スーツスタイルの基本ルールは明確。だが基本的な着こなしのルールさえ守っているだけでは、一歩抜き出たおしゃれにならない。ありがちなビジネススーツにいかにマイルールをプラスしおしゃれに着こなすことができるか。それこそが腕の見せ所だ。

スーツスタイルは“曖昧な部分のルール化”こそ肝心

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(画像=Dmytro Zinkevych/Shutterstock.com)

無駄なシワが入らないジャストなサイズ感は、スーツスタイルをエレガントに見せる大原則だ。ベルトや革靴に代表される小物類の質感と色を揃えるもの上品に仕上げる定石と言える。

だが、このような基本ルール以外の部分に関しては、こだわりを持たずに曖昧なままにしている人も多いようだ。もちろん、それが個性を演出する余地になることもあるので、すべてをルール化すべきだと主張したいわけではない。

応用的な着こなしにもルールが定まっている場合があり、定まっているならそれに則るべき。ルールが定まっていない場合は、自分なりのマイルールを定めたほうがいい。マイルールを決めることは、自分らしい芯の通ったスーツスタイルの確立につながり、仕事着をコーディネートする際の効率化にもつながるからだ。

そんな目線で、これからの時期に増えてくる応用的な着こなしのルールについて考察しよう。

ジレのボタンはすべて留めて良いのか……一番下は留めない

スーツのジャケットはいちばん下のボタンを外すという基本ルールがある。いわゆる捨てボタンというものだ。これはスーツを着た時のシルエットをより綺麗に見せるためにつけられている。シングルブレストやダブルブレスト、2つボタンや3つボタンでも同様だ。

段返りの3つボタン仕様は、いちばん上のボタンも外すのがルール。1番上のボタンについては装飾的な意味合いでつけられており、これを留めないことでより美しいシルエットのスタイルを作り出すという意図がある。

最近はクラシック回帰がトレンド傾向にあり、それを象徴するスリーピースのスーツスタイルにも注目が集まっている。

この場合、ジレの着用マナーが気になるところだが、ジレについても1番下のボタンを留めないのが原則。スーツの場合は上半身に羽織るものはすべて下のボタンを外すと覚えておいけば間違いない。

また、ジレを着る際はジャケットを全開にするのがルール。そのため、ジャケットのお腹周りが少しきつくなったら、単品のベストを買い足してスリーピース風に着こなすという手もある。

ベストをレイヤードしても問題はないのか……今季ならナイロン素材のベストもOK

クラシック回帰の流行に合わせてベストを提案するブランドが増えている。

スーツ地やニット地など、スーツスタイルで定番の上質生地を用いたベストなら普段のスーツスタイルに取り入れても問題ない。スリーピースのようなクラシックな雰囲気が生まれるので、大いに実装すべきだ。また、冬に向けては保温性を高める重ね着という意味でも活用すべきアイテムと言える。

クラシカルなスタイルに注目が集まる一方で、スポーティなアイテムでモダンな印象を演出するというトレンドもある。

ナイロン素材のインナーダウンをスーツに忍ばせるという着こなしがその一つ。「ユニクロ」の「ウルトラライトダウンコンパクトVネックベスト」もネックの深さが2段階に調整できるようにアップデートされ、タイドアップしたスーツスタイルにも対応可能だ。

ただし、エレガントなスーツにスポーティなベストを合わせれば、カジュアルダウンして見えるのは当然。そこまで想定した上で、今時の着崩しアイテムとして取り入れればおしゃれ感が演出できる。

スラックスの裾にクッションは入れるべきか……ノークッションのほうが合理的な場合も

従来、パンツの裾はワンクッションかハーフクッションというのが基本ルール。これは、靴下が見えるのを防ぐためだ。

フォーマルなスタイルでは、どんな状況でも靴下が見えるのは御法度。それに倣い、スラックスの丈は裾にシワが入る少しくらい長めに設定するというのが基本ルールだった。

しかし、そもそもスーツはフォーマルウェアではない。あくまで仕事着だ。パンツの裾にクッションが入るとセンタークリース (折り目) が歪んで見え、品格を損なうという側面もある。

また、ビジネスの場で足元が視界に入るシーンはそう多くない。あまりにも目立つ白い靴下を履いていたら問題外だが、スーツとトーンを合わせたダークな靴下を選んでいれば、少しくらい見えても違和感はないだろう。

そう考えていくと、スラックスの裾はノークッションの方が合理的な場合もある。センタークリースが歪まずスタイリッシュに映り、スラックスの裾が汚れにくく、足元が軽快に映るという利点が考えられるからだ。

これからの季節なら、アンクル丈のブーツで靴下が見えないようにしてカジュアルダウンを防ぐという方法もある。いずれにしても、自分の好みや個性、業界や職種に合わせてパンツ丈を選択するのが新しいルールと定義したい。

文・平 格彦(ファッションエディター/「着こなし工学」提唱者)/MONEY TIMES

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