不動産投資は、開業医のような高所得者にこそ向いていると言われます。節税効果の恩恵を享受することもできますし、属性が良いため融資も受けやすいからです。しかし、節税を狙った不動産投資や融資を受けやすい状況が、結果的に失敗を招く原因になることがあります。

上客であるがゆえ融資を受けやすいことがリスクに?

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(写真=NOOMEANG/Shutterstock.com)

社会的地位の高い人は、金融機関にとっては上客です。融資審査においても高い評価がつけられることから、不動産投資ローンを受けやすいという特徴を持っています。しかしここには落とし穴があります。

金融機関は不動産投資に対する融資をするか検討する際に、その本人の返済能力のほか、取得しようとしている不動産の将来性や運用計画なども評価します。しかしあまりにその人の属性が良い場合は、不動産としての将来性があまり高くない物件を購入する際にも、融資が決まってしまうことがあります。

そして融資を受けることができたがためにその不動産を取得してしまい、結果として高い利回りが維持できなかった――。こんなケースが少なくないようです。

いわゆる中所得者なら融資を受けるために良い物件を探す努力もします。そうしなければ融資を受けられないからです。一方、高所得者の場合は属性が良いがゆえに(良くも悪くも)その過程が抜けてしまいがちです。

こうしたリスクを回避するためにも、資産運用コンサルティング会社などに相談し、客観的なアドバイスをもらうことが有益です。

節税目的の不動産投資、売り時を間違えて逆に負担増に

節税目的に不動産投資を行う高所得者は多くいます。理由は2つあります。

1つ目は不動産の「減価償却費」を給与所得から控除できることです。減価償却とは、建物や機械など時間経過とともに価値が減っていく資産について、取得経費を長期間にわたって分割して計上することです。不動産運営の収支は税務上給与所得との合算が可能であり、減価償却費を毎年計上できるとその金額が給与所得から控除されるので、節税効果が生まれます。

2つ目は相続税の資産価値の評価でも、現金で保有しているより不動産で保有しておいたほうが価値が低く算出されることです。不動産投資は相続税対策としても有効であることが分かります。

不動産投資にはこうした節税面でのメリットがありますが、見落とされがちな点もあるので注意が必要です。1つ目の減価償却費で言えば、不動産を売却するときに発生する譲渡所得や、5年以内に売却したときの高い譲渡税がネックです。

不動産を売却したときは、譲渡価額から不動産の取得費などを差し引いて譲渡所得が計算されます。この不動産の取得費は購入した時の価格から減価償却費が差し引かれて計算されるので、結果として譲渡所得が高くなり、節税効果が減ります。

また譲渡税については、不動産の所有期間が5年を超える場合の売却では20.315%(住民税・復興特別所得税含む)という税率に留まりますが、所有期間が5年以下の場合は39.63%(同)と高く、売り時を間違えると節税どころか負担が大きくなってしまうこともあり得ます。

相続税対策として不動産を購入したり建設したりする場合は、賃貸需要や売却時の値上がりなどがあまり見込めない物件を所有することにならないように注意しましょう。節税目的であったとしても、不動産投資の本質である「家賃収入」と「売却益」を軽視すべきではありません。

忙しさを理由に「手間(時間)の投資」を怠る

忙しい方が特に陥りがちな不動産投資の失敗例を紹介します。

「不動産投資は忙しくてもできる」と言われることもあります。それは間違っていません。購入する不動産の選定から購入手続き、入居者募集、家賃の徴収などの運営まで、ワンストップですべてを代行してくれる不動産会社もあります。

しかし、投資する側と不動産会社の利害は完全に一致しているわけではありません。管理に対する手数料は「収入の何%」というケースが多いので利害は一致しますが、物件の選定においては業者側に多くの利益をもたらす物件を勧められることもあります。すべての不動産会社がそうではありませんが、そういうケースもあることは知っておきましょう。

こうしたリスクを回避するためには、内覧するのは当前、物件の周辺を自分の足で歩き、その地域のことを調べましょう。そして自分なりの将来予測も立てるなど、金銭的な投資ではなく「手間(時間)の投資」をすることが成功のポイントです。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio