「相続は争族」と言われるほど、相続は仲の良かった身内同士でも争う原因となる。年末年始、実家に帰って親と過ごす予定の人もいるだろう。親の終活や相続準備は、盆や正月など顔を合わせるタイミングで話しておきたい重要なことの一つだ。相続が原因で身内が争うことのないよう、やっておきたい5つのことをまとめた。
ポイント1……親に遺言を残してもらう
最も基本的なことだが、遺言を残してもらうに越したことはない。遺言書には主に自筆証書遺言、公正証書遺言の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあるため注意が必要だ。
自筆証書遺言は親自身が作成する遺言書で、様式が整っていれば効力を発揮する。作成費用もかからない。しかし、自己責任で保管する必要があるため、紛失のおそれや親の死後発見されない可能性もある。
公正証書遺言は、公正証書にして公証人役場に保管してもらう方式。様式の不備や紛失などのおそれがない。デメリットは、費用がかかることと証人が2人必要なことだ。
ポイント2……対象となる相続人と分割の割合を明確にしておく
法定相続人は被相続人の配偶者や実子、兄弟姉妹などと法律で定められている。法定相続の割合は、配偶者のみの場合は全部、配偶者と子どもがいる場合は配偶者が1/2、子ども1/2(1/2を子どもの人数で分ける)、配偶者と親の場合は配偶者が2/3、親が1/3となる。もちろん、遺言で特別な定めがある場合はこの限りではない。
相続人の範囲や遺産分割の割合をしっかりと把握し、無用なトラブルを避けるよう心掛けたい。
ポイント3……遺産となる資産の一覧を作ってもらう
土地や預貯金、生命保険、株などの有価証券、貴金属など、相続の対象となるものは多岐に渡るため、親の資産のすべてを把握するのは至難の業だ。まして親の死後となればなおさらだろう。そこで、予め親に相続対象となる一覧を作ってもらっておくといい。評価額などもあらかじめ算定されていると、無用なトラブルを避けることにもつながる。
なお、相続対象には借金などマイナスの財産も含まれるため注意が必要だ。
ポイント4……相続税を試算しておく
遺産分割の割合や資産を明確にすることで、自分の相続分を予測することもできる。基礎控除や税率が概ねどれくらいかを事前に把握しておけば、いざというときに慌てることもない。
なお、相続税の計算は「課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)」により課税対象となる総額を算出し、その後割合に応じて配偶者や子どもなどに配分する。
たとえば、課税価格の合計額が1億4,800万円で、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人の場合、課税遺産総額は1億4,800万円-(3,000万円+600万円×3人)=1億円となる。配偶者の相続割合は1/2のため5,000万円、子どもは2,500万円ずつだ。
たとえば、子ども(各2,500万円)の税率は15%で控除は50万円のため、相続税額は各325万円となる。
ポイント5……親兄弟とコミュニケーションをしっかり
遺産相続におけるトラブルのほとんどは、相続人同士の不毛な争いや遺産の中身だ。
たとえば、遺産の大半が土地や建物などの不動産の場合、分割することが困難であり、トラブルの火種になることは多々ある。価値・評価額もわかりにくく、建物などは売りたい人と所有したい人が分かれることもある。売ることが決定しても、すぐに売れるとは限らない。
また、偏った内容の遺言が残されていたり、遺産を独占しようとする相続人がいたりすると、高い確率でトラブルのもととなる。生前贈与が行われているケースや寄与分について、もめることもあるようだ。
こういった無用なトラブルを未然に防ぐためにも、相続に向けた準備が必要なわけだが、親と自分だけで進めると、兄弟姉妹がいぶかしむ可能性もある。そのため親兄弟と日頃からコミュニケーションをしっかりとり、同意のもとで進めることが何より重要と言えるだろう。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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