ふるさと納税で「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をしなくてもいいことはご存知だろう。しかし、あえて確定申告をするほうが得になるケースがある。ポイントは、所得税と住民税のどちらの控除を受けるかだ。

税額控除を受ける方法は「ワンストップ特例」か「確定申告」

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(画像=Natee Meepian/Shutterstock.com)

ふるさと納税の控除を受けるには、「ワンストップ特例制度」または「確定申告制度」の手続きが必要だ。

原則としてどちらの制度を利用しても戻ってくる税金の金額に変わりはなく、表面上はただ手続き方法が違うだけに見える。しかし、実際には「どの税金が戻ってくるか」という違いがある。

確定申告をすれば所得税と住民税のどちらの控除も受けられるが、ワンストップ特例の場合は所得税の控除は受けられず、その代わりに住民税の申告特例控除が受けられる。この仕組みを知っているか否かで、どちらの手続きを選択するかが変わるだろう。

控除上限額を超えてしまった場合は確定申告した方が得

まず、控除には所得税および住民税の基本分と特例分があることを押さえておこう。

⑴所得税の寄附金控除
⑵住民税の寄附金税額控除の基本控除
⑶住民税の寄附金税額控除の特例控除
⑷住民税の寄附金税額控除の“申告”特例控除

特例分は申告方法によってそれぞれの控除額が算出され、上限額がある。確定申告をした場合、⑴⑵⑶の控除が受けられ、ワンストップ特例の場合は、⑵⑶⑷の控除が受けられる。

原則として⑴と⑷は同じ金額になるようになっているが、⑶が控除の上限額を超えてしまうと、ワンストップ特例を利用するほうが不利になってしまう。なぜなら、⑷は超過分を切り捨てられて少なくなった⑶を基に算出されるからだ。

控除額を算出する式は、以下のようになる。

⑴所得税の寄附金控除

【計算式】(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率
【上限】総所得金額等の40%

⑵住民税の寄附金税額控除の基本控除

【計算式】(ふるさと納税額-2,000円)×10%
【上限】総所得金額等の30%

⑶住民税の寄附金税額控除の特例控除

【計算式】(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-基本控除率10%-所得税率)
【上限】住民税所得割額の20%

⑷住民税の寄附金税額控除の“申告”特例控除

【計算式】③×所得税率÷(100%-基本控除率10%-所得税率)

これらの計算式に当てはめると、例えばふるさと納税額が20万円、年末調整時の所得税率が20.42%(復興特別税を加味)、調整控除を差し引いた住民税所得割が50万円とした場合、それぞれの申告方法で控除額は次のようになる。

確定申告をした場合=16万230円
ワンストップ特例の場合=14万9,150円

確定申告したほうが、ワンストップ特例制度を利用するよりも1万1,080円も得をしている。このように、控除上限額を超えてしまった場合は確定申告が得策というわけだ。

確定申告で住宅ローン控除をするならワンストップ特例のほうが得な場合も

ワンストップ特例制度を利用するほうが、得になるケースもある。住宅ローン控除を受けている場合だ。

住宅ローン控除は所得税が対象だ。確定申告によってふるさと納税と住宅ローンの両方を所得控除することは可能だが、金額を合わせることで所得控除の上限を超えてしまい、節税効果を100%享受することができない可能性がある。

一方、ワンストップ特例制度は住民税のみが控除対象となっている。所得税が対象の住宅ローン控除の影響を受けることはない。

住宅ローン残高が高額で、所得税で控除しきれなかった分は住民税控除にあてられるが、ふるさと納税の控除上限額を算出する際の住民税所得割は、住宅ローン控除を反映する前のものが使われるため問題ない。

住宅ローン控除で確定申告が必要なのは、初年度だけだ。2年目以降は年末調整で手続きできるため、他に必要がなければワンストップ特例を利用できる。

ふるさと納税控除上限額を知る方法

控除上限額を超えると、確定申告のほうが得であると説明した。控除上限額は単に年収で決まるわけではなく、家族構成や住んでいる自治体によって異なる。結局いくらまでならふるさと納税ができるのかは、直近の源泉徴収票や確定申告書をもとにシミュレーションして目安を計算するほかない。

総務省のふるさと納税ポータルサイトに「寄附金控除額の計算シミュレーション」が用意されているが、Excelなので少々使いにくいので、ふるさと納税の返礼品を注文できるサイトで試算するといいだろう。ただし実際の所得とは異なる可能性があるので、あくまでも参考程度にとどめておきたい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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