びません。
現状ではタイトルごとにプロモーションをしていますが、どこかのタイミングで、プラットフォームであるenzaのプロモーションも必要になると考えています。enzaのゲーム同士だと、新たな会員登録も必要ありませんし、バナコインやenzaポイントも共通で使えます。また、enzaの中の友達にタイトルをお勧めすると特典がある、というような仕掛けも作っています。そうしたメリットを示して、enzaの認知度を高めていきたいですね。
手塚晃司(てづか・こうじ)〔株〕BXD代表取締役社長
1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ゲーム会社を経て、2003年にバンダイネットワークス〔株〕入社。合併に伴い、09年に〔株〕バンダイナムコゲームス(現・〔株〕バンダイナムコエンターテインメント)へ転籍入社。『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』『ONE PIECE トレジャークルーズ』『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』『キングダム セブンフラッグス』などのスマートフォンアプリをプロデュースするプロダクションの責任者を歴任。17年8月に〔株〕BXDを設立し、代表取締役社長に就任。バンダイナムコエンターテインメントのスマートフォンアプリ事業のゼネラルプロデューサーも務める。《写真撮影:まるやゆういち》(『THE21オンライン』2018年07月07日 公開)
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