国内企業物価は前年比でプラス維持も、上昇幅を大幅に縮小
12月12日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2018年11月の国内企業物価は前年比2.3%(10月:同3.0%)と上昇率は前月から0.7ポイント縮小し、事前の市場予想(QUICK集計:同2.4%)を小幅に下回った。伸び率は23ヵ月連続のプラスだが、4ヵ月続いた3%台を割り込み、7ヵ月ぶりの低水準となった。
石油・石炭製品が前年比14.8%(10月:同24.9%)と、伸び率を大幅に縮小させたことが影響した。石油・石炭製品の前年比寄与度は10月の1.5%から11月は0.9%まで縮小し、石油・石炭製品だけで全体の物価を0.6%押し下げた。
前月比では▲0.3%(10月:同0.4%(夏季電力料金調整後は同0.7%))と8ヵ月ぶりのマイナスとなった。ガソリン(前月比▲4.6%)、灯油(同▲7.9%)、軽油(同▲7.6%)などが下落に転じたことで、石油・石炭製品(10月:前月比4.4%→11月:同▲4.3%)は3ヵ月ぶりに下落した。原油価格が10月以降下落していることに加え、暖冬により灯油の需要が伸び悩んでいることも影響しているとみられる。原油価格の上昇が遅れて反映される電力・都市ガス・水道(同0.7%)は4ヵ月連続で上昇(夏季電力料金調整後ベース)しているが、化学製品(前月比▲0.8%)は7ヵ月ぶりに下落した。また、銅の国際市況は軟調に推移しているが、足元では下げ止まっていることから、非鉄金属(10月:前月比1.0%→11月:同0.1%)は小幅ながら2ヵ月連続で上昇した。
輸入物価は2ヵ月連続の上昇
11月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比0.6%(10月:同1.2%)と2ヵ月連続で上昇した。また、11月のドル円相場は、前月比0.5%の円安水準になったことから、円ベースでは前月比0.9%(10月:同1.8%)と輸入物価を押し上げた。前年比(円ベース)は9.5%(10月:同9.8%)と3ヵ月連続で伸び率が鈍化している。
契約通貨ベースでみると、石油・石炭・液化天然ガス(10月:前月比4.3%→11月:同2.1%)は、8ヵ月連続でプラスを維持している。石油・同製品(前月比2.4%)が2ヵ月連続で上昇し、天然ガス(同0.3%)も上昇が続いている。また、化学製品(10月:前月比0.1%→11月:同0.3%)は1年4ヵ月に渡って上昇が続いている。一方、金属・同製品(10月:前月比▲0.6%→11月:同▲0.4%)は、非鉄金属(前月比0.3%)が5ヵ月ぶりに上昇したものの、鉄鋼(同▲0.9%)や金属素材(同▲0.7%)の下落を受けて5ヵ月連続で下落している。また、電気・電子機器(10月:前月比▲0.2%→11月:同▲0.4%)は7ヵ月連続で下落が続いている。輸入物価はプラスを維持しているものの、原油価格の下落をはじめ軟調な国際商品市況を受けて先行きは下落に転じる可能性が高いとみられる。
川上から川下への上昇圧力が弱まり、最終財は7ヵ月ぶりのマイナス
11月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比18.2%(10月:同18.6%)、中間材が前年比4.2%(10月:同4.9%)、最終財が前年比▲0.2%(10月:同0.6%)と全ての段階で上昇率が鈍化した。川上にあたる素原材料の上昇が一服し、川下の最終財への価格転嫁の動きは弱まっており、最終財は7ヵ月ぶりにマイナスとなった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比0.0%(10月:同0.9%)と8ヵ月ぶりに伸び率が鈍化した。世界経済の回復に伴う需要拡大から上昇傾向にあった国際商品市況は、世界経済への先行き懸念から頭打ちとなっている。輸入物価の下押しにより素原材料は伸び率が鈍化していき、川上から川下への上昇圧力が徐々に弱まると見込まれる。
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白波瀨康雄(しらはせやすお)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員・総合政策研究部兼任
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